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第66話 それぞれの夏休み 雪編

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「あっついなぁ……」


 部屋で一人雪は天井を仰いだ。その額には汗が滲み、誰もいないからと薄着の服は汗で濡れて肌にピッタリと張り付いている。


「七月とかまだそこまで暑いイメージ無かったんだけどな……ってこれ毎年言ってるか。エアコンつけないと完全にアウトな暑さだけど、エアコンあんまり好きじゃないし……」


 窓を全開にして扇風機でしのいでいる雪だったが、八月に近づけば近づくほどに扇風機だけでは厳しい暑さになっていた。


「朝の運動もいつもより早い時間にしないと。暑くなってきてから始めてたらそれこそ熱中症で倒れそうだしなぁ」


 窓から見える燦燦と輝く太陽を憎々しい目で見つめながら雪は呟く。この太陽の下では下手に運動をするだけ危ない。

 室内の気温はすでに30度を超えようとしており、さすがの雪も動く気にはなれなかった。

 いっそ出かけて涼んでこようかと思っていると、階下から雪を呼ぶ声がする。


「雪ちゃーん、鈴ちゃんが遊びに来てるわよー!」

「え、鈴が? 何のようだろ。わかったー、すぐ行くー!」


 一瞬着替えるべきかと悩んだ雪だったが、鈴が相手ならいいかとそのまま行くことにする。雪が玄関に向かうと、そこには麦わら帽子を被って白色のワンピースを着ているいかにも夏らしいスタイルの鈴がいた。


「おはよーっていうか、もうこんにちはの時間かな。どうしたの急に」

「あ、おはよう雪ちゃ——ってぇ!? なんて恰好してるの!」

「え?」

「え? じゃないよ! 下着見えてるし、はだけてるし!」

「あー、だって暑かったからさぁ」


 今の雪は暑さのあまり、限界まで薄着にしている。肌着もまくり上げてお腹が見えている状態な上に汗で肌着が透けているため下着も完全に見えている。丈の短いホットパンツはシミ一つ無い雪の健康的な素足を惜しげもなくさらしていた。痴女と言われてもおかしくないような恰好をしていた。


「暑かったからじゃないよぉ! もし宅配の人とか来たらどうするの!」

「いや、宅配はママが出るし……」

「そういう問題じゃないでしょ。ほら、早く部屋に戻って服着てきて。話はそれから!」

「もう。わかったわかった。しょうがないなぁ」


 服を着るということに対して一切気乗りしない雪だったが、顔を真っ赤にした鈴に背中を押されて部屋に戻される。仕方なく服を着替えた雪は改めて鈴のことを出迎える。


「これでいい?」

「……うん。さっきよりはマシだけど。ダメだよ雪ちゃん。女の子なんだからあんなだらしない恰好はノー、圧倒的にノーです!」

「そうはいうけどさぁ。暑いから。むしろ裸でいたいくらい」

「それこそ絶対にダメ! 確かに暑いのはわかるけど……まだ八月にもなってないのに今からこれじゃあ先が思いやられるよ」

「アタシもそう思う。これ以上暑くなるようなら」

「暑くなるようなら?」

「裸族として過ごす」

「だからダメだってば! だったらもうエアコンつけたらいいじゃない。あるんでしょ?」

「パパとかママにも言われるんだけどねぇ。アタシ、エアコンあんまり好きじゃないから」

「あー。そういえばそうだったね。でもそんなこと言ってられないよ?」

「そうなんだよねぇ。これ以上になると部屋の中でも熱中症とかになりかねないし」


 元の世界にいた頃、エアコンが苦手だった弟に合わせていたせいか気付けば雪自信もエアコンが苦手になっていた。しかしこの暑さではそうも言っていられない。


「しょうがないかなぁ。わかった。これからはちゃんと使うようにするよ」

「それと、ちゃんと服も着てね」

「はいはい。わかってまーす。ってそうだ。結局鈴ちゃん何しに来たの?」


 部屋のエアコンの電源を入れながら雪は問う。雪が来る予定など全くなかったのだ。


「あ、そうだった。これを渡しに来たの」

「? なにこれ?」

「私のお母さんがついこの間まで旅行に行ってたの。それでそのお土産」

「へぇ、っていうかおばさんこのタイミングで旅行に行ったんだ。鈴ちゃんも連れて夏休みに入ってから行けばよかったのに」

「夏休みに入ってからだとどこも人が多くなるから、その前にお父さんと二人で行きたかったんだって。全く、いい歳していつまでもイチャイチャするんだから」

「アタシの家もそうだけど、仲が良いのはいいことだと思うよ。仲が悪いよりもずっとね」

「そうだけど……でも、子供の前でまでは止めて欲しい」

「それは同意」

「お母さんがあなたにも彼氏ができたらわかるーとかって言うけど……どう思う?」

「え、アタシは……」


 そう言われて雪は想像する。自分に彼氏ができた時のことを。もちろん相手役として想像するのは晴彦だ。


(もし晴彦と付き合うことになったら……)


 いつも隙あらばくっついて、キスしてベタベタとくっついている雪の両親。そこに雪と晴彦の姿を当てはめる。


「~~~~~~~っ!」

「どうしたの雪ちゃん。顔が急に赤くなったけど……もしかして熱中症! 大丈夫!?」

「だ、大丈夫。大丈夫だから! なんでもないから!」


 雪は慌てて頭を振って自分のした想像を振り払う。


「ア、アタシもちょっと彼氏できた時のこととかわかんないなー。できたことないし」

「だよねー」

「とにかく、お土産ありがとね。アタシも何かお返ししないとなー」

「そんなの考えなくていいよ。って、雪ちゃん旅行行くの?」

「旅行っていったら旅行になるのかな? ほら、前に話したハルっちと、それからレイちゃんとあと会長とかと一緒にね。海に行こうって話を——」

「……聞いてない」

「え?」

「私そんなの聞いてない!」

「え、あ、いや。それはそうだけど……言ってなかったね、そういえば」

「私も行く!」

「えぇ!?」

「私も絶対に行くからね!」


 こうして、雪達の立てた旅行計画に鈴も加わることになったのだった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は10月23日21時を予定しています。

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