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第29話 ゴールデンウィーク 雫 前編

話の続きを考えたり、短編の構想を考えてると一日があっという間に終わるのです。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

作品に関する疑問や質問なども受け付けておりますので、気になったことがあったらお聞きください。


 ゴールデンウィークの六日目、俺は電車に乗って少し遠出をしていた。

 特に目的があったわけじゃないけど、なんとなく家に居たくなかったからだ。

 あれからまだ零音とは話せてない。避けられてるというか、あんまり顔を合わせることができてないからだ。それでもご飯を作ってくれるあたり律儀というかなんというか。


「あ、そういえば今日ゲームの発売日だっけ」


 今日は『メイジカート2』の発売日だったはずだ。

 最近新しいゲームも買ってなかったし、買いに行こうかな。

 もう少ししたら都会の方に出る。色んな店があるし、ぶらぶらと見て回るのもいいだろう。


「あれ? 日向じゃねーか」

「……なんだ友澤か」

「おいおい、なんだってなんだよ」


 声を掛けてきたのは友澤だった。まさかこんなとこで会うとは。


「今日はどうしたんだよ。朝道さんは一緒じゃねーのか?」


 きょろきょろと周りを見て零音の姿を探す友澤。


「あのな、いつも一緒ってわけじゃねーからな」

「えー、なんだよそれ。せっかく会えると思ったのに」

「そんなに会いたかったのか?」

「そりゃお前、クラスの二大美少女の一人だぞ! お前はいつも一緒にいるからわかんないだろうけどさ」

「零音ってそんなに人気なのか」

「入学式の時から騒がれてたしな。学園の美少女ランキングでも最早トップテン入りは確実だと言われてるぞ」

「なんだよそれ」

「知らないのか!? 半年に一度更新されるランキングだ。ここで選ばれた人たちは二学期にある文化祭のミスコンとかにも選ばれたりするんだぞ」

「そんなのあるのか……」

「うちのクラスからだと、朝道さんと夕森さんがランキング入りするんじゃないかって言われてるぞ。わかるか日向、これは異例なことなんだ」

「いや、知らねぇよ」

「いいから聞け。六月と十二月に更新されるこのランキングだが、入学当初の一年生達は早くても十二月のランキングからだ。六月は様子見されるのが普通だ。しかし、しかしだ。朝道さん達はそれを覆し、六月のランキング入り、それもトップテンに名を連ねようとしてるんだぞ! これは同じクラスメイトとして応援しないわけにいかないだろ!!」


 なるほどわからん。そもそもなんなんだそのランキングは。

 そんなものがあるなんて全然知らなかったけど……別に知る必要はなかった気もする。


「あ、ちなみに日向もランキング入りしそうだぞ」

「俺も? なんのランキングだよ」

「恨みで殺せるなら十回は殺してるランキングだよ」

「なんだよそれ!」

「ちなみにこのランキングはオレが作成した」

「犯人お前かよ!」

「仕方ねーだろ。朝道さんと幼なじみで、夕森さんとも仲良くしてて、その上あの生徒会長までお前のことを気にかけてるってんだからな。ったく、羨ましいもんだ」

「あのなー」


 俺の苦労も知らずに、とか言いたいけど、友澤からしたら関係ないのか。

 確かに、状況だけ見たら羨ましいんだろうしな。


「そういえばお前、今日はどうしたんだ? ま、まさか……だれかとデートか! 朝道さんという人がいながらお前ってやつは!」

「違うって。今日はちょっとゲーム買いに行くだけだよ」

「そっかならいいんだけどよ。ちなみにオレは楽器を見に行く途中だ」

「楽器?」

「そうそう、オレ軽音部に入ったけど楽器はずっと借り物だったからさ。楽器ってどれくらいの値段すんのかなーって思って」

「あー、なるほどな」


 確かにこれからも続けるんなら自前の楽器くらい必要になるんだろう。


「ちゃんとやってるんだな」

「当たり前だろ。オレは真面目に、女の子にモテたい!」


 それで頑張れるんなら大したもんだと思うけど。少なくとも俺には真似できない。


「っと、そろそろだな」

「ここで降りるのか?」

「あぁ、先輩から教えてもらった楽器屋がここにあるんだよ」

「へぇ。まぁ頑張れよ」

「あぁ、日向もな」


 俺もってどういうことだ? 今日はゲーム買いに行くだけだって言ったのに。


「なんか元気なさそーだし、考え事してるみたいだったからさ。オレで良かったら話聞くから、いつでも連絡して来いよな」

「……あぁ、ありがとな」


 友澤のやつ。思ったよりも人の事見てるんだな。っていうか、その気遣いをもっと生かせたらいいんだろうけど。


「あ、でも話聞くだけだからな。解決策とかには期待するなよ! それじゃな!」


 ちょうど扉が開き、友澤が降りる。

 ほんと、良い奴なんだろうけどなー。普段の行動がなかったら。

 それから十分ほどしてから俺もまた目的の駅に着いた。







□■□■□■□■□■□■□■□■


 えーと、たしかゲームは七階だったかな。

 来るのが久しぶりだったせいか、よく覚えてない。

 大概の欲しいものはもっと近い所にあるショッピングモールで手に入るしな。

 今はゴールデンウィークということもあってか、人で溢れている。


「すっごい人だな」


 どこもかしこも人だらけだ。


「ん?」


 なんか今すっごい変な人がいた気がしたんだけど。

 その人がいた方に目を向けると、これだけの人込みの中、その人がいる部分だけぽっかりと空間ができていた。


「なんだあれ」


 最近は随分とあったかくなってきたのに、全身黒い服で、長袖で、しかもフードまで被っている。単純に、怪しい人だ。周りの人も警戒してるし、なんかひそひそ話してるし。子供がいる親は近づけないようにしている。


「……変な人もいるんだな」


 その人はあっという間にどこかへ行ってしまった。

 動いていくとモーゼのように人混みが割れてるのがちょっと面白かった。けどまぁ、関わり合いになりたいとは思わないけどさ。

 そのあと、ゲームを無事に購入できた俺はぶらぶらと色んな店を見て回っていた。


「そういえば、一人で出かけるのって久しぶりだな」


 いつもはだいたい零音が一緒だ。俺がどこかに行くって言うと当たり前のようについて来るからな。……あれこれってもしかしておかしいのかな。冷静に考えるとおかしいような気もする。

 今度からはたまに一人で出かけてもいいかもしれない。


「っ!?」


 思わず周囲を見渡す。

 なんか今零音の気配を感じた気がしたんだけど。

 『そんなの許さない』って言われたような気がしたんだけど……気のせいだよな。うん、気のせいだろうきっと。


「そういや、せっかくだから零音になんか買っていくか」


 決して機嫌取りとかそんなのではない。そう、普段の感謝の気持ちを示すためだ。

 零音が好きなものって言ったら……なんか可愛い物だよな。

 昔からよく集めてるし。

 零音はなんでか動物にはあんまり好かれないから、その反動かなんなのか、よく動物のぬいぐるみを集めてるし。

 まぁでもぬいぐるみは無いか。というか、俺が買いづらい。

 キーホルダーぐらいにしとこう。

 ちょうどいい雑貨屋を見つけて入る。


「可愛いって言っても難しいよな」


 熊とか猫とか犬とかいろんなキーホルダーがあるけど、何がいいだろうか。

 最近は猫とか流行ってるけど……あ、そうだ。零音って確か犬が好きだったな。

 昔から近所の人が飼ってる犬をよく見てたし。触ろうとすると逃げるから触れたことないみたいだけど。

 そのたびに零音はへこんでたりする。


「犬にするか」


 キーホルダーを買った俺は店を出て、今度は本屋へ向かう。

 いつも買ってる漫画の新刊が出てることを思い出したからだ。


「ゲーム買ったからあんまり余裕ないけど、まぁ本一冊くらいなら買えるだろ」


 そして、本屋にたどり着く直前に事件は起こった。


「あっ」

「っ!」


 曲がり角から出てきた人とぶつかってしまう。

 衝撃で転んだその人はなんと、さっき見た黒服の人だった。


「あ、すいません。大丈夫ですか」

「はい。大丈夫で……って、え?」


 手を差し出した俺は、その人の声を聴いて驚く。

 向こうもまた、何かに気付いたように動きが止まる。


「……昼ヶ谷先輩?」

「……ひ、日向君?」


 はらりとフードが落ちて、目が合う。

 それはまぎれもなく昼ヶ谷先輩だった。

 周囲の喧騒の中、俺達だけが切り取られたように止まっていた。



雫編と言いつつ、最後にしか出てこない雫さん。

そして久しぶりの登場友澤君。彼は動かしやすくていいですね。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

もし気に入っていただけたならブックマークよろしくお願いします! 私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は9月8日9時を予定しています。

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