閑話 放課後デート 雫視点
最近になってようやくキャラの性格が決まってきた気がします。決めてたんですけどね?
これからちゃんとぶれないように気を付けていきたいです。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
昼休み。ボクは生徒会室で仕事をしていた。学期はまだ始まったばかりとはいえ仕事はたくさんある。
「はぁ、ホントはもっと人手が欲しいんですがね」
無いものを嘆いてもしょうがないと知りつつ、つい願望が口からこぼれる。
これなら彼女達を本格的に生徒会に勧誘しても良かったかもしれない。いや、それだとシナリオが崩れるからダメですね。
「もう少しすれば仕事も落ち着きますし、それまでの辛抱ですね」
机の上にある書類の束を見ながら気合を入れる。この手の仕事は元の世界にいた時からしていますし、慣れてますけど。
スラスラとペンを走らせていると、遠くから誰かが近づいてくる音が聞こえる。
この階はほとんど生徒会役員しか使わない。誰か来たんでしょうか?
その人は部屋の前で止まると、ドアをノックしてくる。
「誰かしら?」
『昼ヶ谷雫』としての仮面を被って対応する。せっかく一人でリラックスしながら仕事をしていたというのに誰なんでしょう。
「朝道です」
朝道さん? 一体何の用だろうか。少なくとも今の段階で何かあったとは思えないんだけど。
「入ってもらって大丈夫だよ」
相手が朝道さんなら『昼ヶ谷雫』の仮面はいらない。代わりに『同じ世界に来たもの同士』としての仮面をつける。
「どうかしたのかい?」
「緊急事態があったんです」
「緊急事態?」
確かに朝道さんは何か焦った様子だけど。まさかシナリオに関わるようなことがあったんだろうか。
「なにがあったんだい?」
「詳しい話は後でします。放課後に下駄箱で待ってますので。すいません、今はこれで失礼します」
「あ、ちょっと」
しかし彼女は言うだけ言って帰ってしまう。
いきなり緊急事態と言われても……でももし本当なら対処しないといけないかもしれないし。
「はぁ、しょうがないですね」
放課後と分割して終わらせようと思ってましたけど、昼休みで終わらせることにしましょう。はぁ、また時間ギリギリになりそうです。
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放課後。下駄箱に一年生の下駄箱に向かうと、朝道さんが物陰に隠れていた。
「……何してるんだい?」
「静かにしてください……あそこです」
「あそこ?」
朝道さんの指した方向を見ると、そこには夕森さんと晴彦がいた。
「あれがどうしたんだい?」
「緊急事態だって言ったじゃないですか」
「……はい?」
夕森さんと晴彦が二人でいることが緊急事態?
でもボクの記憶が正しければこのタイミングで二人で出かけるのはシナリオにもあったことのはず。選択肢で朝道さんか夕森さんかを選ぶイベントがあったはずなんですが。
「でも、あれは選択肢の結果だよね?」
「そうです」
「じゃあ一体何が緊急事態なんだい?」
「あれは嘘です」
「嘘って……ボクもそんなに暇じゃないんだけど」
「完全に嘘じゃないですよ。夕森が晴彦に何するかわからないですし」
「そんなに変なことはしないと思うけど」
「わからないじゃないですか。警戒はするに越したことはありません」
夕森さんが何かするとは思えないんですけどね。彼女の中ではそうではないみたいだ。
そういう思考になる彼女の方が危ない気がする。
「とりあえずここまで来たんだし後をつけましょう」
「……はぁ、まぁしょうがないね」
晴彦たちが出ていくのを確認してボク達は学校を出た。
電車に乗って移動する晴彦達を追って僕達も電車に乗ったわけだけど……気まずい。
そもそもボクはあんまりコミュニケーションが得意じゃないし。元の世界でも友達と呼べる人はいなかった。
「あー。朝道さんはこの世界にきてからずっと晴彦と一緒だったんだよね」
「はい。生まれた時から一緒でした」
「へぇ、じゃあ子供の時の彼を知ってるわけだ」
「そうですけど……それがどうかしたんですか?」
「いや……そうだな、何か面白いことがあったりしたかい?」
「……特にないですね」
「そう」
いや、わかってるよ。ボクもなんでこんなこと聞いたのかわかってないんだ。気まずかっただけだから。だからなんでそんなこと聞くんだ? みたいな目で見ないで欲しい。
あぁ、もうだから人と一緒にいるのは嫌なんだけどなぁ。ボクは一人で動きたい派です。
「あ、降りるみたいですよ」
助かった。本当に助かりました。
晴彦達はショッピングモールにやって来たみたいですね。ゲームのイベントでもやってきていた場所だし、どうやらイベントの流れはそのままに行うみたいですね。まぁその方が間違いがないでしょうし。
「このまま後つけるのかい?」
「もちろんです」
「はぁ」
迷いなく追いかけていく朝道さんの後をボクも追いかける。
晴彦達が雑貨屋に入ったのを見てからボク達も入った。
二人は雑貨屋の中にあるものを物色しながら何かを話してる。
「うん、なかなかに良い雰囲気だね。これはボクも負けてられないかな」
「…………」
「どうかしたのかい?」
「いえ、なんでも」
今何かすごく不穏な空気を感じたきがしたんだけど……気のせいでしょうか。
「あの二人が何を見てるかわかりますか?」
「あれかい? あれは『返り血うさぎ』だよ。あのシリーズはすごく人気でね。現在第三期を放送してるんだ。食物連鎖への逆襲をテーマなんだけど、それだけじゃないんだ。仲間との友情、大切にするべきことはなんなのか。色んなことを教えてくれる素晴らしい作品なんだ。ボクは特に主人公のライバルキャラの『皇帝うさぎ』なんだけどね。彼は優しいんだけどそれを素直に表現できないひねくれた性格をしていてね、それで」
「いや、何かがわかればいいです」
「……そうかい?」
残念ですね。『返り血うさぎ』は好きな作品だからまだまだ語りたいことがあったのに。
不意に朝道さんが歩き出す。
「朝道さん、どこに行くんだい?」
「少し試したいことがあります」
そう言って向かうのは晴彦達のいる方向。
「朝道さん!?」
ここであの二人に接触したら確実にイベントの内容が変化する。
一体何を考えているのか。
しかし、
「お客様、何かお探しですか?」
「っ!?」
不意に店員が朝道さんに声を掛ける。
妙ですね。さっきまで店員は離れていたはずなのに。
「いえ、大丈夫です」
「あ、こちらの商品はいかがですか? 最近この店でよく売れてるんですよ。あ、それにこちらの商品も——」
しかし、それでも店員は朝道さんから離れようとしない。
これは……邪魔してるんでしょうか。
朝道さんが店員につかまっているいる間に晴彦達は店から出ていってしまう。
店員が朝道さんを解放したのはその少し後。まるで晴彦達が出ていくのを見計らっていたいたかのように。
「っ、なんなんですかあの店員は」
「故意に邪魔してるように見えたけどね」
「……やっぱりそういうことですか?」
「まだ確信はないけどね」
考えられるのは、この世界のゲームとしての影響力。まぁ、まだ確証ではないですけど。可能性は高いと思うんですけどね。
「もう一度試します」
そう言って朝道さんは再び二人に近づこうとする。
しかし、今度は大量のお客さんに道を塞がれる。
「セールよセール! 急がないと売り切れちゃうわ!」
「ちょっと、邪魔よあんた達!」
「うるさいわね、あんたこそ邪魔よ!」
そのお客さんの群れが過ぎ去った時にはすでに晴彦達は遠く離れていた。
「うん、これで間違いないかな」
「そういうことなんですね」
「ゲームの強制力だろうね。この世界にもそういうのがあるみたいだ」
ゲームの強制力なのか、イベントの進行の邪魔はできないみたいですね。まぁそれはボクにも有利に働くかもしれませんね。覚えておきましょう。
「二人の行った場所はわかりますか?」
「ゲームだったらペットショップだったね。まだ行くのかい?」
「……一応行きます」
晴彦達を追って僕達もペットショップに来たわけなんですけど……朝道さんがペットショップに入ろうとしない。
「どうかした?」
「……動物は苦手なんです」
「珍しいね。どうして?」
「嫌いじゃないんですけど……昔からよく吠えられたりして。でも行きます。大丈夫です」
朝道さんが意を決したように足を踏み入れる。
瞬間、ペットショップの中にいた動物が威嚇するように唸り始めた。
「……ほんとだね」
「だから言ったじゃないですか」
晴彦達は犬のゾーンから離れて鳥のゾーンに行っていた。
心なしか、さっきまでよりも距離感が近い気がする。
順調に距離を詰めているようですね。
「楽しそうだね」
「……っ」
ゾワッとする。一瞬、黒い雰囲気を朝道さんが出したような気がした。
途端に、威嚇していた動物達が吠え始める。
これはまずい気がしますね。いくらこちらが手だしできないといっても、向こうに気付かれればその限りではないかもしれない。
「……気付いてない?」
二人がこっちに来る様子はない。なら早くこの場から離れましょう。
これ以上ここにいるのはまずいです。
二人をジッと見ている朝道さんの手を引き、ペットショップから離れる。
「ちょっと、何するんですか」
「それはこっちが言いたいことなんだけど……これ以上は危ないと思うよ」
「でも……」
「ここにいてもボク達が何かできるわけでもない。彼女も別になにかしようとしてるわけじゃない。なら、ボク達がここにいる理由もないだろう」
「……わかりました」
はぁ、なんとか納得してくれたみたいですね……朝道さんにこれ以上変な行動されると困りますし、ここが潮時でしょう。
今回はイレギュラーなことでしたが、まぁいくつかわかったこともありますし、良しとしましょう。
「朝道さん。こんなことはこれっきりにしてね」
「わかってます」
「黙ってするのもダメからね」
「…………」
「ダメだからね!?」
「大丈夫です」
心配だ。大丈夫なんでしょうか。まぁ、めったなことはしないと思う……思いたいですけど。
「まぁ、とりあえず帰ろうか」
「はい」
はぁ、なんかどっと疲れた気がします。ただでさえ昼休みにいっぱい仕事してたのに。
こんなことはもうしないようにしましょう。
ボクの時にされても面倒ですしね。
家に帰ってから食べる甘い物の事を考えながら、ボクは家に帰った。
放課後デートの裏話です。
余裕がなくて話が急になってしまったのが反省点ですね。
次から気を付けます。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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それではまた次回もよろしくお願いします!
次回投稿は8月25日9時を予定しています。