第25話 ゴールデンウィーク 零音 前編
話のテンポの良くしたい。難しいですよねー。蛇足が多くならないように気を付けます。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
雷というのが、私は嫌いだった。
「お母さぁん、お父さぁん……グズっ」
子供の私が、夢の中で泣いている。
子供、といっても元の世界にいた時のことだけど。
元の世界の両親は共働きで私はずっと家に一人だった。
雷の鳴る中、ずっと家に一人でいることが私には耐えられなかった。子供の私に、あのつんざくような大きな音はどうしようもなく怖かったのだ。
部屋の隅にうずくまり、雷が過ぎ去るのをただ待つばかり。そんな経験がトラウマとして、私の心には深く刻まれてしまった。
今の私は、あの時の私よりも強くなれてるのかな。
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「……嫌な夢見たな」
目を覚ました私は、起き上がると思わず顔をしかめた。
カーテンを開けて外を見ると、外は分厚い雲に覆われていた。
まだ雨は降ってないけど、この感じだと降り出しそうだな。
「はぁ、天気悪いの嫌いなんだけどな」
今日でゴールデンウィークは四日目。
晴彦の悩みが判明してから二日、事態は何も進展してなかった。
晴彦が殺されるという話を聞いた時は正直信じられなかった。でも、夕森が嘘を言ってるわけじゃないだろうし、晴彦も夕森に嘘を言ったということはないと思う。
白髪の女がなんでそんなことを知ってるかは知らない。本当かどうかもわからないけど、晴彦がそのことを信じているなら、嘘か本当かなんてどっちでもいいことだ。これから晴彦は彼女を作らないといけない。
晴彦の目を使ったら好感度を稼ぐのは簡単なはず。
晴彦は、私を選んでくれるんだろうか……いや、違う。選ばせないといけないんだ。
元の世界には、待ってる親友も家族もいるんだから。
晴彦も生きるために私達の誰かを攻略しようとするはずだし、もうゲームのシナリオどうこう言ってられないかもしれない。
まぁ、こんなことが起こってる時点で今さらだけどさ。
「とりあえず、もう少ししたら晴彦の家に行こう」
もっと天気が良かったら晴彦と出かけてもよかったかもしれないけど、この天気だったら素直に家にいた方が賢明だ。
「よし、行こう」
昨日買い物に行ったから食材はあるし、晴彦を起こす前に作ってしまおう。
昨日は和食だったし、今日はパンにしよう。それだったら楽だし、早く作れるしね。
晴彦の家に行くと、案の定というか、まだ寝ていた。昨日は遅くまでゲームしてたみたいだし、しょうがないかもだけどね。
スクランブルエッグとソーセージと食パンを用意する。なんかこれだけだと手抜きな気もするからスープでも作ろうかな。オニオンスープかコーンスープか……まぁ、起きてから聞けばいっか。
冷めないうちに起こそう。
そう思って部屋に行くと、案の定晴彦は寝ている。しかも、昨日の夜ゲームしたままの状態だ。片付けてもいない。いつもあれだけ言ってるのに。
「ハル君、朝だよー」
「う、うーん……」
もぞもぞと動いて、そのまま布団を頭まで被ってしまう。
「もうご飯できてるよ。早くしないと冷めちゃうじゃない」
「……あとで温めて食べる」
「…………」
何を言ってるんだこいつは。せっかく出来立てを食べさせてやろうというのに。
この調子だとホントに起きないだろうし……しょうがない、やるか。
「いい加減に……起きなさ――い!!」
「うぶっ!」
思いっきりジャンプして晴彦の上に乗る。
いわゆるマウントポジションだ。
「はーやーくーおーきーてっ!」
「わかっ、もうおき、起きてるから!」
おっと、これするの久しぶりだから加減忘れてた。ちょっとやり過ぎたかな。
「あ、ごめんねハル君。それとおはよう」
「お、おはよう……う、重かっ——」
「なんて?」
「なんでもないです。すぐに着替えて下にいきます」
「よろしい」
リビングで飲み物の用意をしてると、晴彦が降りてきた。
「うぅ、朝からひどい目にあった」
「ハル君がいつまでも起きないからでしょ」
「だって眠いし……」
「遅くまでゲームしてるから……片付けてないし」
「あ、忘れてた」
「いつも言ってるのに」
「今度から気を付けるよ」
「それ聞くの何回目だろ」
いっつもこの注意してる気がするのは気のせいじゃないはずだ。
「それじゃご飯食べよっか。スープ用意できるけど、何がいい?」
「ん。じゃあコーンスープで」
「はーい」
まぁ、これもインスタントなんだけどさ。
「そういえば、今日は予定とかあるの?」
「特にないけど……あぁ、でも明日は雪さんと遊ぶ約束はしたかな」
「……そっか」
ゴールデンウィーク誰と遊ぶかっていう選択肢は晴彦に出たのかな。ゲームなら出た。遊ぶ人を選べたわけだけど……もし選択肢が出てたなら、晴彦は夕森を選んだってことになる。
やっぱり、悩みを打ち明けただけあって、心理的に近づいてるのかもしれない。油断はできないかな。
しかも明日は出かける用事があるからついていけないし……はぁ。いや、こんなことで気落ちしてられない。
「それじゃ、今日は私と遊ぼうよ」
「いいけど……何するんだ?」
「天気が良くないから出かけるのはダメだろうし……ゲームとか?」
「おう、いいぜ。それじゃあやるか」
ご飯を食べ終わった私達は、晴彦の部屋にあったゲーム機をリビングへと移動させた。
リビングのテレビの方が大きいからね。
「なんのゲームする?」
「なんでもいいけど……ハル君は昨日何のゲームしてたの?」
私は元の世界にいた時はゲーム好きだった。というか、いつも一緒にいた友達がゲーム好きで、一緒にやってるうちに好きになったんだけどさ。『アメノシルベ』もその友達に勧められたやつだし。
この世界に来てからはあんまりゲームはしてない。『朝道零音』はそういうキャラじゃないし、晴彦に付き合ってたまにやるくらいだ。
「昨日は……『貝乱闘対戦』と『メイジカート』だな」
「あ、私それやりたい。『メイジカート』」
『貝乱闘対戦』は様々な種類の貝が色んなステージで戦うゲームだ。世界中で大人気で世界大会まで開かれてたりする。ちなみに私はアサリ使いだったりする。晴彦はハマグリをよく使ってたはずだ。
『メイジカート』は異世界を舞台にしたゲームで、色んな種族の魔法使いがレースをするゲームだ。獣人やエルフ、魔族など種族によって色んな特性があって楽しい。
「手は抜かないからな」
「そんな必要ないですよーだ」
このゲームは元の世界でもさんざんやったんだ。そう簡単には負けるつもりはないぞ。さぁ、かかってこい晴彦!
それから二時間後。
「あぁ、ズルいズルい! 吸血鬼で夜のステージ選ぶなんて、勝てるわけないよ!」
「いや、ステージはランダムにしてるだろ。それにさっきエルフ使ってるときに森のステージにしてやっただろ」
「うぅ、そうだけど……」
おかしい。勝てない。このゲームはそれなりに得意なはずなのに。元の世界でも友達に勝ててたし……なぜだ。
「次、次こそは勝つから!」
「はぁ、わかったよ」
そしてさらに一時間後。
「勝った勝った! 勝ったよ!」
「あぁ、うん。そうだな」
ようやく勝てた。ふふふ、やっぱり私は強いのだ。
やたらと晴彦がぐったりしてるのはなんでだろう。
「……はぁ、忘れてた。零音が勝つまでゲームやめないこと」
「どうかした?」
「いや、なんでもないよ」
「? 変なの。それじゃ次のゲームやろ」
「っ!? ちょ、ちょっと休憩しようぜ。もうそろそろお昼だし」
「え? あ、そういえばもうそろそろお昼だったね。用意しなきゃ」
「俺も手伝うよ。だから早く行こう」
「そんなにお腹空いてるの? しょうがないなー。じゃあ、美味しいのいっぱい作ってあげる」
「わ、わーい。嬉しいなー」
「食べ終わったら今度は『貝乱闘対戦』やろうね」
「え?」
「さ、そうと決まったら早く食べよっか!」
「……うん、そうだな」
なぜか疲れた顔をしている晴彦と一緒に、私はお昼の準備に取り掛かるのだった。
ゲームは勝つまでやめない系女子の零音ちゃん。
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次回投稿は9月3日21時を予定しています。