第34話 あの姉にして妹あり
本棚が欲しい。本が溢れかえって置く場所がなくなってきてしまったのです。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
作品に関する疑問や質問なども受け付けておりますので、気になったことがあったらお聞きください。
班が決まった次の日、体育館に集められた俺達は班ごとに並べられていた。
「しっかし、この体育館も広いよな。こんだけ人がいてもまだ余裕があるんだから」
「確かにな」
友澤の言う通り、一年生と二年生の全員が揃っても体育館の中はまだまだ余裕があった。
ここに三年生が加わってもまだ余裕があるかもしれない。
まぁ、これだけ広いから体育の時のびのびと使えて嬉しいんだけどさ。
「ここから二年生の人たちと班を組むわけだけど、どんな人たちと一緒になるか……緊張するな」
「オレは生徒会長と一緒がいい!! 絶対に会長と一緒がいい!! 優しく叱ってもらったり、褒めてもらったりしたい!」
うへへへ、とトリップした顔でいう友澤。正直気持ち悪い。周りの人も引いている。俺も引いている。
友澤……お前ホントに自分の欲求に正直だな。でもまぁ、確かに先輩が一緒だったら俺も楽かもしれない。零音も雪さんも昼ヶ谷先輩のことは知ってるわけだし。
周りを見渡しても、みんな誰と一緒になるかわからないからか、誰と一緒がいいとか、そんな話をしている人ばっかりだ。
「どどど、どうしよう、先輩に失礼なことしちゃったら……あわわわわわわわ」
「め、めぐちゃんちょっと緊張しすぎじゃない?」
「そうだよ、私達も一緒だから落ち着いて。ね?」
井上さんはすでに緊張で顔面が蒼白になっている。
零音と雪さんは……そんなに緊張してないみたいだな。
「山城もそんなに緊張してないんだな」
「うむ。誰であれ敬意を持ち接するだけだからな」
「なんていうか……山城も独特なやつだよな」
「? そうか?」
ポカンとした表情をしてるけど、山城はなんていうかそう、武人って感じの雰囲気だ。まぁ、家が道場やってるらしいし、その影響もあるのかもしれないけど。
それから少し雑談していると、体育館の入り口から先生達と一緒に昼ヶ谷先輩がが入ってくる。
瞬間、体育館のざわめきが一気に大きくなる。
「キャアア!! こっち向いてくださいかいちょーー!!」
「会長! 手を、手を振ってください!」
「こっち見てーーー!!」
「踏んでください!!」
「あぁ、会長。今日もお綺麗ですぅ!」
あまりの騒ぎに、先生が静止しても全く効果がない。
「すごい人気だな」
「何言ってんだよ。当たり前だろ。二年生の美少女ランキングで一位、総合ランキングでも一位。そして学園理事の孫娘。容姿端麗、才色兼備。天が全て与えたんじゃないかってくらい完成された人なんだぞ」
「うーーん、いやまぁ、そうなんだけどさ」
この間のゲームの一件とか、普段お昼ご飯食べてる時の事とか考えると、そんなに大それた人じゃないと思うんだけど。
「はぁ、日向。お前は朝道さんと一緒に居すぎて感覚が麻痺してるんだな」
「いやそんなことねぇよ」
「いいや、あるね。なんて贅沢な奴なんだお前は」
なんでそれで怒られなきゃいけないんだ……って言いたいけど、言ったらさらに帰ってきそうだから黙っとくか。
そうこうしてる間に、先輩が壇上にたどり着く。
「…………フフッ」
あれ、いま先輩こっち見て笑ったような……。
「おい、おい日向! 今会長こっち見てたよな、っていうかオレ見てたよな! オレ見て笑ったよな!」
「ちょっ、痛いって。そんな叩くなよ」
バシバシと叩いてくる友澤。全然力加減してない。
「みんな、静かにしてちょうだい」
一言。マイクの前に立った先輩が一言放っただけで、あれだけうるさかった体育館が静まり返った。
「今日はよく集まってくれたわね。これから、私が校外学習についての説明をしていくわ」
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生徒会長の要約するならば。
今回の名目は高校になって初めてのテストを受ける前に、先輩からの対策を聞きつつ、環境を変えての勉強というのが今回の表の目的らしい。
しかし、その実態はただの歓迎旅行と親睦会のようなものらしい。この校外学習の間に、仲の良い先輩を作れと、そういうことのようだ。
そして場所は雨咲学園の所有するホテルで行われるとのこと。普段は一般客の利用もあるらしいけど、この期間は学園生徒の貸し切りになるみたいだ。
「まぁ、内容に関してはこういう感じかしらね。あまり深く考えることはないけれど、羽目の外し過ぎには注意するのよ」
説明が終わると、周りの生徒達も楽しみだとか、緊張するだとか口々に校外学習に対して思いを馳せていた。
「それじゃあ、最後に今回の校外学習で一緒に行動する二年生と一年生の班の組み合わせを発表しようかしら」
先輩が言うと、先生が紙を配りだす。
「みんな紙は持ったかしら? その紙に書いてある場所に移動してちょうだい。そこにいるのが今回同じ班になる人だから」
全員に紙が渡ったのを確認すると、ぞろぞろと動き出す。
「よし、そんじゃ俺達も行くか」
「あー、どんな先輩なんだろうなー。緊張するわ」
「やっぱり零音は緊張してないんだな」
「そんなことないけど……そんなことあるのかな?」
「どっちだよ。まぁ、零音が緊張してる姿なんてそうそう見ないけどさ」
「私だって緊張ぐらいするよ?」
「えぇー。ホントか?」
話ながら向かっていると、俺達の集まる位置に、五人の先輩がいた。
「やっは~。君たちがボクらと一緒の班の一年生かなぁ~?」
「双葉。ちゃんと挨拶しなさい」
「はぁ~い」
「わたしは田所優菜よ。よろしくね」
「ボクは風城双葉だよぉ」
なんというか、緩いというのが第一印象の先輩と、ぴっちり、というのが第一印象の先輩だ。っていうかあれ?
「あの、風城ってもしかして……」
「うん、そうだよ~。保険医の彩音ちゃんはボクのお姉ちゃん。だからたまに休ませてもらうんだぁ」
やっぱりそうだったのか。言われてみればどことなく似ている気もする。でも、あの先生みたいな危ない人じゃなさそ——
「ちなみにぃ、ここにいる男子三人はボクの下僕なんだぁ。だから犬一号、二号、三号で覚えてたらいいよぉ」
前言撤回。あの姉にしてこの妹ありだ。
犬と呼ばれた男子達は一様に嬉しそうな顔をしている。
「双葉、クラスメイトを下僕呼びはやめなさいっていつも言ってるでしょ!」
「でもぉ」
「でもじゃない! あなた達もそういう態度だから双葉がこんなこと言うんでしょう! ちゃんとして!」
「「「ごめんなさい!!」」」
と言いつつも、男子の先輩達の顔はどこか嬉しそうだった。
この先輩達はもうダメかもしれない。
「なぁ、こんな奴らゲームにいたっけ?」
「ううん。いない」
「オレ久しぶりにガチで引いてるんだけど」
「私も」
零音と雪さんが少し離れた場所で何か話しているけど、周囲の喧騒もあってここまでは聞こえてこない。ただ、若干引いてるのはわかる。
「まったくあなた達はもぉ……はぁ」
「どうしたの? 疲れてる?」
「誰のせいよ!」
あぁ、田所先輩は苦労してるんだろうな。
出会ってわずか数分でもわかる。
「揃ってるみたいね」
声のした方を見ると、ちょうど昼ヶ谷先輩がやって来たところだった。
「先輩!」
「少し待たせたみたいね。ごめんなさい」
「待たせたみたいって……もしかして」
「えぇ、日向君の班と一緒に行動するのは私達よ」
なんていうか、びっくりしすぎて声が出ない。
後ろでは友澤がガッツポーズをし、井上さんは驚きすぎて目を白黒させている。
山城と零音達は……いつも通りだ。山城はわからなくもないけど、零音達はあまりにも反応が無さすぎる気がする。
「なぁもしかして二人とも知ってたのか?」
「あはは、バレた?」
なるほど、だから二人とも緊張してなかったのか。
「教えてくれたらよかったのに」
「先輩に秘密にしてくれって言われたの。私もハル君の驚く顔見たかったし」
「なんだよそれ」
「ごめんね」
「まぁいいけどさ」
二人が先輩と連絡を取ってるのは知ってたけど、まさかこんなことまで聞いてるとは。
「それじゃあ、改めてお互い自己紹介しましょうか。まずは私達二年生から。私は生徒会長の昼ヶ谷雫よ。よろしくね」
「重ねてになるけど、田所優菜よ。生徒会の副会長をやってるわ」
「改めてぇ、風城双葉だよぉ。私も生徒会に入ってるだ~。書記やってま~す」
「犬一号です」
「二号だ」
「三号っす」
「「「「「「…………」」」」」」
あまりに堂々と犬宣言した先輩達に開いた口が塞がらない。
「いや、あの……名前は?」
「犬一号です」
「二号だ」
「三号っす」
同じ答えしか返ってこない。
「……ゴホン。まぁ、彼らはいいわ。あなた達も自己紹介してちょうだい」
「あ、はい。俺は班長の日向晴彦です」
「朝道零音です」
「夕森雪でーす!」
「い、井上……めぐみです」
「友澤成男です! ずっと前から会長のファンでした!」
「山城武志です」
「それじゃあ六人とも、来週からの校外学習よろしくね。私達もあなた達が楽しく過ごせるように努力するから」
「わからないことがあったらなんでも聞いてね」
「あ、何かして欲しいことがあったらぁ。下僕にやらせるからなんでも言ってねぇ」
「それはやめなさい」
なんていうか変な先輩はいるけど、そう悪い先輩達じゃなさそうだ。
「よろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
校外学習、このメンバーで楽しむことができたらいいなと、そう思った。
ちなみに、後で聞いた先輩男子三人の名前は一ノ瀬、二宮、三林だった。
二年生メンバーの登場。生徒会メンバーなんで、今後も出番がある予定です。
あ、でも犬たちの名前を覚える必要はありません。彼らは犬なんです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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次回投稿は9月14日21時を予定しています。