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就職しました。

『次はメイン(クラス)を選択してください。種族選択と同様に選択後変更はできませんので、慎重に選んでください。』


 AIからそう伝えられると新しいウィンドウが現れた。

 そこには、戦士・剣士・槍使い…と様々な(クラス)が表示されている。


「やっぱ近接戦は難しいのかなー…。あ、魔法使いとかもやってみたいなー。え、召喚士なんてあるの?モフモフしてるの召喚できるのかなー?」


 愛莉は表示されている(クラス)を上から順に見て行くと、様々な(クラス)に目移りしていた。

 そんな中、とある(クラス)に目が留まった。


「ねぇ、質問していい?」


『はい。』


「モフラーってなに??」


『モフラーはモフモフを探求する(クラス)です。冒険はしたくないけどモフモフはしたい。戦闘はしたくないけどモフモフはしたい。魔法とか別にいいからモフモフしたい、調合とか生産はしたくないけどモフモフはしたい。そんな人の為に用意されたメイン(クラス)となっています。因みに、デメリットとして戦闘も出来ず、町の外に出ることもできません。他にも色々と制限はありますが、正しく、《Another Fantasy Online》に登場するモフモフをモフモフするためだけの(クラス)です。』


「……そこまでしてこのゲームをする理由が私には分からないよ」


『私にも分かりません。』


 AIにも理解できない(クラス)が登録されているのか、《Another Fantasy Online》の運営陣は何処に向かうつもりなのだろうかと頭を悩ませながら、愛莉はウィンドウを一番下までスクロールすると一つの選択肢が目に映った。


「あ、ランダムあるんだ」


『はい。』


「やっぱりレア(クラス)とかあるの?」


『いいえ、ありません。ただ、』


「ただ?」


『各(クラス)から派生・発展する(クラス)が当たることがあります。』


 そっかーと愛莉は相槌を打ち、表示されている(クラス)を見くらべるも、一つに決まりそうにはなかった。

 ただ一つ、モフラーにはならないと言うことだけは決まっている。


「ねぇ、ランダムって私が指定した(クラス)の中から選ぶことはできる?」


『できません。ランダムは、特殊(クラス)「モフラー」以外の(クラス)から自動で選びます。』


 ランダムからはモフラーはでない。

 これは愛莉にとって朗報であった。

 気になった(クラス)はあったけど、選べない。

 変更が効かない以上、どれか一つを選ばなければならない。

 ならば、愛莉がとる選択肢は一つ。


「ランダムでお願いします!」


『正気でございますか?』


「何故私は正気を疑われているのだろう…」


 愛莉はこの(クラス)選択がよく分かっていない。

 と言うのも、《Another Fantasy Online》を愛莉に押し付けてきた張本人である栞奈から、どの(クラス)でも色んな武器や魔法を使えると聞いていたため、正直どれでもいい気がしていた。


『《Another Fantasy Online》には(クラス)補正がございます。「剣士」を選んだ場合〈剣術〉系統のスキル成長率が、「魔法使い」であれば魔法スキルの成長率が、「弓使い」であれば〈弓術〉の成長率が倍増します。また、スキルの威力値にもそれぞれ補正が入ります。』


「それを先に言ってよ!……うー、でもなぁ…」


『それでは、使いたい武器から選んでみてはどうでしょうか。』


 確かに武器から選び、それに合った(クラス)を選ぶのは理に適っているだろう。

 しかし、愛莉に使いたい武器はこれ!と決まった物があるわけでもなく。


「ランダムでお願いします!」


『人の話を聞いていましたか?』


 それは私のセリフじゃぁ!と愛莉は叫びたくなるが、実際アドバイスまでしてくれているのにランダムを選んだのだから、そう言われても仕方ないかと心を落ち着けるために一度深呼吸をする。


「ランダムでお願いします!」


『本当によろしいのですか?』


「さっき種族選択でレア種族を当てたじゃないですか!私には今!運が回ってきているのです!満ち溢れているのです!ならば!(クラス)選択をランダムで選べば、派生(クラス)?発展(クラス)?が当たって初期からその(クラス)で遊ぶのも吝かではない!てことでお願いします!」


『考え直しませんか?』


「む…?もしかして信じていませんか?今!私の時代が来ているのです!」


 そう、愛莉は今自分の運が来ている事を信じてやまない。

 何故なら、愛莉は今まで色々とゲームをやってきたが、始める段階で何かと恵まれることはなかった。

 初期選択可の種族や(クラス)、武器を選び地道に遊んでいた。

 今回、栞奈に押し付けられる形で始めることになったゲームで遂にレア種族を当てることができた。

 演出がなかったからか、愛莉の理解が追い付いていなかったのかは分からないが、(クラス)選択に移ってから実感が沸いてきていた。


「この機を逃してはならないのです!さぁ!ランダムをお願いします!」


 この機を逃してはならない。

 確かに、興奮を隠すために抑えるために、初期選択(クラス)を物色した。

 モフラーとやらは忘れた。

 愛莉はこれ以上、自分の気持ちを抑えることはできない。


『本当によろしいのですね?』


「はい!」


『分かりました。』


 AIがそう発すると、新しいウィンドウが現れ、ルーレットが表示される。


『視覚的な楽しみが欲しいと言っていましたので、準備しました。』


 このAI、ちゃんと話を聴いていた。


『スタートと言うとルーレットが回り、ストップと言うとルーレットが止まります。アリス様の好きなタイミングで叫んでください。』


「えっ!?叫ばないといけないの!?」


『はい。』


 叫ぶことに疑問が生じるが、今、自分に時代が来ていると愛莉は信じているためか、叫ぶぐらいはいいだろうと判断する。

 愛莉は気合を入れる為に、目を瞑りゆっくりと深呼吸を行う。

 よしっ!と小さな声で発し、目を開け息を肺が空気で一杯になるように大きく吸い込む。


 そして叫ぶ。


「スタァァァアアアアトオオオオオオオオッッッ!!!」


『うるさいです。』


 AIがなんか言った気がしたが、愛莉は無視した。

 ルーレットはゆっくりと回り始め、ドラムドールがどこからか響き始める。

 ルーレットの回転速度が最高速に達する頃、愛莉はゆっくりと息を吸い込み始める。


 そして、肺が空気で満ちた瞬間、愛莉は叫ぶ。


「ストォォォオオオオオップッッッ!!!」


 愛莉が叫び終えたその時、ルーレットはビタァアッ!と止まった。

 その光景を目の当たりにした愛莉は目を丸くした。


「……ストップって言ってからどこに止まるかなー?みたいな余韻はないの?」


『…?止まりましたよ?」


「そうじゃないんだよ…。あっ!それよりそれより!(クラス)は?(クラス)は何になったの!?」


 どこかズレているAIは放っておき、愛莉は自分のメイン(クラス)が何になったのか気になった。


『えー…。「人形師」です。』


「人形師…?あれ?さっきのウィンドウで見覚えがあるんだけど」


『はい。初期選択可の(クラス)です。』


「…派生(クラス)とか発展(クラス)ではなく?」


『はい。基本(クラス)です。アリス様の時代はとうに終わっていたみたいですね。』


 愛莉は膝から崩れ落ち、両手を地に付け項垂れる。

 余りにも早い時代の終わりを知り、このゲームでやっていけるのだろうかと思いに暮れていた。


 △   ◆   ▽


 愛莉は自分の時代が終わったことを知り自嘲しかけた所、新しいウィンドウが表示された。


『使用する武器を選択してください。』


「……もうやだ」


『そう言わずに。』


「うぅ…」


『私が選びますよ?』


「…それは」


『決めました。私の独断と偏見で決めました。というより、これ以外選択肢はないので諦めましょう。』


「え、選択肢ないの!?」


『あります。』


 愛莉は表示されているウィンドウを見てみると、そこには『大鎌』とだけ書かれていた。


「一個しかないじゃん!」


『選べますよ?』


「もういや…」


『伝え忘れていましたが、チュートリアル終了後、街で他の武器を購入し装備することができます。』


「えぇ!?」


『チュートリアルの都合です。「人形師」の最適性武器は「大鎌」のみとなりますので「大鎌」が選択肢としてあります。因みに「剣士」だった場合、片手剣、両手剣、短剣、大剣、レイピアと言った選択肢が表示されます。』


「そうなんだ。じゃあ、大鎌でお願いします」


『ほかに選択しないですもんね。』


「うぐっ…」


 チュートリアルでは、剣士には剣の扱い方を、槍使いには槍の使い方を教えることになっているため、この選択肢の少なさになっている。

 人形師の最適性武器が大鎌というのには、驚きを隠せない愛莉だったが選択肢が一つしかない以上仕方がない。

 初期武器は大鎌に決まり、愛莉は次のステップへと進んだ。


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