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第50話 放課後勉強会 4

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 雪が零音達の手によって新たなトラウマを植え付けられそうになっていたちょうどその頃、晴彦とめぐみもまた勉強をしていた。

 場所は晴彦宅だ。めぐみの家で、という案もあったのだがさすがにそれは晴彦が断った。さすがに急に女の子の家を訪ねるのは気が引けたからだ。だからといって晴彦の家というのもどうなのだという話だが、色々と話し合った結果晴彦の家に落ち着いてしまったのだ。

しかし急に二人で勉強をしろと言われても二人とも落ち着けるわけもなく、教科書を開いて勉強をしているもののそわそわとしてしまってどこか上の空だった。零音達の所とはまた違った気まずさが流れていたのである。そして、この二人の気まずさには晴彦の母親である秋穂も関係していた。

 時は遡ること三十分ほど前のこと、晴彦とめぐみが家にやってきた時のことだ。秋穂はめぐみの姿を見るなり目を輝かせて言い放った。


「まぁ、晴彦が零音ちゃん以外の女の子を連れてくるなんて! もしかして彼女?」


 そんな秋穂の言葉を顔を真っ赤にしながら否定するめぐみに脈を感じた秋穂はニヤリと表情を歪め、あれやこれやとちょっかいを出そうとしたのだがそれを晴彦が全力で締め出し、今に至るというわけなのだが……こうして二人で勉強している今も部屋の外で中の様子を伺っているのが晴彦にはわかっていた。


「あー……その、ごめんな井上さん」

「え?」

「さっきは母さんが急に変なこと言い出して。後でちゃんと言っておくから」

「う、ううん。そんな気にしなくていいよ。むしろその、楽しそうなお母さんでいいなって思ったし」

「そう言ってくれると助かるよ。あれ母さんの悪い癖でさ。あぁやって零音にもよくちょっかい出してるから。まぁ零音はもう慣れてるけどさ」

「あ、そっか零音ちゃんと日向君は幼なじみだもんね。会ったことあるよね」

「ま、もう十年以上の付き合いだからな、零音とは。家も隣だし」

「羨ましいなぁ……」

「羨ましい?」

「あ、ご、ごめん。わ、私幼なじみっていないから羨ましいなって思って。零音ちゃんとは幼稚園の頃から友達なんだよね」

「あぁそうだよ。幼稚園に入った頃から小学校、中学校、そして今、全部同じ学校だ。っていうか、もしかしたらクラスもずっと一緒かも」

「根っからの幼なじみってやつだね」

「そうだな。零音以外のも仲いい奴とかはいたりしたけど、別の学校行ってるし」

「ホントに小説とか漫画とかってレベルだね、日向君と零音ちゃんは」

「いや……あー、そうだな」


 ここは元々作られたゲームの世界だろ、という言葉が口をついて出そうになった晴彦だったが、それを寸前で押しとどめる。晴彦があった神を名乗る存在が言っていた。晴彦達の世界は『アメノシルベ』というゲームの世界を元にして作られたのだと。

 しかしそんなことは関係ないのだ。晴彦にとってこの世界は紛れもなく現実で、たとえどれほど仕組まれていたことであったとしても、それは本物なのだ。


「ホントに、びっくりするぐらいの偶然だよ」


 しみじみと呟く晴彦。たとえ仕組まれたものであったとしても、零音との思い出は晴彦にとってかけがえのないものだったのだから。どんな時も零音は晴彦の傍にいてくれたのだから。

 

「私も……日向君と幼なじみだったら……」


 そうして物思いにふけっていたせいか、晴彦は小さく呟いためぐみの言葉に気付くことはなかった。


「ううん。これからだよね。せ、せっかくのチャンスなんだしア、アプローチとかしなきゃ」


 過ぎてしまった過去よりも今だと気合を入れ直しためぐみは与えられた機会を生かすべく思い切って声をかける。


「そ、そうだ日向君。勉強でわからないこととかない? 私に教えれることなら教えるけど」

「そういえばそうだな。勉強しないと零音達に怒られる。でもなぁ、わからないところっていっても……」

「いっても?」

「ぶっちゃけ全部苦手なんだけど」

「えぇ……」


 この晴彦の言葉にはさすがのめぐみも笑顔を引きつらせる。ちなみに、晴彦の名誉のために言っておくならば、晴彦は頭が悪いわけではない。授業はそれなりに真面目に受けているし、理解もしている。しかしいざテストとなるとそれが発揮できないのだ。究極的に本番に弱いタイプなのだ。

 いつもは零音に支えられながら中の中程度の成績をとるのが晴彦の常である。


「授業だとわかるんだけど、その後がな。覚えてられないって言うか……テストになるとどうしても緊張するっていうか……零音には問題を数こなして解き慣れるしかないって言われたよ」


 大量の問題集を手に迫って来る零音の姿を思い出してブルっと身を震わせる晴彦。


「そうなんだ。でも、日向君の気持ち私もわかるよ。私もテストの本番の時ってすごく緊張するし。そうなっちゃったら解ける問題も解けないしね」


 めぐみ自身もテストの際緊張する性格であるから、晴彦の気持ちはよくわかる。


「ひ、日向君は……緊張しちゃうのが問題なんだよね」

「ん、まぁそうだな。普通にわからないってものあるけど。せめて緊張しなくなったら少しはマシになるかなとは思う」

「そ、それじゃあ、緊張を克服する練習を……してみる?」


 高鳴る鼓動を必死に抑えながら、めぐみは晴彦にそう提案するのだった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は8月28日21時を予定しています。

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