第31話 パラキュアショー
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花音達とケーキを食べに行ったその次の日、晴彦の姿は雨咲市から少し離れた場所にあるショッピングモールの中にあった。
しかしそれは一人ではない。雷華と雷茅の二人も一緒である。
「お店がいっぱいですー、」
「ですー」
「あ、おい走り回るなよ。危ないから」
様々な店が並んでいるのを見て目を輝かせる雷華と雷茅。晴彦は二人が走り回っているのを見て人にぶつからないように注意する。ピタッと動きを止めた二人はそのまま晴彦の所へと戻って来る。
「ごめんなさい、」
「少しテンションが上がってしまいました」
「わかってくれるならいいけど。今日は休みで人も多いから気を付けるようにな」
「「はーい」」
「それで、今日はなんの用があってここにきたんだ? 急に出かけたいなんて言い出して」
本当なら今日は家でのんびりとしていたかった晴彦だが、テレビに見入っていた雷華と雷茅が突然すくっと立ち上がり、出かけたいと言い出したのだ。最初は渋った晴彦だったが、出かけないと言った時に雷華と雷茅があまりにも悲しそうな顔をするせいで罪悪感を刺激され、結局こうして買い物に来ることになったのだ。
そして二人が行きたいと言い出したのがこのショッピングモールだったというわけだ。近くだと知り合いに見られる可能性もあったので、晴彦としては助かったのだが。
ショッピングモールは日曜日ということもあって人が多く、晴彦達もそこまで目立っているということはなかった。
「私達の今日の目的は、」
「これです!」
「これ?」
雷華と雷茅が指さしたのは一枚のポスターだった。そこに書かれていたのは、
「パラキュアショー?」
パラキュア。日曜日の朝に放送されている女児向けアニメ。今では大きなお友達も増えているという。そこで晴彦は思い出す。出かけると言い出す直前、二人が何を見ていたのかということを。
「もしかしてこのショーが見たかったからこのショッピングモールに来たいって言い出したのか?」
晴彦の言葉にブンブンと首を縦に振って肯定の意を示す二人。ポスターにはちょうどこの後、正午からショーが始まると書かれてあった。
「好きなのか……パラキュア」
「今日初めて見ました、」
「歌って踊って戦う姿に感銘を受けたのです」
「つまりハマったと……なるほどな。まぁ別にショーを見るくらい全然いいけど」
「ホントですか、」
「やりました!」
イェーイとハイタッチする雷華と雷茅。パラキュアのショーを見られることがよほど嬉しいらしい。
「ショーをやるのは屋上か……まだ少しだけ時間はあるけど、もう行っとくか?」
「行きます、」
「特等席をゲットです」
「いや、そこまで気合い入れなくても大丈夫だと思うけどな」
ふんす、とやる気を出す二人。ここまでテンションの高い二人を見るのは晴彦も初めてで、自分にも娘が出来たらこんな感じになるのだろうか、なんて少しだけ微笑ましい気持ちになった。
そして屋上にやって来た晴彦達はパラキュアショーの行われる場所へと向かう。その途中、パラキュアの物販がしてあるのを見て雷華と雷茅が足を止める。その目は明らかに並んでいる商品に向けられていた。
「欲しいのか?」
「そういうわけでは……、」
「ないわけではないですけど」
「はぁ、しょうがないな。一つずつだぞ」
「いいんですか、」
「ホントですね」
「こんなことで嘘言わないって。ほら、選んで来い」
雷華と雷茅は選んだのはペンライトだった。晴彦に買ってもらったペンライトを楽し気に振っている。といっても、周囲が明るいので光っているのはよくわからないが。そんな二人の様子を物販の店員と晴彦は笑顔で見る。
「ありがとうございます、」
「この恩は晴彦さんに素敵な彼女を見つけることで、」
「必ず返すと誓うのです」
「いや、それはいいから……」
「ところで晴彦さんも一緒に、」
「パラキュアショーを見ますか?」
「いや、俺はいいや。流石に高校生にもなって見に来てるやつなんていないだろうし……」
「あれ、日向じゃねーか」
「え? と、友澤!?」
「おう、友澤成男だけどよ。なんでそんなに驚いてんだよ」
「いやいや、なんでお前こんな所にいるんだよ」
「なんでって。ここに来る目的なんて一つしかないだろ。パラキュアショーだよパラキュアショー」
「お前……まさか大きなお友達ってやつなのか」
「ばっ、ちげーよ! 妹だよ妹! ほら、まりい。こっち来いって」
「え、なーに?」
友澤が声を掛けると物販の所にいた幼稚園くらいの小さな少女が駆け寄って来る。可愛らしいが、どこか友澤と似ている。兄妹だというのは間違いないのだろう。
「ホントに妹がいたのか」
「言ってなかったか。まぁ、今日はこいつのお守りを母さんに任されてな。パラキュアショーを見たいっていうから連れてきたんだよ。っていうかお前はなんでこんなとこにいんだよ。お前は妹とかいなかったよな?」
「うえぇ!? え、えーと……」
「まさか……お前。あれだけ朝道さんに好意を示されても付き合ったりしないのおかしいおかしいとは思ってたが……まさかロリ——」
「ちげぇよバカ!! そ、そう。従姉妹、従姉妹を連れてきたんだよ」
「従姉妹?」
「ほら、二人ともこの兄ちゃんに挨拶しろ」
「初めまして、」
「雷華と雷茅といいます、」
「兄さんがいつもお世話になってます」
「おー。お前従姉妹とかいたのか。礼儀正しい子だな」
「だろ? 今日ちょうど遊びに来ててな」
「なるほどな。そういうことだったのか。朝道さんは一緒じゃないのか?」
「いや、一緒じゃないけど」
「なんだよー。私服の朝道さんに会えると思ったのによー」
「なんだそれは」
「ねぇお兄ちゃん、早く行こうよー」
「あ、悪い悪い。それじゃあまた学校でなー」
「お、おう。またな……はぁ、助かった」
妹のまりいに手を引かれて歩いて行く友澤の背を見送った晴彦はホッと胸を撫でおろす。
「ありがとな二人とも、話合わせてくれて」
「いえこの程度、」
「造作もないことです」
「それじゃあ俺はまた終わるころにここに来るから。終わったらここで待っててくれるか?」
「了解です、」
「わかりました」
そして晴彦は雷華と雷茅の二人と分かれ、ショッピングモールの中へと戻った。パラキュアショーが始まるまではまだ時間があり、そこからショーの時間を考えれば一時間以上は空きがある。
「さて……どうするかな。ゲーム……はこの間買ったばっかりだし。本屋でも行くか?」
そう考えていた時だった。
「晴彦様?」
「え……って、姫愛?」
声を掛けられて振り返った先にいたのは、晴彦と同じように驚きの表情を浮かべた姫愛の姿だった。
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次回投稿は6月21日21時を予定しています。