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第104話 旅行前日

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 秋穂が仕事に戻ってからさらに数日経ち、八月某日。あれよあれよという間に零音達は旅行の前日を迎えていた。

 旅行前日という期待に胸を膨らませるはずの一日。しかし零音は旅行にワクワクするよりも先にしなければいけないことがあった。

 それは——


「ハル君、雪ちゃんも……まだ半分残ってるけど?」

「うぅ……もう無理だぁ」

「もうペン持ちたくなぁーい」


 晴彦と雪の宿題を終わらせることである。ちなみに零音はすでに宿題を終えている。本来ならば零音と一緒に宿題をしている晴彦も終わっていなければおかしいのだが、いかんせん晴彦の宿題の進みは亀のように遅かった。


「二人とも大丈夫? もし疲れたなら少し休憩を」

「めぐみ、二人を甘やかさないで。宿題を終わらせるのが条件の一つなんだから、ここで休ませても意味ないでしょ」

「そうだけど……でも、疲れたままやってても進まないんじゃないかな」


 零音だけでは面倒を見きれないかもしれないからということで呼ばれていためぐみがそれとなくフォローを入れる。実際、めぐみが大丈夫かと疑ってしまうほどに晴彦と雪はグロッキーになっていた。

 めぐみが味方についたのをいいことに、晴彦と雪はキュピンと目を輝かせて猛然と反論する。


「そうだそうだ! このままやってても逆に効率悪いぞ! 休憩を、俺達に休憩時間をよこせ!」

「そうだよ! このままじゃ疲れ果てて体調崩して旅行に行けないなんてことになっちゃうかもしれないじゃん! それは本末転倒ってやつだよ!」


 ここぞとばかりに文句を言う晴彦と雪。しかし二人がどれだけ言葉を重ねようとも零音はピクリとも表情を動かさなかった。今ここにいるのは晴彦の幼なじみでも、ゲーム世界へとTS転生してきた仲間でもない。ただただ宿題を終わらせるということのみを考える悪魔である。

 疲れた、休ませろと主張する二人の目の前に零音はあるものを置く。


「おいこれ……もしかして……」

「うん、エナジードリンク」

「えーとレイちゃん、これってつまり……」

「疲れたんでしょ。だからこれ飲んで頑張って」

「いやでも……」

「大丈夫。エナジードリンクはまだまだいっぱいあるから!」


 そう言って零音は二人の前にエナジードリンクを山のように積む。それを見た晴彦と雪は冷や汗を流す。


「これだけあればきっと疲れなんて吹き飛ぶよね。さ、飲んで? 遠慮せずに」


 こんな場でなければ見惚れてしまうような綺麗な笑みで零音は言う。しかし晴彦と雪にはその笑みが悪魔の微笑にしか見えない。なにより、このエナジードリンクの山が零音の本気を示していた。

 お前達が休んでる暇なんてあると思うなよ、という零音の意思を。


「だ、ダメだ……雪さん、零音のやつ本気だ」

「だね。かつてないほど本気の波動を感じるよ。こうなったら……」

「こうなったら?」

「逃げる!」


 零音は雪の向かいに座っていた。そして雪の後ろには扉がある。零音と雪の運動神経の差を考えれば雪の本気に零音が追い付ける道理はない。もちろん、逃げた先に未来などない。待っているのは結局地獄だ。しかし今の地獄、逃げるも地獄なら雪は今の楽をとる。晴彦を犠牲に逃げる決意を雪は固めていた。


「甘い」

「っ!?」


 だが、そんな雪の考えすらも零音の掌の上だった。


「なんでレイちゃんが扉に!? さっきまでそこにいたはずなのに!」

「残像よ」

「いつからレイちゃんは忍者になったのさ!」


 しかし、零音によって逃げ道が封じられてしまったのは紛れもない事実。そして逃走に失敗してしまった今、雪に待っているのはさらなる地獄であることは間違いなかった。


「さて、どうなるか……わかってるよね?」

「ひっ……」


 ゴゴゴゴゴ、と零音の放つ圧力が増していく。


「お仕置き(宿題)の時間だよ」

「ひぁいあああああああっっ!!」


 その後、零音の部屋の中から雪の悲鳴が止むことは無かったという。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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Twitterのフォローなんかもしてくれると嬉しいです。

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は3月18日21時を予定しています。

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