第135話 相性の悪い二人
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試合が中断されてからしばらくして、零音がめぐみと一緒に浜辺に戻って来た。
浜辺に戻って来るなり零音は全員に対して深く頭を下げた。
「ごめんなさい。私のせいで大事な最後の試合をめちゃくちゃにしちゃって。謝ってどうにかなることでもないけど。特に桜木さんとハル君にはいっぱい迷惑をかけちゃったし」
「私はもう気にしてませんよ。何度も言う様ですけど、あれは事故が原因ですし。だから朝道先輩も気になさらないでください」
「俺も気にしてないから、零音ももう気にするな。っていうか、あの状況だと一番悪いの俺になるしな」
晴彦も花音もそう言って零音の謝罪を受け入れる。そもそも怒っていなかった二人なので、零音に謝ってもらう必要があるとも思っていなかった。
「ありがとう二人とも。先輩達も……すみませんでした」
「別に気にしてないわ……っていうと、嘘になっちゃうけど。晴彦と花音が気にしてないっていうなら、私から特に言うことはないわ。次は気をつけなさいという程度かしら」
「アタシも同じかなー。まぁレイちゃんだし、って思ってるとこもあるし」
「その言われ方はちょっと……え、私本当にいつかやらかすと思われてたの?」
「「思ってた」」
「ぐっ……」
声を揃えて言い放つ雪と雫。言い返してやりたい零音だったが、事実としてやらかしてしまったのだから何も言えない。
零音の隣にいるめぐみも苦笑いしている辺り、同じようなことを考えていたのかもしれない。
「まぁでもそうね。一つ伝えておくことがあるわ」
「なんですか?」
「今回の旅行、彼女達も一緒に行動することになったから」
「え?」
「折衷案ってことね。試合が中断されてしまったのは私達側にも責任があるわけだし。彼女達の勝利した時の要求。旅行の間晴彦と一緒にいるっていう要求をある程度呑んだ形ね」
「まぁ私から反対することはありませんけど……」
雫達の決めたことに対して零音に否はない。というよりも言えるはずがない。それに晴彦を独占されるわけではないというのなら特段否定する理由も無かった。
女性割合が増えてしまうことで晴彦の肩身が狭くなってしまうことだけが気がかりと言えば気がかりだが、それも今さらの話だ。
「あなた達もそれでいいの?」
「はい。私の目的は日向先輩を独占することじゃなくて、先輩を矯正することですから」
「矯正……あの、ずっと気になってたんだけど聞いてもいい?」
「なんですか?」
「なんであなたはハル君のことを矯正しようなんて考えてるの?」
「そんなの決まってます。日向先輩が破廉恥でダメダメな人だからですよ」
「む……ハル君のどこがダメだって言うの」
「優柔不断なところもそうですし、先輩がもっと男らしくなれば解決することがいっぱいあると思うんです。だから、私が先輩を矯正しようと思ったんです」
「それはあなたの思い込みでしょ。ハル君は破廉恥でもダメダメでもないんだから」
「それは身内の贔屓目なのでは? 私からみれば日向先輩には足りないものが多すぎます」
零音からすれば晴彦を馬鹿にする発言を看過できるわけがない。しかもそれがほとんど付き合いの無かったような中学生の後輩に言われるともなればなおのことだ。
「そもそも、日向先輩がこうなったことには朝道先輩にも責任の一端があるんですよ?」
「私にも?」
「朝道先輩がもっとしっかり日向先輩のことを指導していれば先輩だってもっとしっかりした魅力的な男性になっていたんですから」
「ハル君は今でも十分に魅力的です。っていうか、矯正するってハル君をあなた好みにしようっていうだけでしょ。そんなのダメだからね」
「私は別に日向先輩を自分好みにしようとなんてしてません。日向先輩になんて欠片も興味ないんですから」
「じゃあ別に矯正する必要もないでしょ」
突然言い合いを始めてしまう零音と花音に、雫や雪は呆れ顔を浮かべ、めぐみはおろおろと二人のことを見つめる。弥美はまた始まったと深いため息を吐き、依依は興味なさげに欠伸している。
ビーチバレーの件で和解したと思ったら、再びまかれる新たな火種。
どこまで相性の悪い二人に、晴彦は弥美と同様深いため息を吐くのだった。
晴彦全肯定派零音vs晴彦全否定派花音ですね。
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次回投稿は7月8日21時を予定しています。




