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第132話 嫉妬暴走

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「この……この、へんたぁああああああああいっっ!!」


 花音のつんざくような悲鳴が砂浜中に響き渡る。そしてもちろん、その様子はその場にいた全員が見ていた。そう、全員が。


「変態変態! ド変態! 胸を触るなんて、この犯罪者!!」

「はんざっ!? いや違うから! 事故! 紛れもない事故だから!」

「じゃあなんで私の胸から手を離さないんですか!」

「……はっ!」


 事故だと主張する晴彦。しかしそう言いながらも晴彦の手は花音の胸をしっかりと掴んだままだった。まるでそうすることが当たり前であるかのように。その手はあるべき場所を見つけたかのように晴彦の意思に反して吸いついたように離れないのだ。


「くっ、静まれ俺の両腕っ」

「静まれ、じゃないですよぉおおおおお!!」


 晴彦も花音も互いにパニックになっているのか、どうすればいいかはわかっているというのに体が思う通りに動かない。

 晴彦は混乱の極致に達していながらも、花音の胸の柔らかさと、早鐘を打つ心臓の鼓動をしっかりと感じていた。

 

「~~~~~~っっ!!」


 花音は怒りや恥ずかしさなど、様々な感情が花音はとうとう感情の許容量が臨界点に達し、晴彦のことを強く突き飛ばした。


「とにかく、一回、離れてください!!」

「うぼぁっ!」


 顔を林檎のように真っ赤にし、涙目になった花音は自身の体を抱き、ふー、ふーと荒い息を吐く。


「見損ないました先輩! いくら事故だからって、やっていいことと悪いことがあるんですよ!」

「わ、悪い……」


 たとえ不慮の事故であろうとも、触ってしまったならばその非は晴彦にあるのだ。突き飛ばされた晴彦は砂まみれになりながらもちゃんと謝った。

 

「言い訳じゃないけど、ホントに慌ててたんだ。まさか桜木さんがこっちにまで飛んでくるなんて思わなかったし、まさかそのままその……あんなことになるなんて思わなかったし」

「っ……ま、まぁ私も一生懸命になり過ぎて先輩のことに気づかなかったのは悪いと思ってます。それに先輩、私のこと支えようとしてくれたんですよね」


 そう。そもそも晴彦が腕を突き出したのは花音が転ばないよう支えるためだ。結果はさんざんだったが、晴彦が花音のことを守ろうとしたのは事実だ。そしてそのことはもちろん花音もわかっていた。


「でも、だからってそう簡単には許せませんからね」


 しかし、それがわかっていたからといって納得ができるわけではない。なにせ花音は胸を触られたのだ。今までの人生で誰にも触らせたことが無い胸を。しかも男である晴彦に。

 花音の抱く怒りもある意味では当然なのだ。


「まぁそりゃそうだよな」


 花音の怒りをどう静めたものかと考えていた晴彦は、一つ大事なことを失念していた。この一連の流れはこの場に全員が見ていたのだ。その全員の中には、もちろん零音も含まれているのだ。


「……ねぇ」

「「っっ!!」」


 その瞬間、晴彦と花音が感じたのは凍り付くような殺気。花音が試合前に感じたそれよりも、さらに強い、最早格の違う殺気だ。


「なに……してるの?」

「れ、れれれれ零音!?」

「あさ、朝、朝道先輩?!」


 幽鬼のようにゆらりと、突然背後に現れた零音に晴彦も花音も動揺を隠せない。しかし、同じような慌て方をする二人の姿を見て零音はさらに怒りを増幅させる。


「私の見間違い……じゃないよね。触ってたよね、ハル君」

「え?」

「そこの子……桜木さんの胸。そうはもうがっつりと、しっかりと、触ってたよね」

「落ち……落ち着け零音!」

「落ち着け? 私は十分落ち着いてるよ。ほら、こーんなに落ち着いてる」


 足元に転がっていたボールを拾い上げ、両手で押しつぶす零音。ぐにゃりと形を変形させたボールはパァン、と甲高い音を立てて破裂した。


「ね?」


 ね? じゃねーだろ! とツッコミたい晴彦と花音だったが、もちろんそんあことが言えるはずもない。

 明らかに怒り狂っているのに、声音だけが穏やかなのがまた恐怖心を煽る。


「ねぇハル君」

「はいぃ!」

「気持ち良かった?」

「……オボエテマセン」

「そっか」


 すぐに否定すれば良かったのかもしれない。しかし晴彦は返答までに若干の間を開けてしまった。それが何よりも晴彦の本音を物語っていた。

 そして次の瞬間、零音の怒りが爆発した。


「なぁんで私より先にその子の胸触るのよぉおおおおおおっっ!!」

「怒るとこそこなのかよぉおおおおおおおおおっっ!!」


 破裂し、無残な姿となったボールを投げ捨てた零音はキッと一瞬花音のことを睨むと、そのままの勢いで晴彦に詰め寄る。


「だってさ、もう十年以上一緒にいるんだよ? それなのにハル君、一回も私の胸なんて触ってくれたことないじゃない!」

「いや普通触らないだろ! っていうか、事故! 桜木さんの胸触っちゃったのも事故だから!」

「そんな都合の良い事故が起きるなんてどこの主人公よハル君は!」


 ギャルゲーの主人公です。などと言う人がいるはずもなく、零音の怒りはヒートアップしていく。


「というか! よしんば事故だったとしても、なんで私じゃなくてその子が先なの!」

「そんなこと俺に言われても知るか!」

「それに事故だったって言っても嬉しかったんでしょ? 胸触れたんだもんね。しかも可愛い子の胸! 男の子なら誰だって嬉しいよね!」

「いやそれは……」

「やっぱ嬉しいんじゃん!」

「だからそれは……あぁもう! どうしたら納得してくれるんだよ!」

「触ってよ!」

「はい?」

「私の胸に!」

「どこの痴女だ!」

「できないの? やっぱり私よりあの子の方が好きなんだ。だからあの子の胸は触って私のは触らないんだ!」

「最早何を言ってんだお前は! そういう問題じゃないだろうが!」

「じゃあどういう問題なの!」

「だからそれは……あぁもうどう言ったらいいんだよ!」

「言葉よりも行動! さぁ、早く触って、私の胸を! そしてその手に残るあの子の感触を上書きするの! 一秒でも早く! さぁ、さぁっ!!」


 胸を触らせようと晴彦ににじり寄る零音。それを拒否するために必死にもがく晴彦。

 そんな二人のやりとりは、周囲が冷静さを取り戻し、止めに入るまで続いたのだった。


 


前話タイトル変更しました。

そして久しぶりの零音暴走回。

ずっと溜め込んでいた嫉妬の炎が爆発した瞬間でしたね。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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Twitterのフォローなんかもしてくれると嬉しいです。

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は6月27日21時を予定しています。

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