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第86話 占い 雪編

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 占い屋へとやって来た零音達は、不可思議な占い師の占いを受けることとなった。一番最初に占われることになった雪は、別室へと案内されていた。


「へー、ここが占う場所なんだ」


 雪が連れて来られた部屋の中は薄暗く、部屋の隅には蝋燭を模した灯りが置かれていた。天井はプラネタリウムを使っているのか、星のような光がちりばめられていた。


「蝋燭は本物じゃないんだね」

「あはは、もし壁に火が燃え写ったりしたら困るからね。この部屋も雰囲気づくりのためさ。こういう部屋の方がらしいだろう?」

「たしかに。ちょっとぽいかも」

「私は正真正銘占い師ではあるんだけどね。信憑性というものは部屋の雰囲気から生まれるものでもあるんだよ。そして少しでも占い師だと信じてもらえれば、相手の心を引き出しやすい。私にとっては心が見やすくなるんだ」

「言ってることよくわかんないけど……そういうもんなんだ」

「そうだよ。スポーツだって形から入るのが大事だったりするでしょう?」

「確かに。でもさ、アタシにそんなこと言っていいの? 一応お客さんなんだけど。そんなこと言われると変に警戒して心開けなくなっちゃうかも」

「それこそ大丈夫だよ。君はもうすでに私のことを信用しかけてるから。それに君は下手に誤魔化されるのは嫌いだろう?」

「まぁ確かに嫌いかも。なんか見透かされてるみたいで気持ち悪いなー」

「あはは! 他人の心を見抜き、そしてその人が知らない未来までも視る。それが占い師だからね。さ、友達も待たせてるし早く始めようか。それじゃあ座って」

「はーい」


 占い師と机を挟んで向かい合うようにして座る雪。机の上には手のひらに乗るようなサイズの水晶が置かれていた。


「これで占うの?」

「あぁ、そうだよ。これが今回君の未来を占うアイテムだ」

「へぇー。毎回思うんだけど水晶で何見てるわけ? 全然わかんないんだけど」

「それは企業秘密さ。さぁそれじゃあ君の名前と年齢を教えて。この水晶をジッと見ながら、意識を集中させてね」

「わかったー」


 雪は占い師の言う通り水晶に意識を集中させる。不思議な輝きを放つ水晶を見ていると、吸い込まれるような不思議な感覚に襲われた。


「アタシの名前は夕森雪。年齢は今年で十六歳になる」

「ふんふん。趣味は何かな?」

「うーん、動くこと……スポーツかな。運動が好きだから」

「好きな食べ物は?」

「好きな食べ物? なんだろ……改めて聞かれると無いかも。強いて言うなら果物系が好きかな。毎日食べるようにしてる」

「なるほどね。それじゃあ逆に嫌いな食べ物は?」

「油っぽいもの……って、ねぇこれ占いと関係あるの?」

「もちろん。君が素直に答えてくれればくれるほどに水晶は君の未来と過去を正確に読み取る。そして水晶が映し出すものを視るのが私の役目さ」

「ふーんそうなんだ」

「もう大体見えてきたよ。まずは君の過去から」

「過去? それって聞いて意味あるの?」


 もう過ぎ去ってしまった事象に過ぎない過去を聞くことに意味はあるのかと問いかける雪。それを聞いて占い師はもちろん、と頷く。


「過去を正しく知ることは大事だよ。過去は全ての起源。これから先の未来も全て過去に起因するものになるんだから。今回私が君に伝える過去は、人生を変えるターニングポイントとなったこと。それを改めて認識しておこう」

「アタシの人生のターニングポイント?」

「君のターニングポイントは二つ。君、昔は相当やさぐれてたみたいだね」

「えぇ。そんなことないはずだけど」

「いいや。君は思い当たる節があるはずだよ。もっと前ずっと昔。君が君になる前のことを……」

「っ! お前——」


 ガタッと椅子を蹴り倒して立ち上がる雪。その目には動揺と不審が浮かんでいた。


「おっと勘違いしないで欲しい。私は視たものをそのまま伝えてるだけ。君が、君達がどんな存在かなんて関係ないのさ。私はただ占うだけ」

「…………」

「それで、その様子だと思い当たる節があったみたいだね」

「……まぁね。本当にずっと昔の話だけど」


 納得いかない、という表情を浮かべながらも椅子に座り直す雪。

 しかし占い師の言う通り、思い当たる節があった。雪が『夕森雪』になる前、つまり元の世界に居た頃の話だ。その頃が確かにやさぐれていた時期もあった。


「そんな君を変えた存在がいる。それは君にとって命よりも大事な存在」

「…………」

「これも正解かな」


 その通りだった。雪にとって命よりも大事な存在。それはたった一人弟だけだ。弟の存在が雪を変え立ち直らせてくれた。


「そして二度目の大きな変化を経て、君は君になった。なるほど数奇な運命だね。こんな人は珍しい」

「……だったら?」

「そう怒らないで。それじゃあ過去を振り返ったところで、未来について教えよう」

「…………」

「君に示された未来は三つ。『決断』『再会』そして『別れ』」

「なにそれどういうこと?」

「さぁね。詳しいことまでは私にもわからないよ。でも……そう遠くない未来。君は何か『決断』を迫られるだろう。そしてそれが『再会』と『別れ』をもたらす」

「意味わかんない」

「今はそうだろうね。そしてそんな君にアドバイス。『友人』を大切にするといい。そうすればきっと後悔の少ない未来が待っているだろうね」

「そこは後悔の無い、って言い切って欲しい所だけど」

「はは、後悔の無い人生なんて存在しないさ。あるのはいかに後悔を少なくするか。それだけだよ」

「なるほどね……まぁアタシの中であんたは一気に胡散臭い人になったわけだけど」

「これは手厳しい。ま、占い師なんてそんなものさ。気に入られもすれば、嫌われもする。嫌われる方が多いかな。でもきっといつか、君はこのことを思い出すはずさ」

「……どーだかね」

「さ、それじゃあ君の占いはここまでだ。次の人を呼んできてくれると助かるな」

「はいはい。わかったよ」

「君の未来に幸多からんことを」

「……ふん」


 占い師の言葉に返事をせず雪は部屋を後にするのだった。


皆さんは占いは信じる派ですか? 私は信じる派です。結果の良いモノだけですが。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は1月15日21時を予定しています。

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