チュートリアル始まりました。
転移後から地の文にて愛莉⇒アリスになっています。
『使用武器も決まりましたのでチュートリアルを開始します。チュートリアル用のフィールドに転移します。よろしいですか?』
初期設定も大体済み、遂にチュートリアルが始まることを受け、先ほどまで落ち込んでいたのがウソだったかのように愛莉のテンションは高くなっている。
何だかんだ言って、初めてのVRMMOでありそのスタート地点に立つのだからそうなるのは仕方ないと言える。
その影響で元気一杯に返事を返す。
「はい、大丈夫です!お願いします!」
『転移を開始します。』
まばゆい光に身を包まれアリスはチュートリアル用のフィールドに転移した。
△ ◆ ▽
まばゆい光が収まり目を開くとそこは何もない草原だった。
何かないかと周りを見渡していると、アリスはあることに気が付いた。
「すごい小さくなってる」
転移してから、アリスはようやく自分の身体が変わっていることに気が付いた。
更によく見てみると、背中から生えているはずの羽が見当たらずどうゆうことなのかと考えながら何もない草原を見渡す。
当然何もなくまた、何も起こらないのでどうしたらいいのか分からず立ち尽くしていると、アリスから大体十m程離れた位置に一人の女性が姿を現した。
「わぁ!?」
突然人が現れたのだからアリスが驚くのも無理はない。
「だ、誰??」
冷静に考えればこの女性が何者か分かるはずなのだが、アリスの思考は追いつかず、頭の中は「えっ、誰?」で一杯だった。
すると、その女性が口を開いた。
「これからチュートリアルを開始しますね」
「あっ…。よろしくお願いします!」
チュートリアルの人だったかとアリスは思いながらも、遂に始まったチュートリアルにアリスは気合を入れる。
「では、まず初めにメニュー画面を開いてみましょう。「メニュー」と高らかに声を上げてください」
「メニュー!」
少し恥ずかしながらアリスは言われた通りに声を上げると半透明なメニュー画面が視界に映った。
「もしくは「メニュー」と念じながら、右手人差し指と中指を上から下へスライドさせてください」
「…先に言ってほしかったな」
「かわいかったですよ?」
「私は恥ずかしかったよっ!」
アリスはそういいながらメニューを閉じ、言われた通りに右手をスライドさせる。
すると、先ほどと同じようにメニュー画面が現れる。
「次に進んでもいいですか?」
「はい!」
「では、装備欄を開き武器を選択し、武器を装備してください」
「えっとー、装備を開いて武器…。あ、【初心の大鎌】?。これを…装備っ!」
【初心の大鎌】
・初心者が使用する武器の一つ。
・耐久値∞
装備してみると一本の棒が背中に現れた。
アリスはそれを手に取って疑問をそのまま口にする。
「……棒?大鎌って棒だったの?」
それはアリスの小さな手に馴染む程の太さで、おおよそ1.7m程の長さの木の棒であった。
「その棒はただの棒ではありません。それは大鎌の柄です」
「…刃はどこに消えたの?これじゃただの棒だよ?」
【初心の大鎌】に刃は付いておらず、見るからにしてただの1.7mの棒だった。
この世界における大鎌という武器は長めの棒のことを言うんだ…とアリスは何処か遠くを見つめていた。
「まぁまぁ。大鎌は魔力で形成した刃で攻撃する武器です」
「えっとー??」
「近接戦用魔法武器です」
「…私はどうしたらいいの?」
この棒がただの棒でない事は分かった。
だが魔力で刃を形成とか言われても、アリスには魔力を形成する方法など全く分からないし、ましてや刃を作るとなると全くピンとこない。
最悪チュートリアルを終えることはできないのでは…?とアリスは震え始める。
「あぁ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。アリス様は妖精ですから直ぐに魔力を扱えますよ」
震えているアリスが緊張で震えていると勘違いしたのだろうか、緊張を解す為にかけてくれた言葉はアリスにとってとてもありがたい言葉が聞こえた。
「そっ、そうなの!?」
「はい。《Another Fantasy Onlineにおいて、妖精は魔力で構成されている存在です。妖精の場合、力を籠めること=魔力を籠めることとなり、手や足を動かすのも魔力を使用して動いています。筋力=魔力です。物が重たいと感じたら、筋力が足りないのではなく魔力が足りないとなります」
「そうなんだ!ちょっとやってみる!」
アリスはそう言って、力を、魔力を籠めてみようと手に握る棒を強く握ってみた。
「お…?おー?おー!?」
棒を握ってみると、手から棒へフワフワした感じのモノが流れ込むのをアリスは感じた。
すると、棒の、柄の先端部分から、半透明で大凡90㎝の長さの刃が姿を現した。
アリスは手から抜けていったフワフワした感じのモノが魔力だと分かったが、大鎌の刃を形成できた理由が全く分からなかった。
そのことを疑問に思い、女性に聞いてみるとその理由は分かった。
「魔力で刃を形成と言っても、大鎌の場合は柄に魔力を籠めると刃が形成されます」
「そうだったんですね!私はてっきり魔力を動かして刃を作らないといけないのかと思っていました!」
「そういった事ももちろんできますよ。それでは次に移りましょう。これからカカシを出しますので大鎌で攻撃してください」
クスクスと笑った女性がそう言うと、一体のカカシが出現した。
アリスは意気揚々とそのカカシを切りつけようと大鎌を握りしめ、走り出した。
大鎌の刃に当たると思うところで止まり、腰を捻り、そして大鎌を大きく横に振るった。元気のいい声を出しながら。
「てぇえやぁぁぁああっ!」
アリスの目測は当たっていたようで、綺麗にカカシを真っ二つにした。
「おー!やったー!」
その光景を見たアリスは両手を高く上げて大きく喜んだ。
動かないカカシとは言え、何かを綺麗に真っ二つにするのは初めてでこんなに気持ちのいいものだとは思わなかった。
「思った以上に気持ち良かった…」
「それはよかったです。では、次に移りましょう。次は魔法を体験してもらいます。今、アリス様には《火魔法》スキルで最初から使える火球を使えるようにしています。」
その気持ちよさにアリスは浸っていると、魔法を体験と聞いて意識を元に戻した。
「火球?魔法ってどうやるの?」
「手を目標にかざし手の平に意識を集中して、「火球」と唱えてください」
「んー…。わかった。やってみる」
「では、新しいカカシを出します。それに向かって「火球」を撃ってみて下さい」
つまり魔力を手の平に集める感じかなと思ったが、アリスはまだ魔力というモノをよく分かっていなかった。
しかし、先ほどの大鎌の刃を出す時に感じたフワフワを手の平に集まるのを感じようと、意識を更に一層深く集中する。
すると、先ほど感じたフワフワが手の平に集まっている感じがした。
アリスはその感覚に集中しながらゆっくりと手の平を新しく現れたカカシに向け、一言唱える。
「火球」
アリスの手の平の先から直径30cm程の火の球が出現し、勢いよくカカシに向かって飛んでいきカカシに当たった。
当たった直後ボンッ!と音を立て、次の瞬間にはカカシは消し炭になっていた。
「おおー!!」
「お見事です。そのような感じで、他の魔法も使用することができますので覚えといてください。慣れてきたら、武器の先や眉間の先から魔法を放ったりできるようになります」
女性はそう説明しながら、眉間の先から魔法を放って見せる。
「すごいっ!…えーっと、お姉さん凄いです!」
「フフン。…さっきの間が何だったのかは気にしないことにします」
「あ、えっとですね…。お姉さんのお名前聞いてなかったと思って」
「ふふふ、ようやく聞いてくれましたか。種族選択から一緒にやっていましたが聞かれなかったので私には余り興味がないのかと思ってましたよ…」
種族選択から、という言葉を聞いて、アリスはあのウィンドウでやり取りしていた人と目の前にいる女性が同一人物であることに今気が付いた。
「あ…。その、何というか、ごめんなさい。あと、色々として頂き本当にありがとうございます」
「いえ、私の仕事ですから気にしないでください。あ、そうでした。私は相川といいます」
「相川さん!」
「はい」
「あとどのくらいチュートリアルが残っているのか分からないですけど、よろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いされました」
相川さんがキャラクターメイキングから一緒だったと知ったアリスは、先程まで以上に気合を入れてチュートリアルに臨もうと意気込んだ。