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第113話 偶然、あるいは必然の遭遇

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「うーーーみーーーー!!!」

「りーーーくーーーー!!!」


 島にたどり着いた途端、水を得た魚のように元気を取り戻した雪と鈴。足の下に大地があることを噛みしめるように何度も地を踏む。


「あー、長かった。バス移動だけだと思ってたのに船移動まであるんだもん」

「悪かったわね。でもあなた船酔いするタイプだったのね。意外だったわ」

「うーん。アタシもそんなに弱いと思ってなかったんだけど。見事に酔ったね。もう復活したけど!」

「あなたは?」

「あ、私ですか? 私ももう大丈夫です。すみません酔っちゃって。酔い止めは飲んでたんですけど」

「別に気にしなくて大丈夫。本当に体調が悪いなら休んでてもいいのよ」

「いえ、もうばっちりですから」

「ちょっと会長? アタシにはそういう優しい言葉ない感じ?」

「だってあなたはもう元気でしょう? それにあなたは船酔いでどうにかなるほど弱くはないでしょ」

「そうだけどさー。でも優しさってそういうことじゃないじゃん」

「少なくとも私の優しさはあなたに向けられることはないわね」

「冷たー! 何それ冷たー!! 冷血人間じゃん! ねぇハルっちー、会長酷いと思わない?」


 ここぞとばかりに晴彦の同情を買おうとした雪だったが、その前に零音が晴彦と雪の間に割って入る。


「……何レイちゃん。どういうつもり?」

「いえ別に。なんでもないよ。気にしないで」

「気にしないでって、明らかに間に割って入ったよね。アタシをハルっちに近づけないようにしたよね」

「被害妄想じゃない? 気にしすぎだって」

「…………」

「…………」

「二人とも、めっ!」

「「あたっ」」


 零音と雪が笑顔のままバチバチと睨み合っていると、後ろからやってきためぐみにぺちっと頭を叩かれる。

 まさかめぐみに頭を叩かれると思ってなかった二人は目を点にして驚く。


「今から一緒に遊ぶのにそんな風に喧嘩しちゃダメだよ。皆で楽しい旅行なんだから。ちゃんと仲良くしないと連れてきてくれた先輩にも失礼でしょ」

「「……ごめんなさい」」


 まさしく正論を叩きつけられた二人は言い返す言葉もなく、シュンとして謝る。


「こうして見るとめぐみってあの二人に対して……特に零音に対してかなりの特効を持ってるわよね。零音に何か頼み事をするときはめぐみを介した方がいいのかしら」

「零音のこと見てるとわかりますけど、零音かなりめぐみと話してますからね。よく電話とかしてますし」

「へぇ、そうなのね」

「ほんと。めちゃくちゃ仲良いですよあの二人」

「それで晴彦は仲の良い二人に嫉妬してると」

「してません」

「素直じゃないのね」

「別に嫉妬してませんから!」

「はいはい。そういうことにしておいてあげるわ。ほら、みんな。海でテンション上がるのはわかるけど落ち着きなさい。まずはホテルに荷物を置いて——」


 海を見てはしゃぐ面々をホテルへと連れていこうとする雫。しかしそんな雫にとって、予想外の出来事が起こった。


「おねーーーーさまーーーーーーっっ!!」

「……ん?」


 聞こえるはずがない声が聞こえて、一瞬雫は思考を停止させてしまう。


「おかしいわね。あの子の声が聞こえるはずないのに。幻聴かしら。思ったより移動で疲れてたのね」

「お嬢様、残念ながら幻聴ではございません。お嬢様の耳は正常でございます」

「……言わないで。現実を見たくないから」


 そして現実を突きつけるように彼女は再び大きな声で叫ぶ。


「おねーーさまーー!! 私ですーー! 花音ですーー! あなたの花音が来ましたよーー!!」

「……はぁ」


 名前まで言われてしまえば雫も現実を受け入れるしかない。声のした方に目を向ければ、そこにいるのは物凄い勢いで砂浜を駆けてくる花音の姿。その後ろにはゆっくりと追いかけてくる弥美と依依の姿もあった。


「あーー、会いたかったですお姉さま! 終業式の日以来で……もう私寂しくて寂しくて」

「そ、そう。でもなんであなたがここにいるのかしら。私ここに来ることは言ってなかったはずなんだけど」

「それはもちろんお姉さまを思う私の心がここへと導いて……」

「ちょっと花音。嘘言わないで」

「いつ行くかもわかってなかったくせに」


 後から追い付いてきた弥美と依依が雫に抱き着こうとした花音のことを無理やり引き離す。


「すみません先輩方。私達がここに来たのは偶然ですよ。ほら、この島って花音のお父さん……桜木家もお金だしてるじゃないですか。だから生徒会の慰安旅行ってことで私達もここに来ることにしたんです。他の場所はどこも人だらけですし」

「へぇ、なるほど。つまりここで会ったのは偶然だと」

「そうですね。こんな偶然もあるんだなって驚いてます。それこそ花音じゃないですけど運命なんてものがあるんじゃないかなって思っちゃうくらいには」

「そう。まるで作られた運命って感じだけど」

「偶然でも必然でも、運命は運命ですよ。私はそう思ってます」


 なぜか一瞬ちらりと晴彦に視線を送る弥美。その視線の意味を知るのは弥美だけだ。

 こうして晴彦達の旅行に、花音、弥美、依依の三人も加わることになるのだった。


 


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は4月18日21時を予定しています。

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