ハルトモ1話
ー1話
小林は山崎恭之助のプロモーションシステムに乗っかった。
このシステムはワールドワイドしており、日本もローカルの一地域に過ぎない。
新曲のプロモーションツアーは125万ダウンロードを受けて、神宮球場のスタジアムライブ2DaysにヨーロッパEU圏から2万人が押し寄せる大惨事になった。
その2Daysのあと、その核心部ロンドンに旅立った。
春菜は洗濯物を畳みながら、ベビーベッドの真由子の様子を見た。
よく寝る子で、こっそり忍んでくる光治を残念がらせる。
「寝るのが趣味だな真由子は」
春菜は笑う。
「せっかく写真撮っても寝顔ばっかだね」
「智昭くんは、いつ戻ってくるんだい?」
「2年掛かるツアーのさ、ひとつ目日本公演が終わったばっかりだよ」
「どうしていきなり海外なんだ?」
「フィメールのプロモシステムつかってるから。向こうのテレビのゴールデンタイムに小林くんのビデオが流れてるんだよ」
春菜は誇らしげに言った。
「…春菜。夫婦なんだから小林くんは無いぞ?」
「小林くんはニックネームであだ名。智昭なんて変。呼べない」
春菜は掛け時計を見た。
「お父さん。飛行機の時間大丈夫?」
「いかん。行くよ。俺もロンドンだ。向こうで智昭くんに会えるかもしれない」
その気配で真由子が目を覚ました。
「春菜。ギブソン」
光治はカメラを構えた。春菜は横に寝かせて有ったギブソンを持って、真由子にネックを握らせた。
とたんに、ごきげんに笑い始めた。
光治が連写する。それを見て、
「ジジ…ジジ」
と言う。
起きると泣き出す真由子に、美里さんがギブソンのネックを握らせてみたのが始まりだった。
光治は画像をチェックして、鋭い顔になった。
「いいの選んで、スマホに送る。行ってくる」
春菜は微笑んで言った。
「無事の帰還をお願いします」
母は春菜が産まれる前は、そう言って光治を送り出していた事を聞いて、そうしている。
春菜にも同じ苦しみを味あわせたくなかったのかもしれない。
真由子を抱いて、玄関の外まで見送る。
「まゆちゃん。お買い物にいこうねぇ」
遅い午後の太陽が、春菜と真由子を照らした。