第5話 部活動見学 後編
今回の話でようやくヒロインが揃いました。
生徒会長ってなんか強キャラ感がすごいですよね。生徒会長ってだけで強い気がします。
「さぁどうぞ。遠慮せずに座って」
部活勧誘の人込みから抜けて休憩していた俺達は偶然生徒会長と遭遇し、あれよあれよという間に生徒会室へとやってきていた。
生徒会室には生徒会長以外おらず、他の役員は部活への巡回を行っているらしい。
「皆さん紅茶でいいかしら」
「あ、そんなお気遣いなく」
「いいのよ別に。せっかくなのだから振る舞わせてちょうだい」
「それじゃあ……お言葉に甘えて」
生徒会長さんが紅茶と一緒にお菓子も出してくれる。なんだか高そうだけど……大丈夫だよな。
「ふふっ、遠慮せずに食べていいわよ」
そんな俺の様子を見抜かれたのか、生徒会長さんが笑ってお菓子を進めてくる。
「それじゃあ改めまして、昼ヶ谷雫よ。二年生だけど生徒会長をやらせてもらってるわ」
「はい、知ってます。すごく有名なので」
「そうなの? それは光栄ね」
「あ、俺は日向晴彦です。それでこっちが、」
「……朝道零音です」
「夕森雪でーす」
どうしたんだろうか。さっきから二人とも妙に静かだ。緊張してるんだろうか。
「三人ともよろしくね」
「それで、あの、俺達に何か用なんですか?」
「用という用はないけど……そうね。勧誘かしら」
「勧誘ですか?」
「悲しいことに生徒会は人が足りてないのよ」
話を聞くと、この学園において生徒会のこなす役割は随分と大きいらしい。前生徒会の役員が辞めてからは特に人が足りなくなったらしい。
「新入生にこんな話するのも情けないけど人が足りてないのは事実だもの」
「それで俺達に声をかけたんですか」
「そうよ。私はたとえ新入生でもやる気があるなら生徒会に入れていいと思ってるわ」
「いや、さすがにそれは無茶なんじゃ……」
「そんなことないわ。私が育てるもの」
その凛とした態度には自信が満ちていた。この人についていけば大丈夫、そう思わせてくれるような態度だ。
「どうかしら。あなたたちは生徒会に興味はある?」
「いや、流石に生徒会はちょっと荷が重いかなーなんて」
「ごめんなさい。私もちょっと……」
「アタシ生徒会とかかたっ苦しいの苦手だからいいや」
「そう、それは残念だけどしょうがないわね」
「すいません、せっかく勧誘してもらったのに」
「気にしなくていいわ。こっちこそごめんなさいね。いきなりこんな話をしてしまって」
そう言って紅茶を飲む昼ヶ谷さん。なんというかすごく絵になる。紅茶を飲むだけでここまで絵になるとは。
それから少しだけ雑談をした俺達は生徒会室から出ていくことにした。
「それじゃあ失礼します」
「えぇ、あなた達と話せて楽しかったわ。あ、でもその前に……朝道さんと夕森さん、少しだけいいかしら」
「? はい、大丈夫です」
「アタシもいいけど」
二人に何か用事でもあるんだろうか? でも、昼ヶ谷さんと零音たちは初対面のはずだし……。
「えっと……じゃあ俺は出ていった方がいいですよね?」
「そうね。申し訳ないけど席を外してもらえる? そんなに時間はかからないはずだから」
「それじゃあ失礼します。俺教室に行ってるな」
「うん、わかった。終わったら行くね」
「また何か困ったことがあれば生徒会室に来なさい。いつでも相談に乗るわ」
「はい、ありがとうございました」
はぁ、なんというか緊張してしまった。でも昼ヶ谷さんすごくいい人だったな。それになんていうか、大人って雰囲気だ。一年でここまで差が出るもんなのか……いや、たぶんあの人が特別なんだろう。
「まぁとりあえず教室に行くか」
そうして教室に向かった俺は、生徒会室でどんな話が行われていたかなど知る由もなかった。
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「それで、私達に何か用ですか?」
晴彦が遠くに離れていくのを確認して私は切り出した。
「用というのはほかでもないのだけど……あなた達は『アメノシルベ』を知っているかしら?」
「「!」」
「その反応は知ってるみたいね……それじゃあ君たちはあの時いた人たちなんだね」
ふと、生徒会長の話し方が変わる。
「うん、そうだけど」
「あぁ。そうだよ」
「よかった。これでもしボクだけだったらどうしようかと思ったよ。それにしても君たちすごいじゃないか。なかなかの演技力だ」
「そういう君もすごいと思うけど」
「オレも全然わかんなかったよ」
この部屋に来た時からこの人があの時の人なのかどうなのかを探ろうとして観察していたけど。全然わからなかった。まさに昼ヶ谷雫そのものだった。
「うーん、ボクが言うことじゃないけど、その姿でその喋り方だと違和感がすごいね」
「そりゃ確かにお前が言うなって感じだな。あの昼ヶ谷雫がボクっ娘なんてなぁ」
「いや、君には言われたくないよ。ボクの中の夕森雪のイメージが崩れていくんだけど」
「あはは。それはどっちもどっちだと思うんだけど」
「しっかしまぁ、これであの神とかいう奴が言ってたことが本当だってことがわかったわけだ」
「そうだね」
「君ももちろん目的は同じなんだろう?」
「そうだね。君たちには悪いけど晴彦とエンディングを迎えて元の世界に帰るのはボクだ」
「オレ達を呼び止めたのはそんなこというためか?」
「まぁ、それもあるんだけどね。それだけじゃないよ」
「ほかにも用があんのか?」
「君たちはこの世界が現実とゲームどっちだと思う?」
「あん? どっちも何も『アメノシルベ』の世界なんだからゲームだろ」
「君は?」
「私は……」
この世界がゲームか現実か……それは昔からずっと考えてきたことだ。夕森と一緒でこの世界はずっとゲームだと思っていた。でも、中学の時に起きたとある事件がきっかけで、この世界は現実でもあるのだということがわかった。
「わかんない。ゲームみたいなとこもあるけど、現実もあるからさ」
「そう、そうなんだ。この世界はゲームの時のように登場人物が限られてるわけじゃない。他にも人がいる。現実の世界として存在してるんだ」
「だからなんなんだよ」
「協力するべきだと思うんだ」
「協力?」
「ゲームのシナリオがあるところはある程度シナリオ通りに進むみたいだけど、それ以外。ゲームでは描写されてなかった日常の部分では何が起きるのかわからない」
それは確かにそうだ。高校に入る前の中学の生活も、昨日の夜のご飯も、ゲームではなかった場面だ。
「もしかしたら、晴彦がボク達以外に目を向けてしまうことがあるかもしれない。そうなったら、ゲームのシナリオそのものが崩壊しかねない。そしたらもう元の世界に戻るどころの話じゃなくなるからね」
「それは確かにそうだけど」
「そう考えたら悪い提案じゃねぇな」
それは確かにそうだ。メリットもある。だけど、本当にそれだけだろうか。何か他にも目的があるんじゃ……。
「二人とも賛成でいいかな?」
「おう」
「……はい」
何かひっかかるものはあるけど、とりあえずは乗ることにしよう。
「それじゃあとりあえずLITIの交換をしておこうか……うん、これでよしっと。それじゃあ朝道も夕森もよろしくね」
「あぁ。まぁ基本は敵だけどな。勝つのはオレだ」
「ボクだって負けるつもりはないよ。積極的に攻めさせてもらうさ」
「私だって負けません。絶対に」
視線がぶつかり合う。決して負けないという意思を込めて見つめ返す。
「話はこれだけだよ。それじゃあ戻りましょうか」
「そうだねー。ハルっち待たせちゃってるし」
再びキャラとしての仮面をつけた昼ヶ谷と夕森。
その切り替えの早さは見事の一言に尽きるだろう。
「それじゃあ、またね」
「それではまた。失礼します」
「まったねー」
私達三人は敵同士だ。しかし協力関係もできてしまった。
そう考えるとすごく不思議な関係かもしれない。まぁなんにしても利用できるものは利用するだけだ。
そんなことを考えながら、私は教室へと向かうのだった。
結局まだそんなに話が進んでない気がする……なんということでしょうか。
とりあえずこれで部活動見学は終わったので次は閑話を挟むか、次に進めるかなのですが、明日はキャラ紹介を出したいと思います。
つたない文章ですが読んでくださりありがとうございます。より良い内容にできるよう努力していくので、また次回もよろしくお願いします!
次回投稿は8月10日9時を予定しています。