第116話 優柔不断な主人公
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いざ勝負、ということになったはいいもののまだ零音達はまだ島についたばかり。荷物すら置いていなかった。
ということでいったん仕切り直しとなり、零音達はホテルへと向かうことになった。
「うわー、遠目に見ててもわかってたことだけどさ。すっごい広いホテルだねここ」
雪がホテルのラウンジで感嘆したように呟く。贅の限りを尽くしているのではないかと思うほどにホテルの中は豪奢に飾り付けられていた
「綺麗ですねー」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど。私はあまり好きじゃないわ。お金ばかりかけてるのが見え透いてるもの」
めぐみが感心したように呟くが、雫は嫌そうな表情だ。著名な絵画や銅像を飾ってあるのが気に食わないらしい。
「権威を示したいのか。お金を持っていることを示したいのか知らないけどね」
「まぁ、あの辺の絵画とかは完全に悪乗りですもんねぇ。お姉さまが嫌うのもわかる気がします」
「こんな文句言ってもしょうがないけどね。さぁ、こんな愚痴なんてどうでもいいわ。部屋に行きましょうか。それぞれの部屋割りを伝えるわね」
部屋割りは事前に雫と奏が話合って決めてある。
そして発表された部屋割りは『零音・めぐみ』『雪・鈴』『雫』『姫愛・雷華・雷茅』『霞美・奏』そして『晴彦』という形になった。
「全部こちらの独断と偏見で決めちゃったけど。何か異論はある? 晴彦は誰かと同室ってわけにもいかないから部屋の変更はできないけど。ごめんなさいね晴彦」
「いやなんで俺が誰かと同室望んでたみたいになってるんですか」
「違うの?」
「違いますから! 一人でいいです」
「ならいいんだけど。寂しくなったら私の部屋に来てくれて構わないわよ。鍵は空けておくから」
「お姉さま!?」
「なに言ってるんですか!」
「冗談よ冗談。まぁ晴彦が来たいというなら拒みはしないけど」
「行きませんから!」
「会長……もしかしてそのために自分一人部屋にした感じ?」
「さぁ、なんのことかしら」
「さすが生徒会長……仲の良い人同士を同室にして、自分と日向先輩は一人部屋に。そうすることで自身の行動を自由にしたと。抜け目ありませんね」
「感心するところが違くない?!」
弥美のややずれた感想に花音が思わずツッコむ。その後ろにいる依依は興味無さげに欠伸していた。
「さぁ細かい手続きは必要ないわ。荷物を置いてビーチに向かいましょうか」
そして晴彦達は部屋に荷物を置いて、改めてビーチへと向かうのだった。
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海。砂浜。そして水着の美少女。こう言われて心が動かない男はいないだろう。ましてやそれが他と一線を画すほどの美少女であればなおのことだ。
キラキラと輝く砂浜に、太陽光を反射する驚くほど綺麗な海。そしてそんな海すらも自分を輝かせるための道具でしかないと言わんばかりの美少女達は海でキャッキャとはしゃいで遊ぶ……ということはなく、砂浜でバチバチと睨み合っていた。
「あぁ、なんでいつもこうなってしまうのだろうか」
口を挟まないようにと霞美の監視付きで椅子に縛られた晴彦は思わずぼやく。そんな晴彦に厳しい目を向けるのは鬱陶しそうに太陽を睨んでいた霞美だ。
「なんでって、そりゃ晴彦が優柔不断なせいだろ。さっさと誰か一人に決めてりゃこんな面倒は起きないんだから。まさかこの期に及んであいつらからの好意に気付いてないなんて頭お花畑なこと言わないだろうな」
「うぐっ。それはまぁ、なんとなく……薄々と?」
「薄々とって、やっぱバカなのかお前。私はお前をそんな風に設定した覚えはないぞ」
「設定ってなんだよ!?」
「キャラ設定に決まってるだろうが。私がゲーム作る時に決めた設定では、お前はちゃんと決めれる男にしたはずだ」
「ゲームの設定とか言われたって知るか。俺は俺だ」
「そうだな。お前はお前だ。私が作った『日向晴彦』とは似て非なるものだしな。はぁ、なんでこんなことになったんだか」
「優柔不断で悪かったな」
「そうだな。男としては最悪だ。なんでお前みたいなのがモテるのかわからん」
「うっせ」
「……まぁでも、だからあいつらはあいつらのままでいられるんだろうけど」
「? なんか言ったか?」
「いや。なんでも。とにかく、この状況をなんとかしたいならさっさと誰を選ぶか決めることだな。たとえそれで誰かが傷つくとしても、そうすることがお前の責任でもある……ってなんで私がこんなこと言わないといけないんだ。そんな柄でもないし。はぁとにかく今はこの勝負の行く末を黙って見守るんだな。私に面倒をかけるな、以上」
「面倒かけるなって、座ってるだけだろ」
晴彦がそう文句を言っても霞美は素知らぬ顔で零音達のことを見つめる。その視線の先では今まさに、勝負が始まろうとしていた。
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次回投稿は5月2日21時を予定しています。