第80話 零音達の水着選び 5
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「言っとくけど、私達は変な水着なんて選んでないからね」
「変な水着ってなにさー」
「紐の水着が変な水着じゃなかったら何が変な水着なのよ」
「スク水?」
「スク水は……変ってわけじゃないけど。選んだ人が変だっただけよ」
「ちょっと、それ私のこと? スク水と私を馬鹿にしたら酷い目に遭うわよ」
「スク水のことはバカにしてません。しいて言うなら先輩のことだけを馬鹿にしてます」
「それならいい……わけないでしょ!」
「先輩がスク水を選んでくるような残念思考じゃなければ馬鹿にはしませんでしたよ」
「スク水は残念なんかじゃないわよ。見て見なさい、この完璧なフォルムを。汚れ一つ無い白色、まるでとろけるような肌触り、吸水性、耐水性、全てに優れた完璧な美しさ。これが最上の水着でなくてなんだと言うの!」
「スク水のことを熱弁しないでください! とにかく、先輩がスク水至上主義でも雪が紐水着選ぶ変態痴女でもなんでもいいですけど、私達はフツーの水着選んだんでそれだけパパっと見ちゃってください」
「ちょ、アタシは紐水着着るわけじゃないから! 変態痴女なんかじゃないからね!」
「私達紐水着着せようとするような人は変態痴女で十分です。とにかく、まずは雪の水着から出しますね」
「むっかぁ。相当いい水着じゃないと認めてあげないからね」
「少なくとも、紐とスク水よりはまともだから」
そう言って零音とめぐみは雪に選んだ水着を取り出す。
「私達が選んだのはワンショルダータイプのビキニだよ」
「へぇ、こんなのあるんだ」
「こういうの持ってないでしょ?」
「うん。持ってない。普通のビキニなら持ってるんだけど、こういうタイプは買ったことないなぁ」
零音達が選んだワンショルダービキニとは、片方の肩だけ露出したデザインの水着である。その中でも零音達は可愛らしさを重視し、ワンショルダーの部分がフリルになっているものを選んでいた。
「ピンクとかはさすがに狙いすぎだから、水色の単色。でも肩部分のフリルがあるから十分に可愛く見える。こういうタイプの水着だから、泳ぐとかにはあんまり向いてないけどね。こういうのもありなんじゃないかなって思ったの」
「確かに可愛いじゃん。でも……普通だね」
「だから普通だって言ったでしょ」
「ごめんごめん! でも可愛いって思ったのは本当だし、気に入ったよこれ」
「なら良いんだけど。気に入ってくれたなら選んだかいがあるし」
「うん、私も選んでよかった」
「ありがとねレイちゃん、めぐちゃん」
「驚いた。あなた達本当に真面目に選んだのね」
「だからそう言ったじゃないですか」
「まぁ、あなた達なら真面目に選ぶだろうってことはわかってたんだけど」
「あ、もしかしてだからスク水なんて持ってきたんですか?」
「? 何言ってるの? スク水は本気に決まってるじゃない」
「……そうですか」
「とにかく、これなら私も期待して良さそうね」
「もちろん先輩のも真面目に選びましたけど……スク水ではないですよ?」
「それはそれ、これはこれよ。後輩であるあなた達がどんな水着を持ってきたのか、楽しみにしてるわ」
「期待にはそえると思います。ちゃんと選びましたから」
「私達が選んだのはこれです」
「……これ?」
零音とめぐみが取り出したのはとてもシンプルな黒色のビキニだった。もちろん、雫の美しさを引き立たせるという点でシンプルな水着というのはこれ以上ないほどの答えではあるのだが、雫からすれば肩透かし感があるのは否めない。
「ふっふっふ、なんとこれはですね」
「リバーシブルになってるんです!」
めぐみがくるりと水着をひっくり返すと、シンプルな黒の水着から一転、花柄の入った可愛らしい水着へと変化した。
「自分のタイミングに応じて好きな方を選べる。そんな水着なんですよ」
「こんなものが……水着って色んな種類があるのね」
「あと先輩にはこれもどうぞ」
「? これは?」
「パレオです。腰に巻くやつですよ。きっと先輩には似合うと思いましてチラリズムってやつですよね。見えてるよりも隠れてる方が、チラッと見える方がいいっていう。ちょっと透けてる奴なんでなおのことグッドって感じです。ハル君もこういう感じの好きですし」
「チラリズム……なるほどね。さすがね零音。男心……晴彦の好きなものは十分に心得ているというわけね」
「え?」
「いままさにあなたが言ったことでしょう。晴彦もこういう感じが好きだって。つまり、あなたが選んだのはましく晴彦が好きな水着ってことじゃない」
「え、あ……あぁ!」
ようやくその事実に思い至ったのか、零音は思わず声を上げる。零音は元々雪や雫の水着をそこまで本気で選ぶつもりはなかった。ましてや晴彦の好みの水着を選ぶような、敵に塩を送るような真似をするつもりはなかったのだ。しかし選んでいるうちに零音はそんなことをすっかり忘れて、本気で選んでしまったのだ。
「まぁそういうところもレイちゃんらしいよね。ところでさ、めぐちゃんとレイちゃんはどんな水着なの?」
「あぁ、実は私達はまだ選べてないんだよね。二人の水着選んでたら時間になっちゃったから」
「あ、そうなんだ。じゃあさ。今度はお礼にアタシ達が二人の水着選んであげる」
「え、いいって。絶対また変なの選ぶし」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと選ぶから」
「そうね。今度は真面目に選んであげるわ」
「えー……」
「いいじゃない零音ちゃん。私達が選んでないのは事実なんだし、色んな人の意見聞いた方がいい水着選べるよ」
「めぐみがそう言うなら……絶対に変なの選ばないでね」
「ふふん、リアルJK雪ちゃんに任せるのだ!」
「その頭言葉が不安を煽ってくるんだけど……」
「そういえば、全員発表したわけだけどゲームの結果はどうなるのかしら」
「あ、そういえば決めてなかったね。まぁでもレイちゃん達の勝ちでいいんじゃない? 会長もそれでいいでしょ」
「まぁ異論はないわね」
「そんな適当な……」
「まぁノリではじめたゲームだしね。それよりも今はレイちゃん達の水着だよ。さぁ全力で選んでいくよー!」
こうして雪が始めたゲームは有耶無耶なままに終わり、零音達は雪に引っ張られて水着を選びに戻るのだった。
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次回投稿は12月14日21時を予定しています。