第82話 第3回元男達のガールズトーク! 前編
年末に向けて最近忙しくなってきたのです。今が頑張り時というやつですね。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
中間テスト二日目。残りの教科を片付けた後、生徒達はテストが終わった解放感と共に帰宅の路についていた。
それは晴彦達のクラスでも例外ではなく、テストが終わった解放感に身を任せ買い物に向かうもの。我慢していたゲームをするために全力ダッシュで帰る者もいた。中には一夜漬けのせいで眠気に襲われ、フラフラになりながら帰る者もいたのだが。友澤などがそれである。
「終わっっったーーー!!」
晴彦もテストの終わった勢いそのままに思いっきり叫んでいた。いつになくテンションが高く、嬉しさが体全体から滲みでていた。
「アハハ! 嬉しそうだねー、ハルっち。それで、赤点は回避できそうなの?」
「そんなこと知らない関係ない。今はただこの解放感に身を任せていたい」
どこか遠い目をしながら晴彦が言う。どうやらテストの出来は芳しくないようだ。
「まぁでも、ハル君昨日も勉強頑張ったし、赤点ってことはないと思うよ。平均点はどうかわからないけど」
「うっせ。どうでもいいんだよ。もう終わったんだから。それじゃ帰るか」
「あ、その……」
「ごめんねー。アタシとレイちゃん、この後ちょっと用事あるんだ」
「用事?」
「あ、うん、そうなの。ごめんね。ちょっと時間かかるかもしれないから先に帰っててくれる?」
「? あぁ、わかった」
零音と雪に同じ用事があるというのは珍しいと思った晴彦だったが、今は早く家に帰りたいという思いが強かったため、特に疑問を挟むことなく頷く。
「そんじゃ、また明日ね~」
「また明日。ハル君はまた後でね」
「おう」
「う、うん。また明日」
「それではな」
晴彦、めぐみ、山城の三人を残して零音達は教室を出る。
そのまま学園を出て向かうのは以前にも来たことがある喫茶店『目覚めの小鳥亭』だった。
店の中に入った二人は、店の奥の目立たない場所に座る。
平日のお昼ごろという時間ではあったためか、店内にはそれなりに客がいた。
「テストお疲れさん」
「…………」
「ぷっ、なんだよその顔」
テストが終わったということをねぎらっただけでおかしな人を見る顔をする零音に、雪が思わず吹き出す。
「いやだって、そんなこと言うタイプだと思ってなかったから」
「お前の中でのオレはどんなやつなんだよ」
「不良っぽい……とは言わないけど、口が悪い人かな」
「率直だなおい」
「別に嘘吐くようなことでもないし」
「オブラートに包むってことを知らねぇのかよお前は」
「他の人ならそうするけど」
零音にとって雪は自分のことを知る数少ない人物の一人だ。だからこそ、そこまで取り繕う必要がないと零音は思っていた。
「まぁいいけどよ。それで、オレらのことを呼び出した会長様はまだ来ねぇのか?」
「もうすぐじゃない? 私としても早く終わらせたいんだけどね」
「晴彦の傍にいたいからか?」
「そうだけど」
からかうように言った雪の言葉をあっさり認める零音。雪が自分の気持ちを知っているならば隠す必要もないし、好きな人の傍にいたいというのは当たり前の感情だと零音はもう開き直っていた。
「素直だなぁおい。でも、晴彦のことばっかりに気を取られてたら足元すくわれるかもしんねーぞ」
「どういうこと?」
「すぐわかるって。それよりもほら、会長様のご到着だぞ」
零音と雪から遅れることしばし、雫が喫茶店へと到着した。
「待たせたみたいだね」
「呼び出した本人が遅れるってどういうことだよ」
「ごめんごめん。少し生徒会の用事があったんだよ。それを処理していたら遅くなってしまった」
「それはいいんですけど。前みたいに生徒会室を使うわけにはいかなかったんですか?」
「できればボクもそうしたかったんだけどね。今はちょっと……厄介な子がいてね」
「厄介な子?」
「こっちの話さ」
雫の言う厄介な子というのはもちろん花音のことである。最近、何かと理由をつけては雫の元へやって来て晴彦が来ないかどうか警戒をしているのだ。
そのせいで中々晴彦を生徒会室に呼ぶことができず、雫は少しだけイラっとすることもあった。
「それで、なんでまたオレらのこと集めたわけ? しかもテスト終わりに」
「テスト終わりって言うことは謝るけど。たまにはいいだろう? こうして近況を語り合うというのも」
「それだけ?」
「それだけ」
「……まぁいいけどよ」
「おや、意外だね。君はこういうの嫌がると思ってたんだけど」
「……お前の中でのオレはどんな奴なんだよ」
「不良ではないけど口の悪い子、かな」
「お前もかよ!」
零音に言われたこととほとんど同じことを雫に言われ、若干へこむ雪。口が悪いという自覚が乏しかっただけに、二人の言葉は思った以上に聞いたようである。
「そんな口悪いのかオレ……まぁいいや。オレも言いたいことあったからちょうどいいと思ったんだよ」
「言いたいこと?」
そこで雪は雫から視線を外して、零音のことをジッと見つめる。その目を見た零音は、少しだけ嫌な予感がした。
「オレ、晴彦のこと本気で好きになったかもしんねぇ」
「……え?」
ガチャン、と持っていたティーカップが手から零れ落ちて大きな音を立てる。
しかし零音はそのことに気付かない。予想もしてなかった雪の言葉に反応すらできていなかった。
「なんで……どういうこと」
「どういうこともそういうこともねぇよ。ただ晴彦の事を、一人の異性として見てるオレがいるってことに気付いただけだ」
動揺する零音に対し、雪は冷静なままだ。
「別にわざわざ言う必要はねぇかとも思ったんだがな。でもそれはフェアじゃねぇ」
雪は零音の気持ちを知っている。それなのに、自分が晴彦に対する気持ちを告げないというのは公平じゃないと思ったのだ。
「前に負けねぇぞって言ったけど。そこに理由が一つ追加だ。オレは晴彦を誰にも渡したいとは思わねぇ。もちろん、あんたにもな」
そこで雪は雫にも目を向ける。雫は、雪の突然の告白をさして驚いた風でもなく聞いていた。
「なるほど。それが君の言いたかったことか」
「あぁ。オレが言いたいのはこんだけだ」
「ふむ、公平じゃない……ね」
少し考え込むような仕草をする雫。
「どうかしたのか?」
「ボクも言っておくべきかな、と思ってね」
そして、零音と雪の顔を見て言う。
「実は、というほどでもないけれど、ボクも日向晴彦のことが好きなんだ」
花音「へくしっ」
弥美「どうしたの? 風邪?」
花音「ううん。これはお姉さまが私のことを話してくれてるのよ!」
弥美「あーはいはい。それはいいから早く鼻拭きなさい。見苦しいから」
花音の雫センサーは今日も好調なのであった。
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次回投稿は11月22日21時を予定しています。