第51話 校外学習編17 朝のバイキング
朝ごはんは大事です。しっかりと食べないとですね。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
二日目。
朝起きた俺達は身支度をすませてホテルの食堂へと向かった。
朝ご飯はバイキング形式で、好きな物を好きなだけって感じだったけど……いつも零音が朝ごはん作ってくれてるからこうやって自分で好きな物ばっかり選んで食べれるのって久しぶりな気がする。
「あぁー、ねみー」
「いい加減起きろよ」
友澤はまだまだ眠そうだ。さっきも一番最後まで起きなかったしな。
山城は俺が起きた時にはもう起きてた。
どうやら朝のランニングに行ってたらしい。
「山城は……いっぱい食べるんだな」
「あぁ、朝は一日の資本だからな。自分に気合を入れるためにも食べれるだけ食べる」
「そうだな。俺も山城見習っていっぱい食べとこうかなーっと」
とりあえずということで、玉子焼きとか、ハムとかパンとか、食べたいと思ったものをそのまま皿に乗せていく。
足りなかったらまた後でとればいいし、とりあえずはこんなもんでいいだろ。
まだ半分夢の世界にいる友澤の分もとって、俺達は席に座る。
「そういや今日って何するのかな」
「昨日と同じで午前は授業、午後はまた二年生の先輩方と行動だが……何をするかまではわからないな。おい、寝るな友澤」
「zzz……あてっ! て、敵襲、敵襲か! ってあれ?」
「敵襲って、いつの時代だよ」
「いやぁ、なんか今俺戦国時代の武将になってたんだけど。夢だったかー。残念だ」
「また面白い夢見てるなお前は。それで、目は覚めたか」
「おう! 完璧だ。一回スイッチ入ったら早いんだぜ、オレは」
「そりゃよかった。お前の分もとってあるからさっさと食べろよ」
「お、ありがとな」
やっと起きた友澤がすごい勢いで朝ご飯を食べ始める。
「おい友澤、そんな勢いで食べたら」
「——んぐっ!」
「喉に詰まらせるぞって……遅かったか」
苦しむ友澤に水を渡そうとすると、スッと横から水が差しだされる。
「はい」
「あぁ、ありが……って零音!?」
「おはようハル君。どうしたの? そんなにびっくりして」
「い、いや、なんでもないけど」
まずい。昨日山城とあんな話したせいか、なんていうか、妙に意識してしまう。零音が俺に一歩近づくと、ふわりといい匂いが漂ってきて……ってダメだ! 意識するな!
なんでか顔が熱くなるのを感じた俺は慌てて顔を逸らす。
「ハル君?」
「な、なんでもない!」
「み、みず……はやく……」
「あ! 悪い友澤!」
持ってた水を慌てて友澤に渡す。ひったくるように水をもった友澤はそれを勢いよく飲み干す。
「んぐ、んぐ……ぷはぁ! あぁ、死ぬかと思った。おい日向! 朝からいちゃついてんじゃねーよ! オレを殺す気か!」
「いや、悪かったって。っていうかいちゃついてねーよ」
「あはは……あ、そうだ。ここ座ってもいいかな」
「えっ!?」
「どうぞどうぞ。朝道さんなら大歓迎ですよ」
「俺も別に構わない。空いてるわけだしな」
「二人ともありがと。……で、なんでハル君は『えっ!?』なんて言うのかな」
笑顔の零音。だけど言い知れない圧力を放っているような気がする。というか、放っている。
「あぁ、いや、その……」
「……もしかして、嫌だった? 私と食べるの」
「そんなわけない! そんなわけないって! 全然ここに座ってくれていいから」
「そう? ならいいんだけど。あ、ハル君」
「ん? どうした」
「髪、寝癖ついてる」
零音が手を伸ばして俺の髪を手で直す。
俺はまた顔が熱くなるのを感じる。あぁ、ダメだ。今の俺は零音に対してどうしようもなく異性を感じてしまっている。零音の匂いも、何気ない仕草も、その全部が零音は『女性』なのだということを告げてくる。今まで全くそれを感じなかったわけじゃないけど、今の俺は今まで以上にそういう目で見てしまっている。
「はい、これで直った。……どうしたのハル君、顔が赤いけど……熱?」
「いやいやいや! 大丈夫、大丈夫だから!」
俺の熱を測ろうとした零音の手を押さえる。
落ち着け俺、いつもの俺に戻るんだ。
「ならいいけど。無茶しちゃダメだよ?」
「わかってるよ」
まだ若干動揺してる俺を、友澤がジッと見ていた。
「…………」
「なんだよ」
「朝道さん!」
俺の言葉には答えず、友澤は勢いよく立ち上がる。
「どうしたの?」
「俺も寝癖あったりしないですか?」
「あ、ホントだ。後でちゃんと直さないとダメだよ。せっかくいつもちゃんとセットしてるんだし」
「……はい。そうですね」
がっくりと肩を落として再び座る友澤。
まさかこいつ、俺みたいに寝癖直してもらおうとしてたのか。
「あ、いたいた。レイちゃん、お待たせー。あ、ハルっち達も一緒じゃん!」
「す、すいません。遅くなりました」
山盛りに積んだ皿をもった雪さんと井上さんがやってくる。
雪さんの皿に積まれてる量は山城よりも多くて、そして意外なことに井上さんも皿にいっぱい積んでいた。
「いやー、美味しそうなのがいっぱいあって悩んじゃった」
「雪さん、それ全部食べるの?」
「もちろん。むしろまだまだ取りに行くつもりだよ!」
「その体のどこに入るんだ、それ」
「きっとアタシの胃袋は宇宙に繋がってるね。まぁでも、アタシって食べた分の栄養は全部胸に行くみたいだし!」
そう言って胸を張る雪さん。激しく自己主張をするそれは大きく揺れて、周囲にいた男子の目をくぎ付けにする。俺も例外ではない。
なんという胸。昨日のバトミントンの時の井上さんにも衝撃を受けたけど、雪さんも負けず劣らずスゴいな。
「いてっ」
俺が雪さんの胸に釘付けになっていると、太ももに痛みが走った。
ちらりと目を向ければ、零音が俺の太ももを抓っていた。
「雪ちゃんの胸見過ぎ」
「わ、悪い」
確かに零音の言う通りだ。雪さんにも失礼だし、見ないようにしないと。あー、でももう少し見ていたいと俺の心が……いや、負けるな俺。心を強く持つんだ。
目の前で鼻の下を伸ばしている友澤のようになるわけにはいかないんだ!
「そ、そういえば、井上さんも結構食べるんだね」
「う、うん。食べるのは好きだから。さすがに朝だからそんなにいっぱいは食べれないけどね」
「そっか。俺もこれ食べ終わったらおかわりしにいこうかな」
「う、うん。いいんじゃないかな。少し試食したんだけど、あっちにすごく美味しいのがあったよ」
「へぇ、そっか。じゃあ食べてみるよ」
「それもいいけど、その前にハル君はちゃん野菜も食べなきゃダメだよ」
「うぐっ、わかってるよ」
「アハハ! ハルっち怒られてるー」
「雪ちゃんも、だからね」
「えっ!?」
「二人の分の野菜、あとで私が持ってくるからちゃんと食べること、いい?」
「「は~い……」」
零音の言葉に、俺と雪さんはがっくり肩を落としたのだった。
好きな物だけ食べれるバイキングだと、ついつい好きなものばかりとってしまうものです。
晴彦と雪と同じタイプですね。
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次回投稿は10月10日21時を予定しています。