第32話 誕生日プレゼント
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
雷華と雷茅と共にパラキュアショーを見に来た晴彦。そのショッピングモールで晴彦は姫愛と出会うのだった。
「晴彦様、本当に晴彦様なのですね!」
晴彦のことを見つけた姫愛は満面の笑み浮かべて晴彦に近づいて来る。
「まさかこのような場所で晴彦様に会えるだなんて思いもしませんでしたわ」
「そんな大げさな……っていうかこっちこそ驚きだよ。姫愛でもこういう場所に来るんだな」
姫愛はお金持ちだ。勝手ながら晴彦は姫愛はこういう家族が一般家庭の人たちが集まるようなショッピングモールには来ることは無いと思っていたのだ。
「まぁそれは偏見というものですわ、と言いたいですけれど。恥ずかしながら晴彦様のおっしゃる通りこういった場所に来たことはなくて困っている所でしたの」
「そうなのか? 俺で良かったら手伝うけど」
「本当ですの!?」
「お、おう。困ってるのを見過ごすのもあれだしな。まぁ手伝えることなら、だけど」
「そう言っていただけるだけでわたくしは幸せ者ですわ。ではさっそくお聞きしたいのですけれど。晴彦様がファミレンジャー? というものをご存知でしょうか?」
「ファミレンジャー? あぁ、それなら知ってるけど」
ファミレンジャー。日曜日の朝にやっている戦隊モノだ。雷華と雷茅が見ていたパラキュアの前番組でもある。女の子はパラキュアを男の子はファミレンジャーを見ているだろう。しかしその名が姫愛の口から出てくるというのは意外だった。
「まぁ、流石晴彦様ですわ!」
「いや、そんなに持ち上げなくていいから……でも、そのファミレンジャーがどうしたんだ?」
「実はわたくしには今度五歳を迎える弟がいるのですが、誕生日プレゼントに欲しいものはないかと聞いたらファミレンジャーの変身アイテムの玩具なるものが欲しいと言われまして」
「あー、なるほどな」
姫愛の言葉を聞いてようやく得心がいった晴彦。確かにそれならば姫愛にわからなくても無理はないかもしれないと。明らかに姫愛はそういったものに疎そうだからだ。
「じいやに聞きましたらこのショッピングモールに案内されまして。これも訓練の一つとして一人で買いにくと言ったまでは良かったですが。このショッピングモールは目が回るほどに広く、わたくしでは見つけれそうになくて困っておりましたの」
「確かに慣れないとここはしんどいかもな。俺でもどこに何があるかまでは全部把握してるわけじゃないし。でも姫愛の言ってる奴ならたぶん俺でもわかる」
「まぁ、流石晴彦様ですわ!」
「だから大げさだって。それじゃあ案内するからついてきて」
「はい、わかりましたわ」
幸いにして姫愛の求めているファミレンジャーの変身アイテムの玩具が売っている玩具売り場は近い位置にあった。パラキュアショーが終わるまで暇だった晴彦にとっても時間潰しにちょうどよかったのだ。
「それにしても、姫愛の家でも戦隊モノとか見たりするんだな。姫愛も子供の頃は見てたりしたのか?」
「いえ、わたくしはあまりそういうのは見てませんでしたわ。ですが、弟はそういったものが好きなようでして」
「なるほどなー」
「晴彦様も幼少時はご覧になられたので?」
「そうだな。子供の時はよく見てたかも。あ、そういえば零音の奴はパラキュアみたいな女の子向けの奴よりも男の子が見るような戦隊モノばっかり見てたなー。だから一緒に戦隊ごっこして遊んだりして……って、どうしたん姫愛」
「むー……羨ましいですわ」
「羨ましい?」
「わたくしも晴彦様と一緒に戦隊モノごっこしたいですわ!」
「いやいや、してたのは子供の頃の話だからな! 今はもうしてないから!」
「う~~そうですけれど~~……」
晴彦と零音がしていたことをしていないというのが姫愛には相当悔しいらしい。姫愛が零音のことを目の敵にしているのは知っていたがこれほどだとは晴彦も思っていなかった。
「んー……この際だから聞くんだけどさ。姫愛と零音の間に何があったんだ? 少なくとも、中学の頃は今よりは仲良くしてたはずだろ」
「そ、それは……」
思い切って晴彦が問うと、姫愛が言いにくそうに目を逸らす。
「申し訳ないですけれど、今はまだ晴彦様にもお話できませんわ。これは……わたくしと朝道さんの問題ですから」
「……そうか。まぁ、無理には聞かないけど。ごめんな言いにくいこと聞いちゃって」
「いえ、悪いのはわたくしの方ですから」
「ま、まぁそれじゃあ気を取り直して弟君の誕生日プレゼントを買うか。もうすぐ着くからさ」
「あのここまで来てこのようなことを言うのは良くないとわかっているのですが、わたくしそれほどお金を持っていなくて。いくらぐらいするものなのでしょうか。やはり最低でも百万円はするようなものなのでしょうか」
「いやいやいや! そんなにしないから! 玩具だからね」
「そうなのですか? わたくし、そういったものの相場というのを知らなくて……お恥ずかしいですわ」
「知らないとかそういう問題でもない気がするけど。特に他意なく聞くんだけどさ、姫愛って苺の値段とか知ってる?」
「む、晴彦様もバカにしすぎですわ。それぐらいわたくしでも知ってます。確か……一粒五万円ほどですわね」
「いや違うから! そんなに高くないから!」
「え、そうなのですか? ですが以前苺を食べた際にメイドがそのぐらいの値段のものだと話していたのですが……」
「どんな苺食べてんのそれ!」
世の中には目玉が飛び出るような値段の苺がある。晴彦がまた一つ知らなくてもよいことを知った瞬間であった。
「はぁ……まぁとにかく心配しなくても玩具はそんなに高くないから。いや、俺達からしたら安いわけでもないけどさ。たぶん四千円くらいだと思うよ」
「まぁ、そんなにリーズナブルな価格ですのね。それならわたくしでも大丈夫そうですわ」
「リーズナブル……うん、まぁそうなのかな」
決して安い値段ではないのだが、姫愛の食べている苺の値段を聞いた後だと安く聞こえる不思議である。
その後、無事に目的の物を買えた姫愛は買ったばかりのおもちゃを大事そうに抱えて晴彦に礼を言った。
「本当に助かりましたわ晴彦様。もし晴彦様に会えていなければわたくしはこうして買うことすらできなかったはずですわ」
「だから大げさだって。姫愛なら俺がいなくても大丈夫だっただろうしな。でも役に立てたなら良かったよ」
「あの……もしよろしければお昼ご飯をご一緒にいかがですか? 丁度良い時間ですし。何かお礼させてくださいな」
「あー……その気持ちは嬉しいんだけど、今日はちょっと無理かな。今日は他の人と一緒に来てるからさ」
姫愛の申し出はありがたかったが、雷華と雷茅の二人と来ている晴彦はさすがに二人のことを無視して食事をするというわけにはいかなかった。
「もしかして……朝道さんと一緒に?」
「あぁいや。今日は違うよ」
「で、ではまさか他の女の子と!?」
「違う……とは言えないけど。親戚の子供だよ。いま屋上でやってるパラキュアショーを見てるんだよ。もうすぐしたら終わるだろうし迎えにいかないといけないんだ」
「そうですか……親戚の子と。それならば良いのですが。無理を言って申し訳ありませんでしたわ」
「こっちこそ。せっかく誘ってくれたのにごめんな。また機会があったら誘ってくれ」
「はい、もちろんですわ。それでは。また明日学校でお会いしましょう。今日のことは朝道さんには内密に」
「ん、あぁ別にいいけど……」
「ふふ、わたくしと晴彦様だけの秘密ですわ」
そう言って姫愛はいたずらっぽく笑って去っていく。そして晴彦もまた雷華と雷茅を迎えに行くのだった。
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次回投稿は6月26日21時を予定しています。