ハルトモ4話
ー4話
取り巻きの三ノ宮真綾は、デカイ豪邸を作って移り住んでいた。敷地に1軒家が10軒あると言っていい。アパレル業界は、三ノ宮城と呼んでいる。小林智昭をイメージキャラクターに起用してくれている。
向かいながら電話した。
ー私いまドバイだけど?言っとくからぁ、自由に捜して。土下座で済む事を祈ってるよー
「知ってたのかよ?」
ー春菜が、引っ越ししたいけど良いって言うからさ。ちょうど家具も何もない離れが有るから、どうぞって言っただけ。木曾川くんが引っ越し業者に仕事変わったからやってくれたみたいー
「なんで教えてくれないんだよ?」
ー教えるわけないでしょ?2年も妻放っといて、日本に帰って来てさ、真っ先に会いに来ないバカ亭主。私なら離婚届け書いて郵送するよー
「すまない…」
ー春菜に言いなよ。小林智昭は真面目だからこうなるってのはさ、判ってたけど、なんとか気づくと思ってた。路上ライブの小林智昭なら気付いたよ。彼なら怒るよ。何やってんだ小林智昭ってさ……まぁ良いから。春菜待ってるよ。どのタイミングで許してあげようかなって。急いでよ!ー
「また、助けられたな」
ーコアファンにさ、お礼言わないの。一緒に闘ってる戦友でしょ?ー
「そうだった」
ーこれから商談だから、切るよ…ー
三ノ宮城は入口に警備員の詰所が有って、警備員の河合さんとは顔なじみだ。
「小林さん。奥さん相当怒ってましたよ!大丈夫ですか?」
「すいません。引っ越ししちゃって」
「あ~びっくりしたよ。奥さん引っ越してくるからよろしくって言われてさ。聞いた事ないよ。夫婦喧嘩で家財道具ごと出てくるってさ」
「で。どこにいるんですか?」
「それがさ。このマップ渡して言うなって、真綾奥様の指示でさぁ」
三ノ宮城内の絵地図に、ヒントポイントが有って、そこを辿って行くらしい。
「小林さん。遊園地のイベントだよこれ」
「とにかく。行きます」
各ポイントには、季節季節の春菜と真由子の写真と、コメントが書かれていた。
9ポイントクリアして、最後のポイントをクリアした。
離れのいかにも値の張りそうな扉を開ける。
真っ暗だ。
突然明かりが灯いて、クラッカーがポンポン鳴った。
「クリアーっ!」
春菜が布を払って、真由子を抱いて出てきた。
真由子がパパパパ言いなから、ちっちゃい手を伸ばす。
「賞品は!春菜とまゆちゃんで~す!」
小林は腰が砕けた。
二人を抱いて、首を振った。
「轟沈だ。怒ってると思った」
「怒ってるけど。会えば許せるって思った。ほんとに許せたよ」
小林は言った。
「ユニットを組もう。世界中を真由子と僕ら二人で回ろう」
「そんな事できるの?」
小林は体を離して、春菜の肩に手を置いた。
「事務所とファンを二人で説得する。恭之助さんは判ってくれるからね」
「ファンは…揉めるよ」
春菜のファンの中にも小林のファンの中にも、二人が結婚している事を認めたくない人達がいる。
春菜が出産と子育てで、活動停止している事で、小林を攻撃しているファンもいる。
「怒るファンもいるけど、擁護してくれるファンもいる。タケガミさん喜んで長文書いてくれるよ」
タケガミさんは結婚した時も、一貫して春菜と小林を擁護する論陣を張ってくれた。小林としては彼が頼みの綱だ。
ただ。やっぱり。大惨事になった。