第32話 連休明けの朝は辛い
連休明けの朝って、いつもよりつらいですよね。
あのつらさ……味わいたくありません。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
作品に関する疑問や質問なども受け付けておりますので、気になったことがあったらお聞きください。
連休明けの朝は辛い。連休の間夜更かししたりしているとなおさらだ。
そして俺はといえば、もちろん辛かった。
昨日の夜もこの間買った新作ゲームをプレイしていたからつい夜更かしして、夜中まで起きていた。
「あぁ……眠い」
天井を眺めながら呟く。
このまま目を閉じてしまえたらどれだけ幸せなんだろうか。
いっそ閉じてしまおう。後のことなんて考えなくていい。
そう、今まさにベットの横で仁王立ちしている零音のことも忘れてしまおう。
「おやすみなさい」
「おやすみなさい、じゃない!」
閉じた目を無理やり開かれる。
視界に入って来るのは零音の顔だ。
「なんで起こしに来て早々に二度寝するの」
「……眠いから」
「昨日言ったよね。明日から学校だから早く寝てねって」
「言った」
「じゃあなんで夜更かししてるの」
「俺がそれを守るとは言ってない」
「……そう」
零音が部屋から出ていく音がする。
怒らせたかな? いや、まぁ、後で死ぬほど謝るとして今は眠ろう。
もう思考もままならないくらいに眠い。
再びスッと目を閉じ、睡眠の世界へと旅立とうとする。
眠りに落ちかけたその時、再びドアの開く音がする。
零音が戻ってきたか? いや、なんだろうと関係ない。俺は眠るんだ。
「…………」
ベットの横に立つ気配がするが、声を掛けてくる様子はない。
と思った次の瞬間、顔に何かを乗せられる。
ん? この感触……タオルか。でも湿って——
「あっっっつ!!」
何かを認識した瞬間、とんでもない熱さに襲われる。
俺は思わず飛び起きて、顔に乗っていたタオルを投げ飛ばす。
「なんだよこれっ!」
「こんなこともあろうかと用意してた熱々のおしぼり。ちゃんと起きれたでしょ?」
確かに目は覚めた。でもこの起こし方はやめて欲しい。めっちゃびっくりした。
なんか最近起こし方が酷くなってるような気がしないでもない。いやまぁ、俺が起きないのが悪いんだけどさ。
「悪かったからこの起こし方はやめてくれ」
「はぁ、しょうがないなー。次はちゃんとすぐに起きてよ。あと夜更かししないこと」
「……はい」
「それじゃ、早く降りてきてね」
はぁ、しょうがない。起きるか。
っていうか、なんか妙に零音の機嫌が悪かった気がする。
なんでだろ。
もしかしてあれかな。告白の返事してないから……とか? いや、これは全面的に俺が悪いんだけど。言わないとなーと思ってるうちにゴールデンウィークが明けてしまった。
言わないといけないよな。
よし、言おう。すぐに言おう。じゃないといつまでも言えなくなる。
俺は意を決してリビングに向かう。
リビングでは、零音が朝ごはんを並べていた。
「ほら、早く食べないと遅刻しちゃうよ」
「あ、あのさ」
「なに?」
「その、この間の……告白のこと……なんだけど」
ピクリと、零音の肩が跳ねる。
「……うん」
「やっぱり零音に無理はさせられない。この問題は俺がなんとかするよ」
「無理って?」
「ほら、零音だって本気で俺のこと好きなわけじゃないだろ? それなのに付き合うってなったら、いつまでかもわからないし……」
ここからでは零音の顔を見ることはできない。
だから、どんな表情をしてるかわからない。
でも、ここは一気に言ってしまおう。
「この先零音に好きな奴ができた時に俺と付き合ってるってことになってるままだったら迷惑だろ?」
「ハル君は……ハル君は、私のこと嫌い?」
「そんなわけないだろ」
昔からずっと一緒にいて、今でもご飯作ってくれたり、こうやって朝起こしてもらったり感謝してる。でも、だからこそ零音には幸せになってもらいたい。
「じゃあ、ハル君は私の事どう思ってるの?」
「どうって、大事な幼なじみだよ。零音だっていつも言ってるだろ」
誰かに俺との関係を揶揄された時、零音はいつもそういう風に言っていた。
「……そっか。じゃあ、しょうがないね。ハル君がそう言うなら私はそれでいいよ」
「でも、嬉しかったよ。そういう風に言ってくれて」
「ごめんね。あんなこと言って困らせたみたいで」
「困ったわけじゃないって。こっちこそ零音の気遣いを無駄にしたみたいで」
「それこそ気にしなくていいって。でもねハル君、私はハル君の力になりたいの。だから、手伝えることがあったら何でも言ってね」
「そうだな。そうするよ」
「…………」
「どうかしたか?」
「ううん。ご飯食べよっか」
零音が何かつぶやいたような気がしたんだけど……まぁ、気にすることないか。
零音の気持ちを無下にしないためにも、なんとかしないとな。
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晴彦が私からの告白を断るのはわかっていたことだ。
わかっていたことのはずなのに……どうしてこんなに私は動揺しているんだろう。
なんでこんなに、胸が苦しいんだろう。
晴彦の言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
「私から……離れないで」
無意識に口からこぼれる。
「どうかしたのか?」
この胸の苦しさの、その理由を私は理解しちゃいけない。わかってしまえば、きっと私は私でなくなってしまう。
そう感じた私は、心の奥底に苦しさも、動揺も押し込んで、いつも通りの私に戻る。
『朝道零音』としての自分を意識する。
「ううん。ご飯食べよっか」
うん、落ち着いてきた。大丈夫だ。
「そういえば今日だったね。校外学習の説明会」
「あぁ、そういえばそうだったな」
「どんなことするんだろうね」
「内容とか全然知らないもんな」
「この学園に入ってから初めての大きなイベントだし、楽しめるといいね」
「そうだな」
そして私は『私』に戻る。心の底に隠した苦しさから目を逸らしたまま。
零音への返事をするための回でした。
返事なんかもっと早くするべきですけどね。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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次回投稿は9月11日21時を予定しています。