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第109話 全員集合

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 零音達にひと通り挨拶を済ませた鈴は少し離れた位置に座って、霞美から出された飲み物を一人静かに飲んでいた。その態度から見ても、零音達と積極的に関わる気が無いのは明白である。

 そもそも鈴のこともあまり知らない零音からすれば、なぜそこまで敵意を向けられるのかその理由がわからなかった。


(うーん、あの人に何かした覚えもないしなぁ)


 知らないうちに嫌われるという経験が今まで無かったわけではない。零音が中学生の時にも何度か経験したことだ。大抵の理由はくだらないことだったりするのだが、だからこそ恐ろしい。わけのわからない理由で敵対されることほど面倒なものはないのだ。


(高校に入ってからはそういうことがないように気を付けてたつもりだけど、完璧には絶対無理だしなぁ。しかも彼女別のクラスだし。クラス内だけならまだしも別のクラスのことまで知らないし)


 軽く嘆息する零音。姫愛のこともあるのに、ここに来てもう一つ問題が発生したのだ。ため息を吐きたくなるというものだろう。しかしだからと言って放っておける問題でもない。少なくとも数日は行動を共にするのだ。解決できるならそれに越したことはない。

 ということで零音は呑気にジュースを飲む雪を部屋の隅まで連れて行く。客室は広いので、隅まで行けば会話が聞こえないと判断してのことだ。


「どったのレイちゃん。私まだジュース飲んでるんだけど」

「すぐ終わるから」

「もう……それで、何?」

「雪の連れて来た白石さんなんだけど」

「鈴ちゃんがどうかした?」

「いやどうかした、じゃなくて……明らかに私とかハル君とか、先輩のこと敵視してるでしょ。理由とかわからない?」

「え? そうかなぁ」

「そうかなぁ、じゃないから! 絶対そうだって。あの感じ中学の時に何回も味わってるから。なんか思い当たる節とかない?」

「急にそんなこと言われてもわからないって。気のせいじゃないの?」

「気のせいじゃないから。雪でもわからないんだったらもうお手上げなんだけど」

「うーん……でもまぁ、大丈夫だよ。鈴ちゃんいい子だし。きっとすぐ打ち解けれるって。たぶん今は緊張してるだけじゃない? それが敵対してるように見えてるだけだって」

「だといいんだけど……東雲さんのこともあるのに、また厄介事増やしたくないし」

「あはは、大変だね~」

「他人事だと思って……」

「他人事だし」

「そーでしたね」


 ケラケラと笑う雪を見て零音は若干苛立ちつつもそれ以上は何も言わずにため息を吐くにとどめる。雪に何を言っても無駄だと悟ったからだ。

 それに結局の所、鈴の問題は雪に頼ってなんとかなることでもないのだから。


「…………」


 そんな零音と雪のやりとりを鈴は遠くから見ていた。会話自体は聞こえていないが、雪が笑っているのは遠目に見てもわかった。それを見ただけで鈴のコップを握る手に力がこもる。


(雪ちゃんの一番の友達は私なんだから)


 鈴の心を占めてしたのはそんな感情だけだ。とどのつまり。零音達に対して敵意を抱いたのもそれが理由。知らないうちにどんどん雪と仲良くなっていく零音達に嫉妬していたというだけだ。

 だがまさか雪のことで嫉妬されているなど零音にわかるはずもなかった。零音にとって雪は友人ではあるが、それ以上に晴彦を奪い合う恋敵という認識なのだから。


(ちょっと雪ちゃんと仲良くしてるからって。この旅行の間に私が一番なんだってことを思い知らせてみせる!)


 ふんす! と一人気合いを入れる鈴。そしてそのついでと言わんばかりに呑気に座ってお茶を飲む晴彦にも視線を向ける。


(ついでにあの人が雪ちゃんの恋人に相応しいかどうか……見極めよう。今まではチャンスが無かったから雪ちゃんの好きなようにさせてきたけど、機会があるなら話は別。なんでか知らないけどここには美人さんがいっぱいいるし、雪ちゃん以外にも鼻の下伸ばすようなら……その時は)


 ギンッ、と強い視線を向けられた晴彦は悪寒に襲われてブルっと体を震わせる。慌てて周囲を見渡すが、その頃には鈴は晴彦から視線を逸らしていた。


「な、なんだ……?」


 それから少しして、再び来客を知らせる呼び鈴が鳴る。出迎えた霞美が連れて来たのはめぐみと姫愛の二人だった。偶然門の前で会ったらしい。もちろんのことながら雷華と雷茅も一緒だ。

 霞美は姫愛と共にやってきた雷華と雷茅を見て一瞬表情を変えたが、それだけだ。今は問い詰める時ではないと霞美は事情を知るであろう晴彦に話を聞くことを決める。


「おはようございます。すみません、遅かったみたいで」

「おはようございます。私も遅かったようですわね」

「時間通りよ。気にしないで。それよりもこれで全員揃ったわね。それじゃあ、出発……の前に今日の予定について話しておきましょうか」

「予定ですか?」

「えぇ。無計画のまま行くわけにはいかないでしょう。この冊子に予定が書いてあるわ」


 そう言って雫は奏と共に一夜漬けで作り直した冊子を皆に渡すのだった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は4月4日21時を予定しています。

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