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戯言  作者: 夢の宛先
1/1

壱回目

紙か機器かと問われれば、紙がいい


でも、後で書き起こすのが面倒で、億劫だから、筆を取らずに打ち込むのだ


一人寂しい独り言を、零れた言葉の欠片を、再生するように書き込むのだ


時間の流れが怖いから、こんな詩で、前書きも後書きも取り留めもないもので、


自分を保つのだ


自分の弱音など人には見られたくないから、言葉にしたというのに、


自分が社会の一組織ですらないちっぽけな部品だと知ってしまっているから、


誰かに伝えるのだ


変換や打ち込みで苦労しているうちに独り言が作業になって仕事になるから、


終わりどころが見つけられるはずだと、縋っているのだ


死が怖いのは自分本位だからだ


でも人間とはそういうものだ


自分以外の誰かと比べることなど、できないのだ


だって自分には他人の目はないし、他人の記憶もない


追体験などと宣うのなら、自分の記憶をすべてなくしてするといい


もうそれは、自分ではないのだから


自分にとって世界は観測対象でしかなく、生きている人間も動物も、NPCにすぎないのだ


ゲームが楽しい、心は恥ずかしい、親には格好をつけたい


そんな人間らしさを、僅かながら持ってしまっているのだ


自分にとって自分は2種類、いや何種類もいて、それが全部一人なのだから、困ったものだ


多重人格なら、もっと実感がなくて済んだかもしれないが、自分は自分なのだ


ただ、ある視点では、自分は多重人格なのかもしれない


他人の前で元気そうに振舞っている自分と、一人でこんなことを考えている自分が同じには、


どうしたって見えないのだ


だから、記憶を共有してしまっただけの別人かもしれないのだ


世界は勝手に動いているんだという理解も納得もあるはずなのに、


まるでゲームの中のNPCとプレイヤーのように違うものに思えて、


だからこそ、コンテニュー不可、制限時間ありのゲームをやめるのが嫌な子供のように泣くのだ


プレイが終わったらあなたの人生も終わりだよと囁かれるゲームほど、


楽しくないゲームもそうそうないのだ


人生に意味を求め始めると空虚になるのが当然と知っていても、求めてしまうのだ


だがその代償に、何をやってもゴムでも食っているような気持ちになるのだ


趣味のプログラミングをやっているときだけ、味のないガムを食っているようだといえなくもないが、


彼女の腕の中で眠っているときだけ、新品のガムのようだといえなくもないが、


それでもまあ、摂取できるのは人工甘味料くらいのもので、腹の足しにはならないのだ


こんな気持ちになり始める前は、それでも飴ぐらいはあったはずなのだ


死が近く見えるのは、きっと一日が早すぎるからなのだ


青春の日々で、一週間は精々一瞬で、それではまるで、余命三ヶ月の患者よりも短い命だ


一日が一秒なら、二十四時間生きるには百年が必要で、


一週間が一秒なら、千年が必要なのだ


自分本位な人間だから、こんなにも考えてしまうのだ


自分が超人だとでも思っているのだ


昔から人間ではない凄い何かになりたいとはよく言ったものだが、


なれてないことが既に証明済みなのだ


考えるのが苦しいから助けを求めるのに、少し楽になったらまた、


辛くなってでも考えるのが人間でないかと、世迷いごとを垂れる自分がいるのだ


死ぬのが怖くて泣いているのだ


だから、死にたいならきっと楽なのだ


そう分かっていても死ねないくらい、軟弱者なのも分かっているのだ


昔は今死ぬことが怖かっただけなのだ


だからあんなにも、強がっていられたのだ


今は死ぬという事実が怖いから、どうしようもなくなっているのだ


立ち往生をしているのだ


もしかしたらこんな気分になるのも、自業自得であったかもしれない


人生をもっとのんびり生きていれば、きっと生きていられる時間はもっと長くに感じられたはずなのだ


人生に意味を見出せていれば、後悔はないと断言できたかもしれないのだ


こんなことを考えない人間でいられたなら、最期のその時まで、


それは無理だとしても、精々病気にでもなるまでは、気づかずにいられたかもしれないのだ


これが所謂若気の至りなら、それに越したことはないのだ


だってそれは、老いれば救われるということなのだから


これが悲劇のヒロイン気取りでも、それに越したことはないのだ


だってそれは、自分が特別じゃないという現実が迫れば、きっと抜け出せるものだから


こんなことを書いている間に時間が過ぎるのは嫌なのだ


かといって、冷凍睡眠でもしてただ先に延ばしたいかといえば、そういうわけでもないのだ


こんなものを読んでいる奴の中に、若い頃の自分がいるはずもないが、


なんなら読んでいるひとだっていないが


それでも、読んでいるやつがいるのなら、言いたいこともあるのだ


病んだとして、考えたとして、それで才能も芸術も、身につきはしないのだ


死を書く小説家が死んだことがないように、童貞だって官能小説を書けるように


別に体験で、創作力が決まるわけでもないのだ


今まで灰色だった世界に、青黒く色を塗ったところで、綺麗になるはずもないのだ


音楽を聴いているときは、歌を歌っているときは解放された気になる


だからといって、ただ歌っていて生きられるはずもないのだ


それでも逃げるのは、多分、自分自身が弱いからだ


主人公になりきれば、もっと前向きになれるとおもって海を見に行っても


そんなんじゃあ何も解決したりはしないのだ


そもそも解決など、するはずがないのだ


きっと自分は、平凡な愚者になりたかったのだ


死をではなく、自分の死を、軽く受け止められるような人間がよかったのだ


今日の飯を不味くする哲学より、ソシャゲのガチャに時間をかける、


そんな人間になりたかったのだ


頼れる師や、愛する人の隣でなくとも、明日を楽しみに寝られるような人間が良かったのだ


後悔だけでなく、実際に、薬でも宗教でも、そこに連れていって欲しいと、思っているのだ


でもそれが、情けなく、人間でないような矛盾を抱えて、自身で否定してしまうような弱虫でもあったのだ


まるでこんなことで苦しめることを、優位だとでも思っているのだ


十八で年寄りのようなことを考えているのが、成長の早さだとでも思っているのだ


普通の人々とレッテルを貼って、自分以外を見下しているだけなのだ


明日死んでしまうかもしれないという恐怖が、いつか死ぬという恐怖に成り上がったことを、


自分の進歩とでもとらえているのだ


助けて助けてと泣きながら、その実、泣いているとき以外は助けて欲しくもないのだ


自分にコンテニューができると、せめてリトライができると言い聞かせるのに、限界が来たのだ


刹那の解放を辿って生きれば、少なくともこんな気持ちでいずに済むと思いながら、


その生きるというワードから連想した死に怯えるほど、弱い人間なのだ


昔望んでいた基地外の成れの果てになって後悔しているというのに、


お前が望んだことだから喜べと、自分に言い聞かせてしまうような奴なのだ


才能がないから、形ができていないからと書いた詩を捨てるくせに、


こんな最後の最後の搾りかすは、見て欲しいと思うような弱者なのだ


夜寝るのが億劫なくせに、夢の心地よさに縋って二度寝をするような、矛盾にまみれているのだ


人生を無為にしたくないからと作品を作って、人と会って話して、


それも空虚だと気づいて、しまいにゃこんな無駄なことで浪費をして、現実から逃げているのだ


これが病ならそれが一番良いのだ


むしろそれを望んでいるのだ


病なら理由も付けられるし、馬鹿に付ける薬だってあると思うようなどうしようもない馬鹿なのだ


自分が恵まれているのに胡坐をかいているから、自分の才能に寄りかかってばかりだから、


こんなことで苦しいと思う暇もあるのだ


そんな程度には、傲慢なのだ


ダウナー系の麻薬にハマる人間の気が少しわかる気もするのだ


最早解放が心地いいからですらなく、どんよりとした気持ちに、刺激を感じてしまっているのだ


麻痺してしまっているのだ


差別主義者で、楽観主義者で、いつだって自分が優位だと思っているような人間なのだ


他人の哲学に優劣を付けて、自分の哲学でマウントを取るような、くだらない人間なのだ


いつだって見下したくてうずうずしていて、いつだって甘やかしてもらえる環境を求めていて、


それに病も哲学も利用しようとする、浅ましいやつなのだ


直ぐに見てもらいたくて、でも恥ずかしくて、完成させたくて、完成させたくもなくて


でも一度上げてしまえば戻れない恐怖感に、怯えて出せずにいるのだ


思い切って出してしまっているのだ


漠然とした不安を、現実で具象で陳腐で低俗な悩みに落とし込みたくているのだ


字にすることで、苦悩を書くのを作業にすることで、掴みかかってくる恐怖を、枯れさせたいと思っているのだ


感化されればすぐに、凄い芸術家になりたいとか言う癖に、努力もできない無能なのだ


曲に乗せることも話に乗せることもできず、ただ垂れ流しているのだ


それを、それでも流しているだけマシと思っているから、クズなのだ


未来が楽しくないのは、死に辿り着くまでの過程が、予想で来ているなどと思い上がっているからだ


うまくいったとて、予想通りなら空虚なのは当たり前だろう


自分の悩みも哲学も、きっと日々を生きるための悩みからみれば、贅沢な悩みだと分かっているのだ


でも、恵まれてばっかりな所為で、それがわからないのだ


風邪がうつせば治るように、病みをうつして治りたいなんていう、身勝手な自分なのだ


考えると内臓を吐き出してしまいそうだから、筆に逃げたいと思っているのだ


本業にする気も実力もない、趣味にしたいようなものではないけれど、


師も恋人も親も医者もいない時には、逃げられるものはそれぐらいにしかないのだ


他人と関わっている間は自分を主観視せずに済むから、誰かに依存したいのだ


毎日あった性欲も、この一週間億劫としか思えない程度には、追い詰められているのだ


さりげない、いつも通りの一言に傷つきながら、でも、心配してくれる優しさだけで立っているのだ


後輩の入学試験に、歳を感じて苦しんでいるのだ


同年代の皆が皆、受け入れて前を向いて、哲学を持って、すごいなって、偉いなって思っているのだ


テレビが、音楽が、哲学が、自分の目を逸らせてくれるバリアだと、信じ切っているのだ


逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて前見て、逃げて逃げて逃げて逃げて生きてたいんだ


書いているその刹那は、逃れられると思い込みたいのだ


鏡をずっと眺めていれば、自分の顔が異形に変わって不老不死にでもなるのではないかと願っているのだ


不老不死と検索して喜びを得るような廃人になってしまっているのだ


Twitterの喧騒が、時には苦しくても、個を消してくれる優しさがあるのだ



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