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第67話 雪は勉強会に参加したい

十月も終わりですね。あっという間でした。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 どこかで誰かから理不尽な怒りを買ったような感覚を覚えながら俺は教室へと戻ってきた。

 桜木さん達と話してたり、フルーツオレを買うために少し離れた自販機に行っていたということもあって少し遅くなったけど……大丈夫かな。


「ハルっちおそーい。何してたの? 待ちくたびれたよー」


 案の定というか、不満気な顔をしてる雪さん。

 

「ごめん、色々あってさ」

「何かあったの?」

「んー、まぁ大したことじゃないよ」

「ならいいんだけど……あれ?」


 不意に零音が顔を近づけてくる。


「ど、どうかしたのか?」


 いきなり近づいてきた零音にドキドキしつつも、服を掴まれているので離れることもできない。

 俺の服に顔を近づけて、クンクンと匂いを嗅ぐ零音。

 

「……知らない人の臭いがする。一人? ううん、二人。誰かと会ってたの?」


 教室の気温が一気に下がった。ような錯覚を覚える。

 俺は蛇に睨まれたカエルのように動けない。

 怒ってるってわけじゃないのになぜか怖い。こんな零音を見るのは初めてだ。

 二人ってもしかしなくても桜木さんと病ヶ原さんのことだよな。なんでわかるんだよとか、言いたいことは色々あるけど……普通に答えて大丈夫かな、これ。なんか危ない気がする。


「ハル君? どうしたの? 答えてよ」

「えーと……雫先輩の後輩に会ってさ。少しだけ話してたんだよ」

「後輩?」

「そうそう、中等部の生徒会の人らしくて」

「……ふーん。仲良いの?」

「いや、今日初めて話したくらいだけど」

「そっか。ならいいかな」


 パッと俺の服から手を離す零音。それに伴って、教室にいつもの空気が戻る。

 ふー、焦った。というか、いきなりどうしたんだろ。

 嫉妬……なわけないか。嫉妬する理由がないし。普通に帰って来るのが遅かったから怒ってるだけだろ。

 全員に買ってきた飲み物を渡し、話していると不意に教室に太田先生が入って来る。


「朝道はいるか?」

「はい。どうかしたんですか?」


 太田先生に呼ばれた零音が立ち上がる。


「今日日直だろ? 次の時間の用意があるらしくてな。日直に来るように伝えてくれって言われたんだ。行ってくれるか?」

「わかりました。それじゃちょっと行ってくるね」

「あぁ、わかった」


 太田先生と一緒に零音は教室から出ていった。

 何か運ぶものがあるなら俺も手伝いに行った方がよかったかな。いや、大丈夫か。一人で大丈夫だから太田先生も零音の事だけ呼んだんだろうし。


「そういえばさー、今月末から中間テストだけど皆勉強してる?」


 俺が次の時間の用意をしようと鞄からノートや教科書を取り出していると、その様子を見ていた雪さんがそんなことを聞いてくる。


「オレは軽音部の練習で忙しいからなー。テスト前に一夜漬けかな」

「それ大丈夫なのか?」

「なんとかなるだろ。あ、でもノートは写させてくれな。午後の教科はほとんどノートとれてないんだよ」

「それぐらいはいいけど」


 友澤の奴は午後の授業はほとんど寝てるからな。午前中は元気なのに。


「俺は毎日復習を欠かさずにしているからな。今までの分野なら問題ない」

「わ、私も寝る前に勉強はしてるよ。自信はないけど……」


 山城と井上さんはちゃんとしてるらしい。まぁ、性格通りというか。山城の家は文武両道を掲げてるらしいし、井上さんは真面目な性格だからなー。予想外ではない。


「へぇ、みんなちゃんとやってるんだね。アタシも勉強しないとダメかなー。でも苦手なんだよねー、勉強。体動かすのは好きなんだけど」

「勉強も試練だと思えば苦労は感じないぞ」

「それはヤマっちだけだよー。運動と勉強を一緒にはできないって。ハルっちは? 勉強してるの?」

「今は特にしてないけど。今週末に零音と一緒に勉強する約束はしてる」


 俺は中学の時からだいたいそんな感じだ。テストの二週間ぐらい前から時間のある時に零音と一緒に勉強する。まぁ、そうしないと俺が勉強しないからなんだけど。おかげで中学時代はそれなりの成績だった。


「はぁ! なんだそれ羨ましい!! 幼なじみと一緒に勉強とかどんな勝ち組だよ!!」


 零音と一緒に勉強すると聞いた友澤が大声で言ってくる。

 いきなり叫ばれたこともあって、近くにいた井上さんが驚いて飲み物が変な所に入ったのかむせてるし。


「いきなり叫ぶなよ、びっくりするだろ。大丈夫、井上さん」

「ゴホッゴホッ、う、うん。大丈夫。ありがとね」

「あ、悪い。でも羨ましいんだからしょうがないだろ」


 井上さんの様子を見た友澤が謝りつつも言ってくる。

 いつも思ってることだけど、羨ましがられてもどうしようもないしな。


「そっかぁレイちゃんとハルっちは一緒に勉強すると。ねぇ、それっていつするの?」

「とりあえずは今週の日曜日にって話してるけど」

「アタシ達も行っていい? ほら、二人よりみんなで勉強したほうがお互いのわからないとこ教えあえるじゃん」

「……それ、雪さんだけが一方的に教えてもらう展開にならない?」

「……ソンナコトナイヨ」

 

 急に片言になる雪さん。

 やっぱり教えてもらうだけのつもりだったのか。まぁ、俺も人のことは言えないけどさ。


「ま、とにかくさ。みんなはどうなの、日曜日」

「あー、オレは軽音部の練習があるから無理だな」

「俺も家の手伝いがある」

「わ、私は大丈夫だけど……」

「んー、じゃあアタシとメグちゃんは参加できるんだ。お願いハルっち。一緒に勉強しよ! ね?」


 雪さんが上目遣いで頼んでくる。

 本音を言うなら零音と二人きりの方がよかったけど……ここまで頼んでくる雪さんを無下にもできないしな……。


「俺はいいけど、結局は零音次第だぞ。俺も勉強教えてもらう側だし」

「そっか。じゃあ後でレイちゃんが戻ってきたら頼むかー。あ、メグちゃんも一緒に頼もうね」

「え、う、うん」

「ハルっちもお願いね」

「わかった」


 雪さんに言われるがままに頷く井上さん。

 まぁ、零音も俺と二人よりも他にも人がいた方がいいか。二人で勉強ってのはまたできるだろうし。

 そう楽観的に考えていた俺は、ニヤリと不敵に笑う雪さんに気付かず、そして帰ってきた零音が勉強会の話をして不機嫌になるということをまだ知らなかった。



恋心を自覚した零音ちゃんは嗅覚も鋭くなるのです。ただし晴彦に対してだけ。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は11月1日21時を予定しています。

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