第43話 校外学習編9 バトミントン大会 中編
ちなみに私はそんなにバトミントンに詳しくありません。好きですけどね。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
雫・零音vs一ノ瀬・めぐみの第二試合。
「サーブはそっちからでいいわ」
「ではそうさせてもらいますね」
「大丈夫? なんか緊張してるみたいだけど」
「う、うん。こ、こんな風に試合するの初めてだから……て、手が震えちゃって」
「ふふ、そんなに気負わなくて大丈夫だよ。気楽に楽しもう?」
零音は笑いながらそうめぐみに言うが、負けるつもりは毛頭無い。むしろ、勝つ気満々である。こう言うことで油断させるのが狙いだ。
「それじゃあ始めるわよ」
お互いが所定の位置に着き、一ノ瀬がサーブを打つ。
利き手とは逆の手で打っているというのに正確に放たれたサーブを雫は冷静に返す。
狙うのはめぐみだ。
「あわわわわわ! えいっ」
スカッ。バルン!
いきなり飛んできた羽に動揺しためぐみは慌ててラケットを振るが、思いっきり空振りしてしまう。
「あぅ、す、すいません一ノ瀬先輩」
「いいよ気にしなくて。次頑張ろう」
一ノ瀬がそう言ってめぐみを慰める一方、雫と零音の二人は別の衝撃に襲われていた。
((胸が……揺れたっ!?))
めぐみは隠れ巨乳である。普段の体育ではそこまで激しく動くことはなく、まためぐみ自身も隠しているところがあったため、それは零音すら気付いていないことであった。その大きさは雪にも匹敵するほどである。
大きく揺れた胸に男子は思わず目を引き寄せられる。友澤などは目を輝かせて喜び、晴彦に頭を叩かれていた。しかしその晴彦もまた揺れた一瞬目を引き寄せられたのは隠しようもない事実である。
「え、えっ? ど、どうしたんですか? 私、何かしましたかっ!」
周囲の目が自分に向いていることに気付いためぐみ。しかしそれが自分の胸に向いていることには気づいていない。
試合は雫たちがリードしたものの、場の空気はめぐみがすべて持って行った。めぐみ、恐ろしい子である。
「な、なんでもないわ。続けましょう」
「そうですね」
若干の動揺を残しつつ、再びバトミントンを始める雫たち。
しかしその後も、
「えいっ!」
「やぁ!」
「あうぅう」
めぐみがラケットを振るたびに胸が揺れる。
得点は九対五と、零音達がリードしているものの、気づけば体育館にいる人がめぐみに注目していた。零音も雫も元男であるということもあって胸の大きさを気にしたことはない、わけではない。ないよりはあるほうがいい。そう思っているのは事実である。女性として過ごしている中で多少は気にするようになってしまったのだ。
「す、すいません! すいません!」
「気にしなくていいよ。楽しんでいこう」
そんな二人の、いや、めぐみに晴彦は見ていた。なんといっても晴彦も健全な男の子。揺れる胸に目をやるなという方が無理だろう。そして、そんな晴彦の様子を零音は見て少しイライラしていた。
(……なんで私イライラしてるんだろ。また晴彦が胸にデレデレしてるからかな)
なぜイライラしているのか、その本質から目を逸らしたまま。零音は自分の中のイライラを無理やり抑える。
「どうかしたの?」
「いえ、なんでもないです」
試合は結局そのまま雫と零音が勝った。しかし、なぜか勝った零音達の方が精神的に疲れていたという……。
田所・雪vs三林・山城の第三試合。
この試合は運動が得意な雪がいることと、体格の良く、空手もやっているということもあってその運動神経には期待されていた。
「よっし。よーーし! 本気でいくよ! 頑張りましょうね先輩!」
「えぇ、あんまりスポーツは得意じゃないけどね」
やる気満々の雪と、落ち着いた様子の田所。田所もまた運動神経が悪いわけじゃないが、雪と比べるとどうしても見劣りしてしまうレベルだ。そのことを自覚している田所は今回は補助に徹するつもりだった。
「こっちもやるっスよ~! 山城君、頑張るっス!」
「はい、全力を尽くします」
一方の三林・山城のペアは目立つ気満々の三林と先輩のサポートをするというのが目的の山城。今回作られたペアの中で、一番バランスの取れているペアであるかもしれない。
「サーブは田所ちゃんにあげるよ」
「ありがと。そうさせてもらうね」
「両方とも準備はできたかしら。なら始めるわよ」
雫の言葉で試合が始まる。
「ふっ」
田所の打ったサーブを山城は冷静に返す。
山城の打った羽は雪の元へといき、雪はその羽根を山城の後ろへ超えるように高く打ち返す。
「甘いっ」
しかし、山城は身長も高ければウイングスパンもまた長かった。本来であれば超えたであろうその高さにも山城は反応することができた。
届いてしまえばそれは山城にとってスマッシュを打つ絶好の機会になる。
「せいっ!」
高所から打ち下ろされたその羽根はすさまじい速さで雪のコートを襲う。
二人の隙間を狙って放たれたそのスマッシュを雪もまた反射でもって返す。
そこから始まる怒涛のラリー。お互いに一歩も譲らずに打ち合う。
(高く打っても山城なら届く。なら狙うのは……今だっ)
ラリーが続く中で、山城がコートの後ろに下がっていく。そこを雪は見逃さなかった。
雪は強く打つと見せかけて、コートの全面、ネットのギリギリに羽根を落とす。
気付いた山城は反応するが、わずかに届かない。
「一ポイント先取だね」
「流石だな」
そうして盛り上がるコート内の選手達。
しかし、コートの外では、
「えーと……」
「私達、あのどっちかと次試合しなきゃいけないのね」
「会長も零音ちゃんも大変だねぇ~」
「なんていうか、段違いだな」
「あわわわわわわわ」
一つだけ違う次元の試合に若干引いていた。
今も目の前で行われる激しい打ち合いに、運動が得意でないめぐみなどは最早目が追いついていなかった。
「おかしいわね。ほんとはもっと緩く楽しむものだったはずなのだけど」
「エンジョイ勢にガチ勢が混ざるとこんな感じになるんだねぇ~」
そうこうしているうちに試合は進んで行く。徐々に雪のペアが押していく。ここにきて、利き手と反対の手でやっているのが響いてきたのだ。
そして——
「これで、決まり!」
「くっ」
マッチポイントを取った雪がジャンピングスマッシュを決める。
反応した山城だったが、わずかに届かない。
「よし、アタシ達の勝ちだね!」
「ふぅ、流石だな。本気で勝ちにいったんだが」
「あぁ悔しいっス。あそこでミスさえしなかったらなー」
「利き手じゃないんだししょうがないわよ。よくやったんじゃない?」
互いの健闘を褒めあう様子を見ながら雫は考える。
(次の試合、今のままだと勝ち目がない。疲弊していても実力差は歴然だし……だったら狙うのは)
雫はちらりと田所に視線を向ける。
「そうしましょう」
「先輩? どうかしたんですか?」
零音の質問に答えることなく、雫は零音の腕を掴んで歩き出す。
「え、あの、ちょっと」
「いいから来なさい。次の試合は少し時間を置くことにするわ。疲れているでしょうしね。休んでおきなさい。私達は少し用があるから外すわね」
それだけ言い残して体育館から出ていく雫と零音。
わけのわからないまま零音はついて行くしかなかった。
めぐみさん隠れ巨乳でした。ただそれを書きたかっただけの話です。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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次回投稿は9月27日21時を予定しています。