第123話 雫・雪vs弥美・依依 前編
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雫・雪ペアの優勢とみられて始まった第二試合。しかしその第二試合は意外なことに雫達に均衡が傾くことなく、弥美達は少し押されながらも雫達に必死に喰らいついていた。
「雪」
「よっしゃ任せて! どりゃぁああああっっ!!」
雫の上げたトスに合わせて雪が高くジャンプし、強烈なスパイクを叩き込む。弾丸のような速さで放たれたスパイクを止めることができず、ボールはコートに深く突き刺さる。
「4-3。昼ヶ谷・夕森ペアリードです」
「いぇす!」
「ナイススパイクよ、雪」
「もち。打ちやすかったからいつも以上に勢い出たよ」
喜ぶ雪と雫。対する弥美と依依は乱れかけた呼吸を整えながら話し始める。
「ごめん、私のボールが甘かった」
「気にしないで依依。まだ想定の範囲内だから。それでもやっぱり油断はならないけど……」
弥美は前髪をかきあげたい衝動を堪えつつ、雪のことをジッと見据える。
「やっぱりこの試合も要は夕森先輩。昼ヶ谷先輩も動きは悪くないけど、まだ私達で対処できるレベル。一試合目で相当疲れてるはずなのに、それでも私達より動けるなんて。わかってたけど、運動にかけては本当に化け物なのかも。あの先輩」
一試合目でも何人分もの働きをしていた雪だが、その動きの精細は衰えていない。スパイクの威力を見てもそれはわかる。
しかし弥美の目には、それ以上のものがしっかりと見えていた。
「でも問題ない。やっぱり私の見たて通りだった。夕森先輩にはちゃんと疲れが溜まってる。あの先輩は、疲れた時の動き方をちゃんと知ってるだけ。疲れてないわけじゃない」
疲れた時、どこをどう動かせば体力の消費を抑えることができるか。それを雪は長年の運動経験で体得していた。しかしそれはあくまで体力の消費を抑えるための動きだ。全力に近い動きができるというだけ。今の雪が発揮している力は本来の全力にはほど遠いものだった。
それでも弥美と依依が押されるのだから雪の運動神経は化け物だと弥美は評したのだ。
「やることは一試合目と同じ、夕森先輩の体力を削る。今度はもっと徹底的に。動きを完全に止めるまで」
「……弥美って結構考えることもやることもえぐいよね」
花音に敵対する存在が現れた時もそうだった。弥美は相手のことを徹底的に調べ上げた。何を一番嫌っているか、その弱点を中心に。そうして調べ上げた後に叩き潰すのだ。
二度と花音に反抗する気概など起きないようにと。敵対する気力を根こそぎ奪うのだ。
前髪を隠したその不気味な風貌も相まって、弥美は一部の生徒から非常に恐れられていた。
「手段を選んでたら勝てないだけ。いい? 能力も経験も、何もかも上なのは先輩達。私達にできるのは確実な方法で勝ちに行くこと。卑怯でもなんでもね」
「まぁそうだけどさ。いや、こういうことあるとホントに弥美が敵じゃなくてよかったって思うよ」
「なにそれ。性格悪いっていいたいの?」
「そう聞こえた? まぁ、そう聞こえるように言ったんだけど」
「や~~み~~!!」
「ちょっと、くっつかないでよ。暑いから」
「私だって暑いから! それより、依依の方は体力大丈夫なの」
一戦目から試合をしてるのは雪だけではない。休憩を挟んだとはいえ、依依も一戦目からハードな試合を繰り広げているのだ。
「んー、まぁ、私も疲れてるけど。もう無理動けないってほどじゃないかな」
「そう。なら良かった。まぁ、どのみち依依はこれで終わりだから、指一本動かせなくなるまで動いてもらうつもりだったけど」
「鬼か」
「七割冗談だってば」
「三割本気があるのが怖い」
「さ。冗談言ってないでやるよ。向こうはもう準備できてるみたいだし」
対面のコートではすでに雫と雪がボールを片手に弥美達の話が終わるのを待っている。
「作戦会議は終わったかしら?」
「そーいうのタイムアウト取らないとダメだよー」
「すみません。もう大丈夫です」
「もう行ける」
「ふーん、まぁ何考えてるかなんて大体わかるけどさ。そう簡単にアタシを打ち崩せると思わないでね」
「えぇ。ですから。全力で行かせていただきますよ、先輩」
バチバチと両チームの闘気がぶつかり合う。
そして雫がサーブの姿勢に入り、試合が再開された。
最近疲れているせいなのかなかなかやる気がでない……これが五月病?
まぁ、なんにせよ体調には気をつけつつ、これからも頑張ります!
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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それではまた次回もよろしくお願いします!
次回投稿は5月27日21時を予定しています。」