第114話 挑戦状
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花音達と出会った晴彦達は改めて花音達に改めて話を聞いていた。
「ところで、生徒会の慰安って話だけど。誰かちゃんと保護者を連れてきてるの? まさかあなた達だけじゃないわよね」
「もちろん私達だけじゃないですよ。一応先生にもついてきてもらってるんですけど……」
「先生?」
「えっと、たぶんもうすぐ来ると思うんですけど」
「もう来てるよ」
不意に背後から聞こえた声、しかも知っている声に零音達は慌てて振り返る。
「やぁ、久しぶりだな。お前達」
「「「か、風城先生?!」」」
そこに居たのは保険医である風城彩音だった。零音と霞美が起こした事件以降、直接的な接触がなかったので零音達も特に気にしていなかったのだが、まさかこのタイミングで再会することになるとは夢にも思っていなかった。
「そう、皆の保険医風城先生だ。今は学校もなくて暇だからね。こうして私が引率を請け負ったわけさ」
「本当に……それだけですか」
「ふふふ、生徒会長。君は疑り深いなぁ。もちろん本当にそれだけだよ。今回の旅行に関して私は何もしない。するわけがないだろう。皆で思う存分楽しむといいさ」
にっこりと笑顔を浮かべて言う彩音のことをじっくり観察する雫。しかし雫の洞察力をもってしても彩音の本音を読み取ることはできなかった。
「……わかりました。今はその言葉を信じます。もし妙なことをしたらその時は厳正な対応をさせていただきますで」
「ははは、怖いなぁ。でも安心するといい。私は見届けるだけだからね。本当なら双葉も連れてきてあげたかったんだけどね。そこまでお願いするわけにもいかないし。もし君が良ければ今度は双葉たちも誘ってくれると嬉しいな」
「また機会があれば。考えておきます」
「大人な対応だね。まぁ期待せずに期待しておくよ。今回は双葉へのお土産だけ買って帰ろう」
「はぁ。それで、来てるのはこれで全員なのかしら花音」
「はい。一応生徒会全員に声はかけたんですけど。皆用事があったりするみたいで。あとはまぁ、補習の子とかも居て」
「わかったわ。あなた達に会うことになったのは想定外だったけど、別に悪いことではないし。これから私達は海で遊ぶ予定だけど、あなた達は?」
「ご一緒したいです!」
食い気味にそう主張する花音。後ろの二人も特に異論はないらしい。そうなれば後は雫達次第だ。
「ということだけど。あなた達の意見も聞いておくわ。花音達も一緒でいいかしら」
「まぁ断る理由もないし、アタシは全然いいけど」
「私も大丈夫です」
「みんなで遊んだほうが楽しいですし」
「問題ありませんわ」
「あたしもー」
「私達も、」
「異議なしです」
「そう。晴彦は?」
「そっち大丈夫なら俺は全然。まぁ、この場にいると俺の場違い感半端じゃないですけど」
最初から気になっていたことではあるのだが、恐ろしいまでの男女比だ。というよりも、晴彦以外に男がいない。零音に始まり、雫、雪などなど、花音達や奏、それに彩音も含めれば女子だけで十四人の大所帯だ。そこに男子は晴彦一人だけ。はっきり言ってしまえばかなり肩身が狭い。
「んー、まぁあなたの気持ちもわからないわけではないけど知らない仲というわけでもないし、そこまで深く気負う必要はないわよ。難しいかもしれないけど」
そこは流石に元男である雫だ。この場で晴彦が感じている肩身の狭さはなんとなく理解できる。
「そんなに気まずいなら先輩はホテルの部屋にでもこもってたらいいじゃないで——いたっ」
「花音。次にそう言うこといったら本気で怒るわよ」
「ご、ごめんなさい……」
「謝るのは私じゃなくて晴彦にでしょ」
「うぐ……ご、ごめんなさい」
ものすごく嫌そうな表情をしながら晴彦に頭を下げる花音。晴彦からすれば懐かしい光景だ。生徒会室で花音と遭遇するたびに状況は違えど大体同じようなやりとりがされるのだから。それなのに懲りないあたり花音は大物かもしれないと晴彦は思う。
そしてだからこそ、晴彦も言うことは毎回同じなのだ。
「あぁいいよ別に。気にしてないからさ」
これで終わればいつも通りのやり取りなのだが、今回はそこでは終わらなかった。
「ダメですよ先輩。そうやって先輩がいつも甘やかすから花音が調子に乗るんです。たまにはしっかりビシッと言わないと」
「え、弥美?」
まさかの親友の裏切りに花音は驚きを隠せない。
「今だってきっときっと上辺だけの言葉ですし。それじゃあ花音のためにもならないと思うんです。でも原因は花音が日向先輩のことを知らないことだと思うんですよ。だから提案なんですけど」
そこでニヤリと笑って弥美は言う。
「今日一日、私達と一緒に行動してお互いのことをもっと知ればいいと思うんですよ」
「……え?」
「「「えぇええええええええ!!!」」」
それは明らかな、弥美から零音達に対する挑戦状だった。
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次回投稿は4月25日21時を予定しています。