閑話 中等部生徒会長、桜木花音
新キャラではありません。既存です。登場人物まとめには入れ忘れてますけどね。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「はぁ~」
おはようございます、こんにちは、こんばんは、桜木花音です。
誰? と思われる方もいるでしょう。そんな方はどうぞ第12話をご覧ください。私が出てきています。
そして、そんな私は今、生徒会室のお姉さまの机に突っ伏しています。なぜって? 決まってるじゃないですか! 我が愛しのお姉さま、昼ヶ谷雫先輩が校外学習に行っていていないからですよ!
一応、学校行事中なので電話をかけることもできません。なぜ、なぜ私は高等部ではないのでしょうか。そのことをこれほど憎いと思ったことはありません。
隠し撮りしたお姉さまの写真で足りなくなったお姉さま分を補充するしかないですね。
「花音、何してるの?」
「あ、弥美ちゃん」
声を掛けてきたのは病ヶ原弥美ちゃん。カラスの濡れ羽色と言えるような長い黒髪はつややかで綺麗だけど、弥美ちゃんはその髪で顔まで隠してるせいでクラスの子達からは不気味がられている。話すと面白い子なんだけどな。そして中等部の生徒会副会長。私の右腕です。あ、私生徒会長なんですよ。すごいでしょう。
「うぅ~、弥美ちゃ~ん。お姉さまに会いたいよ~」
「またそれ? っていうか今日の朝行ったばかりじゃない。明後日には戻ってくるんだし、それまで我慢もできないの?」
「私は毎日でもお姉さまに会いたいの!」
休みの日は我慢する。でも平日は毎日会いたい。私の学園に来るモチベーションの半分はお姉さまに会いたいという気持ちなのだ。
「あんたもホントに大概。病院に行ってきて。あ、でも無理か。花音を治せるような病院はきっとないかな」
「ひど~い! 私別にどこも悪くないよ!」
「悪いでしょ、頭が」
「生徒会長で、テストの順位も常に五位内の私が頭が悪いわけないじゃん!」
「可哀想に。気づいてないんだ」
「うぅ、弥美ちゃんがいじめる~」
右腕にバカにされる私。きっと今の私は世界で一番可哀想……とはさすがに思わないけどね。でも何をするにしても元気がでないなー。それもあって今日一日授業に身が入らなかったし。
ま、それでも当てられたら答えれる私はきっと天才だね。
「ほら、しっかりして。今は先輩達が帰ってくるまで、私達が生徒会の仕事こなさないといけないんだから」
「そうだけどー……はっ!」
閃いた!
もしお姉さまが帰ってきた時に完璧に仕事こなしていたら、お姉さまに褒められるかもしれない。そうだ、きっとそうだ!
「やるよ弥美ちゃん!」
「え? うん。どうしたのいきなり元気になって。頭バグった?」
弥美ちゃんの辛辣な言葉なんて気にしない。
そんなことよりも今は仕事をこなすのだ。
「バグってないよ。ただそう、私はこれでも中等部の生徒会長だから。仕事はちゃんとこなさないとね! それだけだよ!」
「……なんとなくわかった。まぁ、なんでもやる気になったならいいけど」
「それで、今は何があるの?」
「部活の陳情書かな。部活の備品が壊れてるとか、そういうのが多いよ」
ざっと目を通すと、大体があぁして欲しい、こうして欲しい。こんなものが欲しいといったいってしまえばただのわがままだ。もちろん、中にはちゃんと対応しないといけないものもあるけど……。
「この辺は全部却下」
「サッカー部からの? えぇと『劣化してるサッカーボールが多いから買い直したい』って要望だけど……これがどうかしたの?」
「まだ前に買い直してから半年も経ってない。本気で練習してるなら劣化してるかもしれないけど、あそこあんまり真面目に練習してないし。前に視察行った時酷い物だった。あれならサッカー部じゃなくて歓談部にでも名前を変えればいいってね。だから却下」
「こっちのソフトテニス部の『ボールが少なくて満足に練習できません。追加で買いたいです』ってのは?」
「男子ソフトテニス部、女子ソフトテニス部合わせて百人の部活だけど、支給してあるボールはそれぞれ二百球ずつ。一人当たり四球はある計算。これで足りないとは言わせない。あと、前からボールを勝手に持って帰ってる輩もいるみたいだし、論外」
「こっちの——」
それぞれ部活の陳情書の何がダメなのかということを話していく。この学園は無駄に広いし、中高一貫でそれなりに大きな学園だから資金も全くないわけじゃない。でもだからってなんでもかんでもお金を出せるわけじゃない、自業自得で追い込まれているような部活には特にだ。部費はちゃんと考えて与えているんだからその中でやりくりして欲しい。
結局そうしてまとめていくと、重要なものなんてほとんど残らない。だいたいの部活がまぁ言ってみるだけ言ってみようみたなスタンスだ。
「これで陳情書の分は終わりかな」
「うん。ホント、仕事は早いよね花音は。仕事は」
「なんでそこ強調するの」
「別に。他意はないけど。これでもっとまともな性格なら人気が出るのに」
「私まともじゃん。というか私って人気ないの?」
これでもちゃんと投票で選ばれた生徒会長なんだけど。
「人気はそれなりだけどね。花音の奇行を知ってる人も多いから。それが無かったら男子人気ももっと高かったかもしれないのに」
「男子人気なんか別にいらない」
私は男が嫌いだ。いやらしいことしか考えてない、下半身と脳が直結してるような生き物だ。教室でも卑猥な話ばかりしているし、荷物検査で風紀委員が没収したものの一覧を見ればいかに男子が猿かということがわかる。
「花音の男子嫌いも筋金入りよね、ホント」
「できるなら視界にも入れたくない」
「あ、でも最近会長にお気に入りの男子ができたって噂が」
「っ!?」
「もしかして花音知ってるの?」
「……知ってる」
前に一回会った。日向晴彦とかいう先輩だ。どんな手段で取り入ったのか知らないけど、お姉さまに気に入られるなんて……ゆ、許せない。思い出すだけでも腹が立つ。
「へぇ、どんな先輩なの?」
「……興味あるの?」
「そりゃあるよ。だってあの会長が気に入ったんでしょ? いままで男っ気なんて全くなかったのに」
「私は興味ない」
「あんたはそうでしょうね。で、名前は?」
「日向……日向晴彦。だったと思う」
「へぇ、日向先輩……ってあれ?」
「どうかしたの?」
「いや、どっかで聞いたことがあった気が……あ、そうだ」
何かを思い出したのか、弥美ちゃんが立ち上がってお姉さまの机の引き出しを開ける。
「あ、やっぱりそうだ」
「何が?」
「ほらこれ」
そう言って見せられたのは、校外学習の班分けだ。一年生と二年生でどこの班同士が一緒になるか書かれてるんだけど。弥美ちゃんの指さすところを見ると、お姉さまと一緒になる班の一年生メンバーの名前が書かれている。そしてその先頭にある名前は
「ひ、日向……晴彦」
「そうそう。先輩達が班分け決めてる時に会長が話してるの聞いてさ、確かその時に言ってたんだ『私と日向君は一緒にしましょう』って言ってるの。だから聞き覚えあったんだ」
スッキリしたーといった様子の弥美ちゃんだけど、私はそれどころじゃない。
ま、まさかお姉さまとあの先輩が同じ班だなんて。
頭の中に出てきた日向先輩が、私のことを馬鹿にしたように見る。『あ、ごめーん。俺この校外学習の間にさらに先輩と仲良くなるわー。お前はお留守番ご苦労様』と言わんばかりの顔だ。
「ふんっ!!」
「おわっ! ど、どうしたの花音」
「ゆ、許さない。絶対の絶対に許さないんだから。覚えておきなさい日向晴彦――――――!!!!」
遠い地にいる憎き男に向けて、私は叫んだのだった。
二度目の登場、桜木花音。彼女は優秀だけど残念な娘なのです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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次回投稿は10月8日18時を予定しています。