魔術訓練
ラルムが用意した回復薬のおかげか、剣の扱いは大体習得出来た。まあ、訓練は引き続き続けないといけないが。
「僕の訓練はこれで終わりだ」
「次はボクの番だね。と言っても知識しか教えれないけど」
ヘストの訓練が終わった。そしてラルムの魔術訓練は知識のみらしい。それで魔法が使えるのか?
「あっ、知識は覚えても魔法がすぐ使えはしないけどね」
「じゃあ、どうすれば使えるんだ?」
そこを知りたい。
「魔法はレベルが上がると覚えるよ。ただ使うには知識が必要なんだ」
何故に? まあ、聞けば分かるか。
「まず、魔法には八大属性があるんだけど、分かる?」
分かるわけ無い。ゲームの知識でなら分かるから試しに言ってみるかな?
「火、水、風、地、光、闇、月、木か?」
「惜しい。というか、なんでそこまで知ってるの?」
ゲームの知識。意外と役立つ。ただゲームの知識なんて言えないし、嘘吐くしかないか。
「適当に言ってみただけだよ」
「まあ、いいけど。ちなみに八大属性は火、水、風、地、氷、雷、光、闇だから覚えておいてね」
月と木属性じゃなく氷と雷属性か。なるほど、覚えておこう。
「次に詠唱だけど、それぞれに詠唱の言葉があるんだ。例えば……」
ラルムが目を閉じ、洞窟の奥に体を向ける。奥からはコボルトが数体、向かってきていた。
《炎よ、我らを阻害するかの者を薙ぎ払え。ファイヤーストーム!》
ラルムが詠唱を終えると、炎の波がコボルト達を飲み込み消し炭へと変えた。
「ふう。これが詠唱だよ」
「なるほどな。詠唱の呪文は決まってるのか?」
決まってなければ、自分で勝手に言葉を紡いで魔法を使用すれば良いだろう。だが、決まっていれば覚えなければいけない。要は前者は詠唱の呪文は適当に言葉を発するので楽だが。自分で考え無くてはいけない可能性もある。後者は決まっているので、覚えれば良いだけ。ただ覚えるのが大変。というメリットとデメリット。
「魔法の詠唱は決まってるんだ。まあ、詠唱の呪文なんて誰が考えたかは分からないけどね」
「全部覚えるのか? なんて重労働……」
ああ、面倒くさい……。
「覚える? ああ、それなら大丈夫。魔法を取得したら、詠唱の呪文は頭に流れてくるんだ。勝手にね。だから、あとはそれに従って唱えるだけ」
おお、それは楽だな。なかなか便利なモノだ。
「まあ、今は無理かな。サトルのステータス分からないし」
「ん? ステータスなら分かるだろ。こうして」
俺がバンドを弄るとステータス画面が現れた。
名前:サトル・サガミハラ
職業:万能師
種族:ヒューマン
LV:1
HP:30 MP:0
STR:6 DEX:4 VIT:3
AGI:3 MND:4 LUC:2
ページ2
剣:LV1 槍:LV1 斧:LV1 杖:LLV1
短剣:LV1 弓:LV1 拳:LV1
火:LV1 水:LV1 風:LV1 地:LV1
氷:LV1 雷:LV1 光:LV1 闇:LV1
聖:LV1
あれ? あれだけ戦って何も変化無い?
「サトル。忘れたの? ボクらは“今“のステータスは確認出来るけど、“変化後“のステータスはギルドで更新しないと駄目なんだよ」
「……そうでした」
しまった! 忘れてた。
「まあ、スライムいっぱい倒しているし、多分レベル2にはなってるよ」
なんだ、それ? 曖昧だな。
「スライム数十体で大体レベル2になってるよ。最初にギルドから聞いたし」
俺は聞いてないが。それに魔法が何レベルで覚えるか分からないんだけど。
「レベル2くらいなら、確か“ファイヤーショット“だったかな」
「ファイヤーショット?」
なんだ、それ? 某サッカー漫画で出てきたシュートの一つか?
「……じゃあ、とりあえずこれを飲んだら、ボクの詠唱に続いて。「《火球よ、我を阻害する者を撃ち抜け》」
「えっと、《火球よ、我を阻害する者を……撃ち抜け》」
苦い薬を飲まされた後、ラルムに続いて詠唱を唱える。詠唱とか、ゲームみたいだな。
「《ファイヤーショット!》」
「《ファイヤーショット!》」
詠唱を唱え終えると俺達二人が放った火球が洞窟の穴へ吸い込まれて消えた。
こ、これが魔法!?
「どう? 分かった?」
「あ、ああ! 初めて魔法なんて放った!」
ああ、なんか嬉しい!
「喜ぶのはまだ早いよ。これからが本番だし」
ラルムに釘を刺された。そういえば、さっきは何故魔法が使えたんだ? MPはゼロだったのに。さっき渡された緑色をした菱形の瓶に入った液体を飲んだからか? 苦かったけど、あれはなんだ。
「ああ、あれはマナポーションっていってMPを回復する薬だよ。最初に飲んだのがポーション。HPを回復する薬」
「正確には霊薬と魔法薬だけどね」
なるほど。ということは、これでレベルアップしたという証左になったな。しかし、こちらも回復薬だったか。ってヘストの奴、ラルムの説明に訂正を入れたぞ。
「……まあ、ヘストの言う通りで霊薬と魔法薬だよ。覚えておいてね」
ああ、不機嫌になっちゃったよ。
「ヘスト、訂正したい気持ちは分かるけどラルムの説明でも問題ないから」
「間違いを訂正しておかないとサトル、キミが恥を掻く。それは僕らにとって、辛いことなんだ」
「そーだね。つらいよねー」
ああ、ラルムが適当に返事し始めた。面倒だが、なんとかしないと更に面倒になる。仕方ないな。
「2人とも、当初の目的を早く終わらせよう」
「ああ、そうだね」
「そーだね」
ラルム……もうなんかヤケクソ感が……。
俺達は奥へと進む。