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第39話 校外学習編5 押してダメなら引いてみろ

他の作品を見て勉強することは多い。自分の作品に生かしたいですね。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

作品に関する疑問や質問なども受け付けておりますので、気になったことがあったらお聞きください。

 授業を受けながら、私は考えていた。

 最近になって夕森は晴彦への攻めの姿勢をハッキリと示すようになった。

 それは昼ヶ谷先輩も同じだ。

 気付けば名前で呼ぶようになっていた。この調子で距離を詰めていかれるのは良くない。非常に良くない。


「……でも、私と晴彦はもう近すぎる」


 夕森や昼ヶ谷先輩は晴彦と高校に入ってから出会ったわけだから、色々な距離の詰め方ができる。でも、私は違う。小さい頃から一緒で、お互いのことを知り過ぎている。

 晴彦のことはもう名前で呼んでるわけだし、向こうも同じ。考え方を変えれば夕森達も同じ条件になったと思えばいいだけだど……そう悠長にもしてられない。でもだからって今さら接し方を変えるわけにもいかないし。

 いや、待てよ……もしかしたらできることがあるかもしれない。

 バスの中で風城先輩に言われたことを思い出す。




『零音ちゃんもさぁ、あんまりずっと一緒にいると飽きられちゃうよぉ』

『飽きるってなんですか』

『お菓子と一緒だよぉ。いつも一緒じゃ飽きちゃう。それに男子なんて適当なもんだよぉ? ずっと近くにいる人は何もしなくてもずっと一緒にいると勝手に思ってるんだからぁ』

『ハル君はそんな人じゃ……』

『まぁ、そうかもしれないけどねぇ。でも、ハルハルも零音ちゃんがいるのは当たり前だと無意識に思ってるんじゃないかなぁ。たまには距離おいてみたらぁ? 押してダメなら引いてみろってねぇ』




「押してダメなら……引いてみろ」


 今まで確かに、晴彦から離れたことなんてなかったかもしれない。怒ってても、喧嘩した時も一緒だった。


「——ち」


 二人みたいに押すんじゃなくて、こっちは引く。そしたら晴彦もこっちを意識するかもしれない。


「おい、朝道っ!」

「はっ、はい!」


 まずい。先生から呼ばれてたの気付いてなかった。


「さっきから何度も呼んでるんだから返事しろ。それじゃあ、続きから読め」


 つ、続き? というか、全然聞いてなかったから何ページかもわからない。

 どうしよう。こんなところで怒られるなんて私らしくないから、聞いてませんでしたとも言いづらいし。


「おい零音、ここだよ」


 隣に座っていた晴彦が教科書を見せてくれる。

 なるほど、そこか。わかってしまえばなんの問題もない。

 晴彦に教えてもらったページを素早く開き、音読する。


「よし、そこまででいいぞ。次からはすぐに返事するようにな」

「はい」

「じゃあ、ここの部分の解説だが——」


 よし、なんとか無事に終わった。


「ありがとハルく——」


 って違う。そうじゃない。押してダメなら引いてみろ……ってどうしたらいいんだろ。やったことないからわかんない。ゲームでもそんな様子を見せたことなんてなかったし。

 とりあえず適当にやってみようかな。


「別に教えてもらわなくても大丈夫だったよ」

「そうなのか? じゃあ余計なお世話だったか。悪いな」

「ふーんだ」


 ってそうじゃなーい!! これじゃただの嫌な奴だ。それにこんなの『朝道零音』らしくない。

 ごめん晴彦。ホントは感謝してるから。助かったから。余計なお世話じゃないから。

 でもいまさら言ったことを撤回できないし……押してダメなら引くってなんなんだろう。

 まぁ、一回失敗しただけだし。次だ、次からちゃんとしよう。






そしてその次の授業。


「はーい。それじゃあ二人組作ってー」


 ん、二人組か。いつもならここは晴彦と組むことが多いんだけど……。


「二人組か。なぁ零音。一緒に」

「ごめんねハル君。私井上さんと一緒にやるね」

「え、え? 私? いいの?」


 いつもなら晴彦と組むと知っているからか、井上さんが驚いている。

 でもまぁ、引くっていうのはこれでいいはず。


「うん。もちろん」

「あー、そっか。じゃあいいよ」

「ねぇねぇハルっち! じゃあアタシと一緒にやろうよ」

「あぁ、わかった」


 やっぱり夕森がきたか。ここで友澤あたりと晴彦が一緒にやってくれたらよかったんだけど……私が引いた隙を逃すはずもないか。

 む。夕森がまた晴彦に胸を押し付けてる。そして晴彦も顔を赤くするな。ただの脂肪の塊なのに。

 ふと、自分の胸に手を当てる。別にないわけじゃない。むしろそこそこだと思う。巨乳じゃないけど美乳ではあるはず。

 いや、だからって押し付けるような真似はできないけどさ。


「朝道さんどうかしたの? や、やっぱり日向君と一緒のほうが良かった?」

「あ、ごめんね。ちょっと考え事しちゃってた」


 まずいまずい、こっちが引いてるのにずっと晴彦見てたら意味がない。それに井上さんにも悪いし。今はこっちに集中しよう。




三時間目。

さっきからちらちらと晴彦がこっちを見てる。

これは効果ありとみていいんだろうか。

休み時間も極力避けるようにしたし。まぁ、引くっていうのがこれであってるのかどうかはわからないけどさ。

 っていうか私が隣にいないからってここぞとばかりに夕森が攻めてるのをなんとかしたい。


「あ、あの。朝道さん」

「何かな?」


 晴彦達の方を見ていると、井上さんが恐る恐るといった感じで声を掛けてくる。


「あ、あのね。気のせいだったらいいんだけど、その、朝道さんが日向君のこと避けてるなって思ったから。何かあったのかなって」


 あ、バレてる。でも説明できるような理由なんて特にないしなー。晴彦にこっちを意識して欲しいから避けてますなんて言えるわけないし。


「あー、別に避けてるわけじゃないよ? ただ、せっかくいつもと違う環境だからたまには他の人とも話してみようかなって思ったの」

「そうなんだ。良かったー」

「良かったって?」

「ううん。いつも二人一緒だから、なんていうか、喧嘩してたらどうしようって思ってたの」

「ごめんね。心配させちゃって」

 

井上さんの真っすぐな目が痛い。でもだからってここでやめると中途半端だし。できれば今日一日はこのままの調子を保ちたい。

 次の授業が終わったら先輩達と合流するわけだし、晴彦に近づかないように私を意識させる方法を考えておくとしよう。


雪が押すなら零音は引く。それが吉とでるか凶とでるか。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

もし気に入っていただけたならブックマークよろしくお願いします! 私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は9月22日21時を予定しています。

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