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第26話 ツンツンツンデレタイプ

六月は私的用事で更新頻度が落ちるかもしれないです。


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 朝の修羅場をなんとか乗り越えた晴彦は、その後は何事もなく過ごし昼休みの時間を迎えていた。ご飯を食べ終わった後、晴彦は一人で飲み物を買いに自販機の所までやってきていた。


「はぁ、あいつら朝ごはん食べたらすぐにどっか行きやがって。まぁ別にいいけどさ」


 雷華と雷茅は晴彦が隠れて朝ごはんを部屋まで持っていき、それを食べた後に気付いたらいなくなっていた。その後から今に至るまで待ったく姿を見せていない。

 晴彦としてはそのままいなくなってもらっても構わないのだが、そう上手くいかないことはなんとなくわかっていた。いつだって世界は望む方向には進まないものなのだ。


「あいつらとは、」

「私達のことですか?」

「……ほらな」


 そんな晴彦の心を読んだかのように雷華達が晴彦の前に現れる。半ば予期していた晴彦はそれ見たことかと言わんばかりにため息を吐く。

 

「ほらな、とは、」

「どういうことですか?」

「なんでもない。こっちの話だよ。それよりも二人はどこに行ってたんだ?」

「少し用事があったので、」

「時間をいただいた次第です」

「用事?」

「はい、ですがもう大丈夫です、」

「ちゃんと終わらせてきましたので」

「? まぁ面倒なことになってないならそれでいいけどさ」

「もちろんです、」

「私達はあなたのサポート役、」

「迷惑をかけることなどありえません」

「いや、実際昨日と今日の朝迷惑かけられたんだが」

「「?」」

「……いや、なんでもない。それで、今は何か用があるのか?」

「あ、そうでした、」

「伝えなければならないことがあるのです」

「伝えないといけないこと?」

「もうすぐ選択の場面が訪れます、」

「心の準備をしておいてください」

「選択の場面って、どういう——」

「あ、日向先輩……です」


 晴彦が言いかけたその時だった。後ろから突然声を掛けられる。そこに立っていたのは、ものすごく嫌な人を見た、という顔をしている花音だった。


「桜木さん?」

「それ以外の誰に見えるっていうの、です」

「ごめんごめん。それよりもどうしてここに?」

「どうしてって、飲み物を買いに来たに決まってるじゃない、です」

「あ、そっか」

「それより先輩こそさっきから一人でぶつぶつなに喋ってるの? です」

「一人?」

「彼女には私の姿は見えてないです、」

「ですので安心してください」

「もしかして……先輩って妄想の友達と話すタイプの人? です」

「それは違う!」


 花音が可哀想な人を見る目で晴彦を見つめる。そんな勘違いをされてはたまらないので、晴彦は慌てて花音の言葉を否定する。二人の姿が見えないというのは良いことなのだが、それで変な勘違いをされたのでは元も子もない。

 

「まぁ別に先輩が可哀想な人でもそうでなくても別にどうでもいいんだけど、です」


 相変わらず晴彦には辛辣な花音であった。


「はぁ、弥美ちゃんとのじゃんけんに負けて飲み物買いに来ることになっただけなのに、まさか先輩に会うことになるなんて」

「そこまで嫌がらなくても」

「嫌がってるわけじゃない、会いたくないだけ、です」

「それほとんど一緒だろ」

「先輩がお姉さまと縁を切ってくれたら話は簡単、です」

「いやそれは無理だから」

「じゃあ一生無理、です」


 つーん、とそっぽを向いてしまう花音。最早この花音の言動に慣れ始めている晴彦はここまで言われても特に何を思うということもない。嫌な慣れである。


「っていうかホント、そこまで俺のこと嫌いなのによく一緒に行ってくれる気になったもんだな」

「そ、それは弥美ちゃん達が行くっていうから……私は別に……」

「感情の揺らぎを確認、」

「好感度のパラメータに変化が生じました」

「は?」


 晴彦と花音が話している間、ジッと花音のことを見つめていた雷華と雷茅が突然ぼそりと呟く。


「桜木花音を攻略対象と認識、」

「これよりサポートを開始します」

「いやいやいや! ちょっと待て!」


 花音が目の前にいるということも忘れて思わず叫ぶ晴彦。


「い、いきなり何叫んでるのよ、です」

「え、あ、ごめん。ちょっと用事思い出して……えぇと、それじゃまた!」


 しどろもどろになりながらも誤魔化した晴彦は、雷華と雷茅の二人を連れてその場から離れる。

 人気の無い場所までやって来た晴彦はあらためて周囲を確認して二人を問い詰める。


「桜木さんが攻略対象ってどういうことだよ!」

「どうといわれても、」

「そのままの意味です」

「いやだって、桜木さん俺の事嫌いだろ」

「嫌よ嫌よも好きのうち、という言葉があります、」

「好きの反対は嫌いではなく、無関心なのです」

「いや、でもなぁ……」

「私達の目に狂いはありません、」

「私達の見立てによれば彼女は……、」

「「ツンツンツンデレタイプです!」」


 ツンツンツンデレタイプってなんだよ! という晴彦の心からの叫びはむなしく空へと吸い込まれて行くのだった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は6月5日21時を予定しています。

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