第128話 試合開始前
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そして始まる運命の第三試合。
零音・雫vs花音・弥美。この試合に勝利したものが晴彦と行動を共にする権利を得る。絶対に負けるわけにはいかない試合だった。
両チームともにやる気は最高潮にまで達している。決して負けるものかという気合いが見て取れた。
「殺殺殺……あんな小娘が晴彦と一緒に遊ぶなんて絶対に許さない。晴彦の隣にいていいのは私だけ。私と晴彦の間を邪魔しようとするなら殺。許さない許さない。私の前に立ったことを必ず後悔させてやる。殺殺殺……」
若干一名、やる気を飛び越えて殺気を放っている人物もいたが……雫は殺気を放つ人物——零音の元へ近づき、軽く肩を叩く。
「零音、あなた力入りすぎ。あと顔怖すぎ。女の子がしていい表情じゃないわよそれ。気張る気持ちはわかるけど、もう少し深呼吸して肩の力を抜きなさい。総じて言うと、落ち着きなさい」
「私は十分落ち着ていますけど」
「全然落ち着いてるようには見えないのよ。本当に殺しかねないような顔で花音達のこと見てるから。普通に怖いわよ今のあなた。そんな顔を晴彦に見せながら試合するつもり?」
「む……」
晴彦の名を出された途端に顕著な反応を見せる零音。
雫はすでに零音の性格など把握済み。否、雫でなくとも零音を動かすのに晴彦の名前が効果的であることは理解しているレベルだ。
「花音の出した条件を呑んだことは確かに勝手だったと思ってるけど、私達があそこで引くわけにもいかないでしょう。新しく出した条件を呑まないなんて、先輩として情けないもの。それともなに、あなたは負けるつもりなの?」
「そんなつもりはないけですけど」
「だったら条件を呑んでも何も問題はないでしょう。勝つのは私達なんだから」
花音達がどんな条件を出してこようとも、零音達が勝てば何も問題はないのだ。そして、雫は零音とならば試合に勝てると踏んだからこそあの条件を呑んだのだ。もっとも、勝てるかどうかわからなくても雫は条件を呑んだだろうが。
「私達なら絶対に勝てる。そうでしょう?」
「もちろんです。負けるつもりなんて毛頭ありません。ハル君は誰にも渡しませんから」
「その意気よ。さぁ、後輩達に先輩の力を見せつけてあげましょう」
「はい!」
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零音達の向かいのコートにいる花音達もまた、零音達と同じように話していた。
「花音、急にどうしたの? さっきまでよりすごいやる気だけど」
「うん。私にも負けたくない理由ができたからね」
「負けたくない理由?」
「あの先輩……日向先輩のことだよ」
「日向先輩がどうかしたの?」
「あの人の女性関係のだらしなさは目に余るものがあるもの。中等部生徒会長として、先輩といえども風紀の乱れは許せない。お姉さまが彼に注意しないなら、私があの先輩の性根を叩き直してやるのよ!」
「あー、また花音変なスイッチ入っちゃったんだ」
「変なスイッチって何よ。これは弥美ちゃんのためでもあるんだから」
「私の?」
「弥美ちゃん……まだはっきりと確信があるわけじゃないけど、日向先輩のこと気にはなってるでしょ」
「う……」
「まぁだからこんな提案したんだろうし。こういうのは理屈じゃないから、私から何か言うことはないけどね。でもそれならそれで、私は先輩にちゃんと選べる人になって欲しい。それができない人を私は信用できないから」
「花音……」
「で、だからこそ私の出番なの!」
「どうしてそこに繋がるの」
「だって私なら先輩に絆されるようなことはあり得ないし、私って人としてしっかりしてるし。先輩のことをちゃんと導けると思うんだよね」
「その自信はどこから……」
「自明!」
「今私の中にミイラ取りがミイラって言葉が過りまくってるけど……まぁ、そこには深くツッコまないでおくことにするね」
「そのためにも、まずはこの試合だよ! 絶対に負けるわけにはいかない。お姉さまのためにも!」
「あ、結局花音はそこに行きつくのね」
「全ては私とお姉さまのイチャイチャライフのために!」
「やる気があるのはいいけど……大丈夫かなぁ」
花音がやる気に満ち溢れていることは弥美としても歓迎なのだが、花音がやる気に満ち溢れている時は大抵なにかが起こると弥美は経験上知っている。
弥美はこの大事な最後の試合で何か起きないことを祈りつつ試合へと挑むのだった。
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次回投稿は6月13日21時を予定しています。




