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第141話 姫愛過去編 早い再会

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「みんな優しい子達ばっかりですから。そんなに緊張することないですよぉ」

「は、はい……」


 新しく姫愛の担任となったのはどこかぽわぽわした歌町朱里という女性だった。名前だけは姫愛も聞いていたのだが、想像以上に若い先生だった。

 担任というからにはもう少し年老いた女性を想像していたのだが、下手をすれば大学生にも見えるのではないかというような女性だ。

 これでクラス運営は大丈夫なのだろうかと、初対面ながら少し失礼なことを考えてしまった姫愛だが、すぐに頭を振ってそんな想像を振り払う。


(いけませんわ。この方が担任を任されているということはそれだけの資質があるということ。だというのに、見た目だけで人を判断するような恥ずかしい真似はできません。東雲家の恥になってしまいますわ)


「あ、東雲さんもしかして私が担任で大丈夫かなぁって思ってる?」

「そ、そのようなことはありませんわ!」

「その強い否定は逆に怪しいっていうか。まぁよく言われるから慣れっこだけどね。確かに私はまだまだ新米教師だから頼りないのもわかるし。でもね、私のクラスにはすっごく頼りになる子達がいるから。なんとかやっていけてるんだよね」

「そうなんですのね」

「そーそー。だから、もし何かあったらその子達に頼ってくれるといいかも。下手したら私より頼りになるし……」


 それは担任としてどうなのかと思った姫愛だったが、それを言葉には出さない。

 姫愛はそこまで失礼ではなかった。


「ま、とにかく私が言いたいのはいい子達ばっかりだから、安心してねってこと!」

「はい。わかりましたわ」


 朱里の言葉に少しだけ表情を明るくした姫愛は、朱里の後に続いて廊下を歩き、教室の前へとたどり着いた。


「それじゃあ少し待っててくださいね。準備が出来たら呼ぶので入ってきてください」

「はい。わかりましたわ」


 廊下で待つように指示され、朱里が先に教室へと入る。

 これまで何度か転校を経験してきたが、廊下で待たされるのはいつものことだった。そして、ドキドキと緊張してしまうのも。

 教室の中の喧騒が廊下にいる姫愛にまで届いて来る。


『はーい、みなさん。おはようございます! うふふー、今日はさっそくなんですけどねー、重大発表があります!』

『転校生でしょー。もう知ってるよ歌ちゃん』

『そーそー。今どき情報なんてすぐに回って来るんだから。それにしてもアタシらのクラスだったんだー。どんな子なんだろ』

『えぇ、みなさんもう知ってたんですか!? うぅ、驚かせようとして黙ってたのに……』

『オレらを驚かせたいなら歌ちゃんが結婚するとか、そんなレベルじゃないと』

『結婚……まだ彼氏もできたことないのに。って、そんなのはどうでもいいんです!』

『そうだよ! 歌ちゃんに彼氏ができるとかそんなあり得ない話より、転校生だよ。ねぇねぇ歌ちゃん、転校生ってどんな子なの!』

『なんか今めちゃくちゃ失礼なこと言われた気がしますけど……まぁいいです。今さらもったいぶったりしませんよ! さぁ東雲さん、入ってきてください!』

「はい、わかりましたわ」


 胸に手を置いて、深呼吸した姫愛は教室のドアを開いて中へと入る。

 その瞬間、教室中の視線が突き刺さるのを姫愛は感じた。

 姫愛の姿を見た生徒達が感嘆の声を漏らす。それまで騒がしかった教室が一瞬にして静寂に包まれた。

 姫愛の放つ高貴な雰囲気に完全に呑みこまれていた。その姫愛自身も内心はドキドキだったのだが。

 そんな内心はおくびにも出さず、姫愛は朱里の隣に立ち、黒板に自分の名前を書く。


「初めまして。姓は東雲、名は姫愛ですわ。慣れない環境で、ご迷惑をかけすることも多いかと思いますが仲良くしてくださると嬉しいですわ」


 微笑を添えて姫愛はクラスメイト達に自己紹介する。長く喋る必要なない。まず大事なのは名を覚えてもらうことなのだから。

 趣味やその他のことは、話していくうちに知ってもらえばいいのだから。


「「「…………」」」

「?」

 

 しかし、姫愛はクラスメイト達から反応が返ってこないことを不思議に思って首を傾げる。

 すると、次の瞬間音が爆ぜた。


「すっっげぇ!! めっちゃ美人だーー!」

「朝道さんに続く二人目の美少女とか、俺クラス運最強かよ!」

「ねぇ東雲ってさ。あの東雲なのかな。超お金持ちの」

「え、マジ? じゃあマジもんのお嬢様じゃん、初めてみたかもリアルお嬢様」

「おぉ神よ……」

「はいはい! 俺質問したい、質問しつもーーん!!」


 急に盛り上がり始めたクラスメイト達に姫愛は目を白黒させてしまう。

 隣にいる朱里が必死に収めようとするが、興奮している生徒達はなかなか落ち着かない。


「え、えっと。あの、いったん落ち着いてくださいませ」


 姫愛がそう声をかけても止まることはない。

 むしろ姫愛が話す度に火に油を注ぐようにクラスメイト達のボルテージが上がっていく。

 そんな時だった。


「みんな、ちょっと落ち着いて。東雲さんが困ってるよ」


 教室に響き渡る声。それは決して大きな声というわけではないのに、はっきりと教室内に響き渡った。

 そして姫愛はその声に聞き覚えがあった。


「あなたは先ほどの……」

「うん、さっきぶりだね。同じクラスになれたみたいで良かった」


 そこにいたのは姫愛が職員室に行く途中で出会った少女、零音だった。


「思ったよりずっと早い再会になったね」


 そう言って零音は笑顔を浮かべるた。


 


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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Twitterのフォローなんかもしてくれると嬉しいです。

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は7月29日21時を予定しています。

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