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第44話 校外学習編10 バトミントン大会 後編

最初に謝ります。後編としておきながらバトミントン大会終わりませんでした。ごめんなさい。次で確実に終わらせます。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 ホテルの中にある更衣室の一つ、そこに零音と雫はいた。


「えぇ、私がするんですか!?」

「そうだよ。君は勝ちたくないの?」

「別にここまでして勝てなくても」

「へぇ……ちなみに、優勝した時のご褒美なんだけどね——なんだ」

「それほんとですか」

「嘘は言わないよ。もしこのまま夕森さんに負けてそのまま優勝なんてことになったら……わかるよね」


 少し考え込むような様子を見せた後、零音は意を決したように顔を上げる。


「わかりました。でも、これで勝てるとは思えないんですけど」

「それは大丈夫だよ。ボクが保証しよう」






□■□■□■□■□■□■□■□■


「うーん。二人とも遅くない?」

「そうね。何してるんだろう」


 休憩しておけといわれて待つこと十五分。雪と田所は零音達を待っていた。


「ハルっち達なんか聞いてない?」

「いや、俺達も何も知らないな」

「そっかー。何してるんだろ」


(さっきのあの感じ。なんか作戦があるって感じだったしなぁ。まぁどんな手段できたって負けるつもりはねぇけどな)


 雪がそんなことを考えていると、にわかに入り口の方が騒がしくなる。


「ん? どうしたんだろ」


 ざわつく入り口の方に全員が目を向け、そして全員が目を点にする。


「……え、なにあれ」


 呆然と雪が呟く。

 雫に連れられていた零音の姿は——メイド服だった。


「待たせたわね。それじゃあ試合を始めましょうか」

「いや、いやいやいや! 何それ、なんでレイちゃんメイド服なの!?」

「うおぉおおおおお!! 朝道さんのメイド服とか最高すぎんだろ! カメラ、カメラはないのか! ないなら俺が持ってき——うぐっ」

「友澤、うるさいぞ」


 騒ぎ出し、カメラを持ってこようとした友澤を山城が叩いて黙らせる。


「えーと、零音なんでそんな恰好してんだ?」

「うぅ、ハル君恥ずかしいからあんまり見ないで」

「あ、ごめん」


 零音の着ているメイド服は、お手伝いとしてのメイド服というよりも、メイド喫茶なので用いられるような丈の短い魅せるためのメイド服だった。

 そして普段の零音がはくスカート以上に丈の短いスカートに、零音の羞恥心は振り切れそうになっていた。だがしかし、もじもじと恥ずかしがってスカートを伸ばそうとする様子が絶対領域をさらに強調し、周りの視線をさらに集めるということになっているのに零音は気付いていない。

 晴彦もまた見たことのない零音の姿に若干動揺していた。

 それに気づかない零音ではない。


「ね、ねぇハル君」

「なんだよ」

「似合ってる……かな?」

「え、あー……うん。似合ってると思うぞ」

「えへへ、そっか」


 はにかむ零音。顔を赤くする晴彦。そして憤怒に満ちた友澤。


「ひぃなぁたぁああ! お前いつもいつも……羨ましすぎんぞ!」

「ちょっ、痛いって。引っ張るなよ」

「痛い。痛いか? でも目の前でイチャイチャ見せられてるオレはもっと痛いんだよーーー!!」

「あ、あの友澤君。ハル君が痛がってるから放してあげてほしいな」

「はい! わかりました!」


 零音に言われてあっさり放す友澤。そんな様子を見ていた他の人は思わず苦笑する。


「まぁ、なんていうか予想外だったけどさ。あれがアタシ達に勝つための秘策なの?」

「そうよ。最早私達の勝ちは確定したようなものだわ」

「? 全然意味がわかんない。なんでメイド服が勝ちにつながるの?」

「ふふ、試合が始まればわかるわ」


 そして、零音達はコートに入る。

 メイド服姿の人がコートに立っている異様な光景に周りにいた人全員が目を向ける。


「よくわかんないけど、田所先輩、頑張りましょうね!」

「え、えぇ」

「どうかしたんですか?」

「大丈夫、大丈夫だから」


 試合は雪からのサーブで始まった。ギリギリのラインを狙って打たれた羽根を零音が打ち返す。そしてその時にひらりとスカートが翻る。


「先輩、行きましたよ」

「え、あっ」


 けして難しくはないコースだったが、田所は返すのに失敗してしまう。

 その様子を見て雫はニヤリと笑い。雪もまた気付く。


(まさか……)

(そう、気づいたみたいだね。優菜は——女好き! しかもメイドが大好物。自分のタイプの女の子が好みの恰好をしていて、平静を保つことなんてできるわけがない)


 田所優菜は女好きである。それは生徒会のメンバーのみが知る事実。さっき返球ができなかったのも、翻ったスカートから覗く足に目が奪われていたからである。

 つまり、この試合において田所は完全に無力化されたも同義なのだ。


(ちっ、先輩はもう使えねぇ。だったらオレが一人でやるしかねぇ)


 そう決めて試合を進める雪。しかし、いくら運動神経があろうとも一人でコートの全てをカバーするのは至難の技。それを知っている雫は常にコートのギリギリを狙って返す。


「ふふっ、打てる手は全て打っておく。それが私のやり方よ」


 そう言って笑う雫。その場にいた人に共通した思いは、生徒会長性格悪っ、ということである。


「あ、あの先輩。田所先輩のこっち見る目が怖いんですけど。大丈夫ですよね」


 血走ったような目で零音を凝視する田所。はぁはぁしていたり、よだれをたらしていたりしていて零音は若干の身の危険を感じていた。


「……まぁ、頑張りなさい」

「えぇ!!」


 一度流れが作られてしまえば後の展開は一方的だった。

 決して油断することなく試合を進めていく雫が完全に場を支配し、そのまま試合を決めたのだった。


「ゲームセット。私達の勝ちね」

「うぅ、悔しい……でもまぁしょうがないね。今回は、負けを認めるよ。でも次はないからね」

「そう、期待しておくわ」


 試合後、不敵に笑いあいながら話している雫と雪。その一方で、


「ね、ねぇ朝道さん。ちょっと私とあっちにいかない? 大丈夫。何もしないから」

「いえ、あの、ちょっと。昼ヶ谷先輩、雪ちゃん、助けてっ」

「「…………」」

「無言っ!?」


 そのまま持っていかれそうになる零音。


「ていっ」

「あうっ」

「優菜ちゃん、そろそろ元に戻ってねぇ」

「……はっ、私は何を。あれ、朝道さん。どうしたの?」


 双葉に叩かれてようやく正気に戻った田所。


「すごい効果的だったわね。あなたのその恰好」

「そうですね。まさかこんなに効くとは思ってなかったですけど」

「次の試合もそのまま——」

「着替えてきます」





□■□■□■□■□■□■□■□■


 零音が着替えから戻って来て、決勝戦が始まった。


「まさか会長と試合することになるなんて思わなかったなぁ」

「そうね。まさか私もあなたが勝つとは思わなかったわ」

「お互い頑張ろうな零音」

「うん、負けないよハル君——はっ」


 零音、ここにきて自分が朝から押してダメなら引いてみろ作戦を行っていたことを思い出す。しかし、ここでどんな反応するのが引いていることになるのかがわかっていなかった。


「どうかしたのか?」

「か——」

「か?」

「勘違いしないでねっ! 私はハル君のことなんてどうでもいいんだからっ」

「え、あぁそうなのか」

「え、いや、あの、どうでもいいわけじゃなくて、その」

「……あなた何をやってるの?」

「フフフフフ」


 怪訝そうに零音を見る雫。双葉は事情を知っているからこそ面白そうに成り行きを見ていた。


「なんでもいいけど、この試合に勝った方がご褒美をもらえるわ。頑張りましょうね」

 

 そして、決勝戦が始まった。


バトミントン大会が思った以上に長引いているという。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントをしていただけると私の励みになります。

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は9月29日18時を予定しています。


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