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第64話 夢、それは願望の塊

いよいよ第一章終盤が始まりです。

どれくらいで終わるかはまだわかりませんけどね。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 ドンッ!! と私は晴彦に壁に追い込まれていた。

 

「えっと……ハル君? どうしたの?」


 いつになく真剣な表情の晴彦。心なしかいつも以上にカッコよく見える。

 さっきまで普通に話してたはずなのにこれはどういうことなんだろう。っていうか晴彦の顔が近くてドキドキする。

 顔が赤くなるのを感じながらも努めて平静を装う。


「好きだ、零音」

「え?」


 胸が高鳴る。

 いきなり過ぎて頭が真っ白になる。


「ど、どういうこと?」

「好きなんだ。零音のことが。幼なじみとしてじゃなく。一人の……女の子として」

「ッッッ!?」


 パニック、パニックである。これは一体どういう状況なんだ。

 嬉しさとか恥ずかしさとか、色んなものが混ざって処理できない。


「零音は、どうなんだ?」

「わ、私もハル君の……ハル君のこと好きだよ」


 うきゃーーー!!

 言った! 言っちゃったーー!!

 私の言葉を聞いた晴彦はフッと優しい笑みを浮かべて、私に顔を近づけてくる。

 それの意味するところがわからないほど私は子供じゃない。


「ま、待ってダメだよ。他の人が見てる」


 そう言って晴彦を遠ざけようとするが、その力は私自身でもわかるほどに弱い。


「俺には、お前しか見えない」


 ゆっくりと近づいてくる晴彦。

 私はゆっくりと目を閉じて……。






□■□■□■□■□■□■□■□■


ジリリリリリリリリ!!

 けたたましく鳴り響く目覚ましの音に私は目を覚ます。


「…………」


 ゆっくりと体を起こした私は、少しだけ目覚ましを憎く思いながら止める。

 

「……何あの夢」


 ふと部屋の鏡を見ると、少し顔の赤い自分がいる。


「壁ドンからの告白からのキ、キスって……私は乙女か!!」


 自分の見てしまった夢のことを思い出すと恥ずかしくなる。

 いや、あれは夢。夢だから。あれが私の願望とかそういうことはないと思う……思いたい!

 少しだけ悶々としながらも、私はお弁当の用意をするためにキッチンへと向かった。

 

「はぁ、校外学習明けから私はなんて夢見てるんだろう」


 お弁当を作りながら私は呟く。

 校外学習で私は自覚した。晴彦のことが好きだと。

 一度気付いてしまえばその想いは止まるところを知らない。むしろ今まで抑え込んでた分、加速している気さえする。

 恐ろしい。人とはここまで人のことを好きになれるものなのか……と自分のことながらそう思わなくもない。

 しかし、問題がないわけじゃない。私の想いが報われるということは、晴彦と結ばれるということは私が元の世界へと帰る権利を手にするということと同じ。これは昼ヶ谷先輩にも言われたこと。そして、その答えを私はまだ出せていない。

 すぐに出せるようなものじゃないけどね。

 晴彦と一緒に居たい気持ち。元の世界に戻りたい気持ち。どちらも嘘じゃない。簡単に決めれることでもない。何より、晴彦に私のことを好きになってもらわないと意味がないんだし。

 晴彦に意識してもらえるように頑張らないとね。他の誰にも晴彦のことを渡したくはない。


「おはよう、零音ちゃん」

「おはよう」


 この先のことを考えながらお弁当を作っていると、お母さんが起きてきた。


「ん~、すごくいい匂い。今日は気合い入ってるのね。何かあるの?」

「え?」


 今日は別に何もない……というか、いつも通り作ってるだけのはずなんだけど。

 お弁当のメニューも珍しいものを作ってるわけじゃない。


「ううん。何もないけど」

「あらぁ? そうなの? 変ねぇ確かに……あぁ、そういうことぉ」


 そう言いながらお母さんは私の作ったお弁当をチラリと見て納得したような顔をする。


「そういうことって?」

「それ」

「それ?——って、えぇ!!」


 お母さんが指さしたのは晴彦のお弁当箱。

 言われるがままにお弁当を見た私は、お母さんがいることも忘れて思わず叫ぶ。

 そこにあったのは、お弁当のご飯の部分に桜でんぶで描かれた大きな大きなハートの形。


「ち、ちが、これは、その」


 しどろもどろになりながら言い訳しようとするけど、上手く言葉が出てこない。

 無意識だ。完全に無意識だった。


「うふふ、誤魔化さなくてもいいわよぉ。お母さんちゃんとわかってるから」


 いつになく優しい顔のお母さん。


「あぅう、だから、これは」

「好きなんでしょ? 晴彦君のこと」

「うぅ……はい」


 最早否定することなんてできそうにない。というか、認めない限り追及されそう。まさかこんなに早くバレるなんて……別に隠してたわけでもないけど。

 でもお母さんに知られるのはなんとなく恥ずかしいっていうか。


「秋介さんにも教えてあげないとねぇ。やっと零音ちゃんが晴彦君に告白する気になったってぇ。二人とも見ててじれったいんだものぉ」

「こ、告白!?」

「零音ちゃんが晴彦君のこと好きなのわかってたけど、いつまで経っても言わないんだものぉ」

「いやでも、告白とかそういうのはまだ早いっていうか、それに……」

「それに?」

「は、ハル君からしてほしいなぁ……って」


 思い出すのはさっきの夢の事。

 別のにあそこまでして欲しいとは思わないけど、できれば告白は晴彦からして欲しい。

 というか夢のことを思い出すとまた顔が赤くなってしまう。


「うふふ、青春ねぇ」


 そう言って笑うお母さんをみて、ふと思う。

 お母さんとお父さんの馴れ初め話は嫌になるほど聞いたけど、お母さんっていつからお父さんのこと好きだったのかな? せっかくだし、聞いてみようかな。


「ねぇ、お母さんはいつからお父さんのこといつから好きだったの?」

「秋介さんのこと?」


 んー、と考え込むお母さん。

 あれ? てっきりすぐに答えてくれると思ってたんだけど。


「わからないわ」

「わからない?」

「気づいたら好きだったものぉ。いつ好きになったかなんてわからないわ。零音ちゃんもそうでしょ?」

「それは……うん」

「それでいいのよ。大事なのは、今あなたが晴彦君のことを愛してるってこと。自信を持ちなさい。そしたらきっと晴彦君も応えてくれるわ」

「……そうかな?」

「えぇ、だって零音ちゃんは私の自慢の娘だもの」


 お母さんにそう言われると不思議と本当に大丈夫な気がしてきた。

 やっぱりお母さんには敵わないな。

 その後、お母さんから気になる男の子を落とすためのノウハウみたいなものを聞かされましたとさ。

 あ、ちなみにお弁当に桜でんぶで書いたハートは消しておきました。

 さすがにまだ恥ずかしいからね。




たまにすごく恥ずかしい夢とか見ますよね。

でもそういう夢ってメモして残しておくとネタになると思うんです。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は10月28日18時を予定しています。


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