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ハルトモ  作者: 武上 渓
4/9

ハルトモ3話



ー3話



ツアーが終わって、日本に戻ってきても1週間は自宅に戻れなかった。

稲沢さんが交渉して、急に2日だけ戻れるようにこじ開けてくれた。

急いで戻る。

連絡しても電話に出ない。メールも返信がない。


自宅マンションのドアを開けようとして、紙が張ってあるのに気付いた。 

ー私と真由子は、ファンの次?ー

「訳ないだろ…」

紙を引きちぎるように剥がして、ドアを開けた。

春菜の怒りが爆発していた。

キレイに家具も家電も荷物も消えていた。

「捜してみろって事か……やり過ぎだよ春菜」

小林は何もない部屋の中に立って途方に暮れた。


捜す時間は2日しかない。でも見つかるまで、戻る気はなかった。歌を失っても、春菜と真由子を失うつもりはなかった。

取りあえず、ハッシーくんに行ってみる。

「知ってるが。小林くんが自分で見つけないとダメだな」

マスターは昨日会ったかのように、コーヒーを淹れて言う。

「相当ですか?」

マスターは深刻な顔の小林に笑いをこらえた。

「相当掛ける10くらいかな。僕が春菜ちゃんなら……離婚するね」

「………」

「小林くん。判ってるだろ?春菜ちゃんが離婚する訳ないって?身も心も小林智昭にゾッコンだ」

小林はコーヒーを含んだ。薫りが身体中を包むようだ。

「だからよけい。罪が深いですよね…」

「見つけて。どうする?シンガー小林智昭のスケジュールは変えられるのかい?変えられないなら、君から離婚を申し出るべきだな」

小林はガチャンとコーヒーカップを置いた。

「マスターは知ってるでしょ!どっちも出来るわけないって!」

マスターは落ち着いて言い返した。

「わめかない。わめいても何も変わらない。わめく時間に、どうしたら変えられるか考えよう」

「判らない。判らないんですよどうしたら良いか!」

マスターは身を乗り出して、小林に顔を近づけた。

「昔。電柱の陰から出てこない電柱さんを、君はどうした?あの時の小林くんに聞いてみなさい。きっと答えてくれる」

小林はしばらく考えた。

「彼は何と言ってる?」

小林の顔にパッと光がさした。

「近づけないなら。僕がそっちに行く?」

マスターは笑った。

「それが答えだ。それでこそ小林智昭らしいじゃないか!春菜ちゃんの居場所も教えてくれただろう?」

小林はハッシーくんを飛び出した。

春菜の行く所はあそこしかない!




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