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第57話 校外学習編23 シュークリーム事件

以前投稿した『生徒会長の秘め事』の続編である『生徒会長の悩み事』という作品を投稿しました。もしよろしかったら読んでみてください。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 ちょっとした騒動はあったものの、俺達は無事にお菓子を作り終えることができた。途中で部屋を出ていた雪さんも生チョコが冷やし終える頃には戻って来ていた。「さっきはごめんね~」って謝られたから、心臓に悪いからもうしないでくれよ、とだけ伝えておいた。

 雪さんには軽く笑って流されたけど……大丈夫だよな?

 そして全員が作り終わり、今からまさに食べようといったところだった。


「流石に全員で作るとすごい量になるわね」

「一応、あんまり多くなり過ぎないように気を付けたんですけどね」


 机に並べられたお菓子の山を見て雫先輩と零音が言う。

 確かに、机の上に並べられたお菓子の量は半端じゃない。特に、井上さんと双葉先輩の作ったドーナツ。山のようにあるそれは、明らかに人数分以上の数があった。


「双葉、私は言ったはずよ。全員作るから数は考えておきなさいって」

「えー、そうだっけぇ?」

「あぅ、ごめんなさい……」


 素知らぬ顔で言う双葉先輩と、申し訳なさそうに謝る井上さん。

 そんな二人の様子に、雫先輩はため息を吐く。


「井上さんが謝ることはないわ。悪いのは双葉なんだから。それに、作ってしまったものはしょうがないわ」

「そうそう、しょうがないしょうがない」

「あなたが言わないで。とにかく、食べましょうか」


 山城の所はおはぎ、友澤の所はクッキー、二宮先輩の所がタルト、そして零音の所がシュークリームを作っていた。


「いやー、どれも美味しいですね! さすが朝道さんと会長ですよ!」

「ふふ、そう言ってくれると嬉しいわ」

「うん、まだまだあるからたくさん食べていいよ」

「はいっ!」


 食べ始めてしばらく、友澤がシュークリームを食べながら言う。

 確かに零音達の作ったシュークリームは美味しかった。たまに零音がお菓子作ってくれることとかあったけど、普通に売られてるやつにも負けないんじゃないか……なんてのはさすがに言い過ぎかな。

 でもなんだろう、雫先輩が今なんかすごく悪い顔をした気がしたんだけど……気のせいかな。


「モグモグ……」

「あ、先輩、お菓子が口についてます」


 そして一心不乱にお菓子を食べ続ける双葉先輩。ドーナツの山だけでなく、他のお菓子もすごい勢いでなくなっていく。そんな双葉先輩の口についたお菓子を取ってあげたりしてる井上さん。あれじゃどっちが年上かわからないな。


「どうした日向。食べないのか? なくなってしまうぞ」

「あぁ、いや、食べるよ。食べきれるか心配だったけど、このぶんだったら大丈夫そうだな」

「そうだな。まぁ、残ったとしても俺が全部食えるんだが。風城先輩がいるならその心配もないだろう」

「お菓子好きなのか?」

「あぁ、甘味は和洋問わず大好きだ」


 なんていうか意外な事実。山城って甘味はいらぬっ。って感じの風貌なのに。


「意外か?」

「まぁ、ちょっとな。あんまりお菓子とか食うタイプには見えない」

「よく言われる」

 

 そう言って山城が笑う。

 それからしばらく、先輩達と話したりしながらお菓子を食べ、シュークリーム以外のお菓子がほとんどなくなりかけた時、それは起こった。


「ぎゃぁああああああああ!!!」


 零音達の作ったシュークリームの一つを食べた友澤が、叫び声を上げてのたうちまわる。


「どうした!」

「か、から……み、みず、みずっ」


 喉を抑えながら水を要求する友澤。慌てて持ってきた井上さんの手からひったくるようにして水を飲む友澤。

 その様子を見ていた雫先輩がニヤリと笑う。


「どうやら当たった、ようね」

「当たったって……どういうことですか?」


 その場にいた全員の視線が雫先輩に集中する。


「いま友澤君が食べたのは……からし入りのシュークリームよ!」

「「「!!!」」」

「この私がただお菓子作りを提案するわけがないでしょう。全ては、この瞬間のためよ」


 この瞬間のためって、もしかしてこの人俺達にそれを食べさせるためにお菓子作りしようとか言い出したのか!

 チラリと零音に目をやると、零音もまた驚いた表情をしていた。まさか零音にも伝えずにやったのか雫先輩は。


「からし入りのシュークリームは全部で三つ。そして、友澤君が一つ食べたので残り二つ……さぁ、ゲームを始めましょう」

「ゲームって何するんですか?」

「残りのシュークリームが十二個。私達の人数が十二人……それぞれに番号を振るわ。そして、使うのはこれよ」


 そう言って雫先輩が取りだしたのは、ペア決めの時に使ったクジだった。しかし、その数はさっきよりも多い。

 

「番号は私がランダムに番号を振るから——」

「ちょっと待ってもらっていいかなぁ」


 雫先輩が進めようとしたのを、双葉先輩が遮る。


「何かしら」

「番号なんだけどぉ……めぐみちゃんに決めてもらいたいんだけどぉ」

「え、わ、私ですか!」


 突然双葉先輩に指名された井上さんが慌てふためく。


「うん。だってさぁ、会長が始めたゲームで、会長が番号ふるとさぁ、いくらでも細工できそうだしねぇ」

「……いいわ。そうしましょう」

「えぇっ」


 雫先輩にクジを渡された井上さんが、それぞれのシュークリームに番号を振り、一人ずつクジを引いていく。

 俺もクジを引いて、その番号の振られたシュークリームを手に取る。

 見た目ではからし入りかどうかはわからない。これがからし入りかもしれないと思うと……ゴクリと喉が鳴る。友澤の二の舞にはなりたくない。ちなみに、その友澤もクジを引かされていた。

 双葉先輩と、雫先輩以外は全員、神妙な顔で手にしたシュークリームを見つめている。


「さぁ、食べましょうか」


 ギュッと目をつむって、思い切ってシュークリームを口に放り込む。

 しかし、覚悟した辛みは襲ってこない。口に広がったのは甘いクリームの味だった。

 はぁ、助かった……でもそれじゃ誰がからし入りを食べたんだ?


「ぎゃぁああああああああ!!!」


 悲鳴が上がる。その主は、


「友澤! またお前か!」


 なんてついてない奴。まさか二連続でからし入りのシュークリームを引くとは。

 もだえ苦しむその姿はいっそ哀れだ。

 でも、まだ一つ。あと一つは誰が。

 そう思って周囲を見渡す。すると——


「雫先輩っ!?」


 ただ一人、口を押えて何かに必死に耐える様子の雫先輩。まさか雫先輩がからし入りシュークリームを引いたのか!


「ば……そんな、私はちゃんと計算して……」


 涙目になりながら呟く雫先輩。

 その様子を見ていた双葉先輩がニヤリと笑う。


「ボクが入れ替えたんだぁ。最初にシュークリーム見た時、いくつか変なシュークリームがあったからさぁ」


 双葉先輩の説明によると、皿の上に小さな目印のようなものがあったらしく、その上に雫先輩はからし入りのシュークリームを置いていたらしい。そして友澤がからし入りのシュークリームを食べた段階で雫先輩の企みに気付き、シュークリームを入れ替えたらしい。


「まさか……気付かれるなんて……」

「まぁ、入れ替えた後会長のとこにいくかどうかはわからなかったけどさぁ」

「くっ」

「これに懲りたらお菓子で遊んじゃダメだよぉ」


 ガクリとうなだれる雫先輩。しかし、今の先輩ほど自業自得という言葉が似あう人もいない気がする。突如始まったロシアンルーレットのようなものは雫先輩の負けという形で終わりを迎えた。

 そんな先輩を見て雪さんとか他の皆が笑ったり、田所先輩が苦しむ雫先輩を見て悶えてたりしているなか、みんなと同じように笑っているのに、心ここにあらずといった零音の様子に、俺は違和感を覚えるのだった。





このからし入りのシュークリームは過去に一度食べたことがありますが……死ぬかと思いました。

やっちゃダメですね。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は10月18日21時を予定しています。

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