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第44話 波乱のお風呂 中編

この八月で本格的に投稿を始めてから一年が経ちました。あっという間のようで長かったような……まだ全然ストーリーも終わってないので、これからも一生懸命頑張ろうと思います! どうぞよろしくお願いします!


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 お風呂、それは多くの人にとって癒しの時間であるだろう。学校、仕事で疲れ切った体を労うように洗い、そして湯舟に使って疲れを吐き出すように息を吐く。まさに至高ともいえる時間だ。そしてそれは晴彦にとっても同じことだった。晴彦はお風呂に入るのが好きだ。湯船につかっているだけで嫌なことがあった日でもそれを忘れられる。そう思うくらいには風呂が好きだった。

 しかし、晴彦にとって癒しの時間であるお風呂の時間も今日ばかりはそうは言っていられなくなってしまった。むしろ、精神という観点から見れば最も疲弊するかもしれない時間を迎えてしまったのだ。


「…………」

「んしょ、んしょ、」

「服というものはなかなか慣れないです」


 雷華と雷茅と一緒にお風呂に入ることになった晴彦は脱衣所にいた。服を着たままお風呂に入れるはずもなく、晴彦も、そして雷華と雷茅も服を脱いでいる所だった。晴彦は二人に背を向けるようにして服を脱ぎ、急いで腰にタオルを巻いた。

 たかだか子供とお風呂に入るだけじゃないか、と何度も自分に言い聞かせる晴彦だったがそれで心が落ち着くはずもない。相手は子供でも女の子、なのだから。


(もしこれが零音にバレでもしたら……いや、うん。それは考えないでおこう)


 ふと脳裏をよぎった最悪の想像。それはもう恐怖などという言葉では言い表せないほどだ。ニコニコと笑っていない笑顔を浮かべる零音が包丁を片手ににじり寄って来るのが容易に想像できてしまった晴彦は頭を振ってその想像を追い払う。


(手早く、バレないうちに、全部終わらせよう)


「用意できたか?」

「はい、」

「できました」

「よし、それじゃ……っておい!」


 雷華と雷茅の言葉を聞いて振り返った晴彦だったが。そこには一糸まとわぬ二人の姿があって、晴彦は音速で顔を背ける。一瞬チラリと見えてしまった二人の肢体はすぐに記憶のメモリーから削除した。


「なんでタオル巻いてないんだよ。言っただろ」

「? お風呂とは、」

「裸で入るものではないのですか?」

「いや、普通ならそうなんだけど……」


 晴彦が慌てる理由を全く理解していない二人はキョトンとした表情で首を傾げる。しかし、少しして思い当たったのか鏡合わせのように同じタイミングでポン、と手を叩く雷華と雷茅。


「わかりました、」

「この体に欲情してしまうかもしれないと、」

「そういうことですね?」

「言い方を考えろよ!」


 あまりにもストレートといえばストレートな物言いに、晴彦は思わず声を荒げてしまう。


「しかし安心してください、」

「私達の体は未成熟なので、」

「あなたの好みである、」

「ボン、」

「キュッ、」

「ボン、」

「な体型からはかけ離れています」

「そういう問題じゃないからな!? あとなんで俺の好みの体型とか知ってんだよ」

「違うのですか?」

「ちが……うわけじゃないけど……あぁもうなんて言ったらいいんだよ」


 どうにも晴彦の言いたいことをちゃんと理解できていない雷華と雷茅。なんと言えばわかってもらえるのかと頭を悩ませた晴彦は、もう素直に言ってしまえと開き直る。


「あのな、確かにお前らは俺の好みの体型をしてるとか、俺が実は危ない思想の持主でしたとかそういうことはねーよ。でも、俺とお前らは兄妹ってわけでもない。言っちまえばただの赤の他人だ。普通ならこうやって一緒にお風呂に入ることだってあり得ないんだ。お前らが俺のことをどう思ってるかは知らないけど、俺にとってお前らは小さな女の子で、だからこそ好きでもない男に裸なんか見せちゃいけないって、俺はそう思ってんだよ」

「「…………」」

「あー、悪い。結局は俺の自己満足なんだ。お前らは気にしないって言うならそれでいいのかもしれない。でも俺がそれを認められないってだけの我儘だ」

「……いえ、そんなことはありません、」

「あなたの言いたことはなんとなくですが理解しました」


 完全にというわけではないが、晴彦の言いたいことはなんとなく理解した二人はバスタオルを手に取り、体を隠すように巻き付ける。


「これで大丈夫です、」

「ちゃんと体は隠しました」

「おう、ありがとな。それじゃあ入るか」

「はい、」

「待望のお風呂です」


 心なしか嬉しそうに見える雷華と雷茅はそのまま浴室のドアを開け放つ。

 晴彦の家のお風呂は比較的広い方だ。晴彦と同様、秋穂がお風呂好きであるということが日向家のお風呂が大きめである理由だ。つまり、三人で入っても十分なだけの広さが確保されているということだ。


「おぉ~、」

「これがお風呂なのですね」

「そんな大層なもんじゃないけどな。銭湯とかならもっと広いし。まぁこれでも普通よりは広いと思うけど」

「お風呂ではまず何をすればいいのでしょう、」

「湯舟ですか?、」

「それとも体を洗うのが先ですか?」

「まぁそうだな。一応は先に洗うべきだと思うけど」

「なるほど、」

「ではさっそく体を洗いましょう」


 さっそく体を洗おうとする雷華と雷茅だが、キョロキョロと周囲を見渡して困ったような顔をする。


「困りました雷茅、滝がありません」

「困りました雷華、滝がないですね」

「滝? なんで滝なんだよ」

「体を洗うのには、」

「滝を利用するのではないのですか?」

「いやそんなわけないだろ。っていうかおまえらホントに知識が偏ってるな」

「それは仕方のないことであると考えます、」

「私達はまだ生まれたばかりですから」

「生まれたばっかりって……何歳なんだよ」

「この世に顕現してからというならば、」

「まだ一ヶ月も経っていません」

「マジか」

「マジです、」

「私はお姉ちゃんの予備として生まれた存在、」

「本来なら外に出ることはないはずでしたが、」

「先日不測の事態が起きたために、」

「知識が定着する前に外に出ることになってしまったのです」

「不測の事態って……」


 雷華と雷茅の言う不足の事態、それは言うまでもなく霞美との一件のことだろう。それが原因で雷華と雷茅はこうして晴彦の元へとやって来ることになってしまったのだ。


「あー、その、なんだ。悪かったな……謝るのも変かもしれないけど」


 なんとなく謝罪の言葉が口をついて出てしまった晴彦だったが、もしあの事件を解決することができなければ晴彦はこうしてここにいることすらできなかったのだ。謝るというのも変かもしれないと感じた。


「いえ謝る必要はありません、」

「私達は外に出たかったのですから」

「そうなのか?」

「はい。ずっとずっと……、」

「私達は外に出たかったのです」

「……? まぁいいか。それじゃあシャワーの使い方から説明していくぞ」

「……はい、」

「わかりました」


 ずっと外に出たかったという雷華と雷茅に一瞬違和感を覚えた晴彦だったが、それは本当に一瞬のことで、すぐに雷華と雷茅はいつもの雰囲気に戻る。

 頭の片隅に引っかかるものを感じながらも、深く踏み込むことを拒否するかのような二人の雰囲気に晴彦は追及することを諦め、二人にお風呂の入り方の説明を始めるのだった。


最近になってようやくSNSに興味を持ち、Twitterに手を出し始めたのです。もしかしたらそっちで作品の宣伝をするかもしれないので、その時はまたご連絡させていただきます。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は8月7日21時を予定しています。

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