第41話 校外学習編7 一緒にいる理由
予約投稿するのを忘れてて焦ったのです。ギリギリで思い出してよかった。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
作品に関する疑問や質問なども受け付けておりますので、気になったことがあったらお聞きください。
「好きな人……ですか? なんでいきなりそんなことを」
「んー、まぁ単純に気になったからかなぁ? ほら、恋バナって定番でしょ?」
「いや、男と話す定番ではないと思うんですけど……」
「細かいことは気にしなくていいよぉ」
まぁ別に嫌なわけじゃないけど……俺別に恋バナなんて持ってないし。そもそもできる気がしない。
「それでもう一回聞くけどぉ、ハルハルは好きな人いるのぉ?」
「俺は……いないですかね」
「えー、ほんとにぃ?」
「ホントですよ」
疑う様な目を向けてくる双葉先輩。
別に嘘を言ってるわけじゃないからそんな目をされても困る。
「でもさぁ、ハルハルの周りにはいっぱい女の子いるでしょ? 零音ちゃんとか雪ちゃんとか会長とか、めぐみちゃんとか、ボクとかボクとかボクとかさぁ」
「先輩も入ってるんですね」
「ボクもハルハルのこと気に入ってるからねぇ。気になる子とかいないのぉ?」
「そう言われても……俺よくわかんないんですよ。気になるとか、好きとか……」
「ふーん……まぁ、じゃあさぁ零音ちゃんのことはどう思ってるの?」
「零音ですか? 幼馴染ですけど」
「それだけ?」
「それだけっていうか。そりゃいつも掃除してくれたり、ご飯作ってくれたり……感謝してますよ。零音いないと俺の生活成り立たないですし」
俺のおふくろの味といえばもはや母さんの作った味噌汁よりも零音の作った味噌汁ってくらいには面倒をみてもらってる自覚はある。それもこれも面倒見のいい零音だからしてくれてることで、感謝してもしきれないくらいだ。
「それだけぇ?」
「それだけって……そうですね。零音は大事な幼馴染です。零音も俺の事そう言ってますし」
「はぁ、ハルハル~。その冗談は面白くないよ~」
「冗談って、俺は冗談なんか言ってませんよ」
「幼馴染だから、なんて理由で面倒見てくれる人がいるわけないでしょ~」
「でも、現に零音は俺の生活助けてくれてるわけですし」
「それは幼馴染だからしてくれてることなのぉ?」
「どういうことですか?」
「ボクにもさぁ、同性の幼なじみがいたよぉ」
「先輩にも?」
「でも、中学生になったら一緒に遊ばなくなった。連絡先の交換もしてないよぉ。小学生の頃は仲が良かったのに」
先輩は昔を思い出すかのように空を眺める。
確かに、そういう幼なじみだからってずっと一緒とは限らない。それは俺にだってわかってる。
「だからボクはね、幼なじみだから一緒にいるわけじゃないと思うんだぁ。他の理由がないと、一緒に居続けることはできない。幼なじみっていうのはきっかけの一つなんだと思うよぉ」
「他の理由?」
「理由がハルハルにないなら、きっと零音ちゃんにはあったんだろうねぇ。君と一緒にいたい理由が」
「俺と一緒にいる……理由」
わからない。そんなの今まで考えたこともなかった。幼なじみだからが理由にならないなら、いったい何が理由になるというのか。
「ハルハルは、幼なじみだからって理由だけで零音ちゃんと一緒にいたのぉ?」
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「少し休憩しましょうか」
「そうですね」
私は昼ヶ谷先輩とバトミントンをしていた。
しかし、私はもともとそんなに体力がある方ではないので、少し休憩をさせてもらうことにしたのだ。
「ちゃんと水分補給しておきなさい」
「ありがとうございます」
昼ヶ谷先輩が差し出してくれた飲み物を受け取る。
周りを見ていると、夕森と田所先輩がバトミントンをしていたり、友澤と山城のところは四人になってサッカーをしていた。
井上さんのところはフリスビーをしていたけど、緊張しているのか全然まともに投げれてない。
そして晴彦は……何を話しているかはわからないけど風城先輩と二人で何事かを話していた。
でも、なにもあんなに近づかなくてもいいのに。
「二人がなにを話しているのか気になるのかしら」
「え?」
「あなた、さっきバトミントンをしているときもそうだったけど晴彦の方をチラチラと見ていたでしょう」
「ほんとですか?」
「無自覚だったのね」
全然気づいてなかった……そんなに晴彦の方を見てたんだろうか。
「さっきから晴彦と少し距離を置いてたのも、何か理由があるの?」
「それは……」
晴彦の気を引くためですなんて言えるわけがない。というか、この人も言ってしまえば敵なわけだし、あまり情報を与えるのはよくない気がする。
「まぁ言いたくないならいいわ」
あれ、思ったよりあっさり引くな。まぁありがたいけどさ。
「そういえば、あなたとはあんまり普通の話をしたことはなかったわね」
「普通の話……ですか?」
「晴彦に関することで話したことはあったけど、あなた自身のことを聞かせてもらったことはないわ」
そういえば確かにそうだ。今までなんどか夕森もあわせて三人で集まることはあったけど、自分のことなんてほとんど話したことはない。
「たまにはそんな話をしてもいいんじゃないかしら」
「なんでいきなり?」
「機会がなかっただけで前から気になってたことではあるのよ。あなた、元の世界では何をしてたの?」
「何って普通の高校生ですよ」
「私は大学生だったわ」
「…………」
「…………」
会話が終わった!
いや、だっていきなり元の世界にいた時の話とかいわれても思いつかないし。
「……こういう時って他になにを話すのかしら?」
「趣味……とかですかね」
「ゲームね。元の世界にいた時はよくゲームしてたわ」
「そうなんですね」
「あなたは?」
「似たようなものですよ。ゲームしてました」
「…………」
「…………」
か、会話が続かない。
ここから何を話せばいいんだろう。
この世界に来てからの事なら色々話せるだろうけど、元の世界ではそんなに目立つような人生を送ってたわけじゃないし。
「……ねぇ」
「は、はい」
「あなた、元の世界は好き?」
「それは……もちろん好きですけど」
「私は嫌いだったわ」
「え?」
「毎日毎日同じことの繰り返しで、それが苦痛でしかたなかった」
「……」
「ゲームだけが救いだったわ」
「先輩はそれでも元の世界に戻りたいんですか?」
「……さぁ、どうかしら」
クスクスと笑う先輩からはその真意は読み取れない。
なんでいきなりそんな話をしてきたのか、その理由がわからない。
「……そろそろ時間ね。全員集めましょうか」
立ち上がって去っていく先輩を、私はただ見ていることしかできなかった。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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次回投稿は9月24日21時を予定しています。