ハルトモ2話
ー2話
降り立った空港は、群衆に取り囲まれていた。
マネジャーの妻夫木ヒロシが、状況を確認してくれている。
「小林。ローディの土岐とやっと電話が繋がったよ」
「どうなんです?」
「反政府デモじゃなく、全部小林ファンだそうだ」
「でも。警官隊が出て催涙弾撃ち込んでるんでしょ?」
「見た目が変わらなくて、政府もマスコミも反政府デモと思ったらしい」
「出られるんですか?」
「恭之助さんが、動画上げて呼び掛けてるそうだ。もう空港出て良いと土岐に伝えたらしい。行こう」
空港側に話すと、ファンに話してくれと言う。
通訳を交えて話すと、霧が晴れるように解散してくれた。
ヨーロッバは、アラブの戦争で確実に傷ついている。父親や男兄弟は戦場で身も心も傷ついて、半年に1回戻ってくる。残された女性は戦死を恐れ、また戦場に行く彼らを思って傷付く。
さらに傷付いた難民が流入して緊張を高める。
小林は彼らの為になる歌を作ったり、即興で歌詞を変えて歌った。
恭之助さんの発案で、観客が持ってるモバイルにカラオケの字幕を送る。
英語、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語、日本語、ポルトガル語、スペイン語、アラビア語に対応していて、歌にシンクロして色が変わる。
曲間のMCもトップクラスの対応全言語同時通訳者を入れて表示する。
カラオケフリーダムのノウハウが爆発した。
小林のスマホもつながらない。常に、熱狂して通信しまくるファンの中心に居るからだ。
メールで春菜から、声が聞きたいと打ってくるが出来ない。
ライブの前後は移動中も取材インタビューで埋まる。
春菜や真由子の事を考えている余裕も許されない。
真面目な小林はファンとマスコミに、春菜と真由子の為の時間を費やしてしまった。
迂闊にもそれで、2年が過ぎてしまった。
それは、あまりに迂闊過ぎた……。