第25話 朝の一波乱
いやはや、ながらくお待たせして申し訳ありませんでした!今日からまた頑張っていきたいと思います!
そして、今日『負けヒロインは諦めない』という短編を投稿しました。もしよろしければ読んでみてください。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
結局、雷華と雷茅の面倒をみることになってしまった晴彦はそのままの流れで二人を部屋に泊めることになってしまった。そのせいで夜遅くまでゲームに付き合わされてしまったりしたわけなのだが。
その時問題になったのは二人の寝る場所だ。もちろんのことながら晴彦の部屋にはベットが一つしかない。客用の布団も晴彦の家にはろくにないのだから。
しかし、それに対する二人の返答は簡潔だった。
「それなら問題ありません、」
「一緒に寝ればいいですから」
いやいや無理だろ、と言う晴彦を尻目に雷華と雷茅はさっさとベットの中へと入ってしまう。それは流石に、とか倫理的に、とか色々なことが頭をよぎった晴彦は仕方なく座布団を枕代わりに、そしてリビングに置いてあった昼寝用の掛布団を持ってきて床の上で眠ることにした。
しかし、この時疲れ切っていた晴彦は気付かなかった。大きな問題が次の日の朝に待ち受けているということに。
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そして朝がやって来る。
いつもとは違う床の上で寝たからか、それとも本能的な危機を感じ取ってか、晴彦は珍しく起こされることなく目を覚ました。
「ん……もう朝か……って、体いてぇ。流石に床の上で寝るのは無理があったかな」
体を起こした晴彦は背伸びして体をほぐす。時計を確認して見れば時間は七時前だった。いつもならまだ寝ている時間だ。そうして眠りこけている晴彦を零音が起こしに来るのだ。そう、零音が。
「あ!」
そのことに気付いた晴彦はさぁっと顔を青くする。ベットの上ではいまだに雷華達が眠っていて起きる気配はない。その時だった、階下から誰かが上がって来る音がする。それが誰かということなど考えるまでもなくわかる。
「っ! おい、雷華も雷茅も起きろ、このままじゃまずい!」
自分の置かれている状況がまずいということに気付いた晴彦は慌てて雷華と雷茅のことを起こそうとする。だが、深い眠りについてしまっている二人は身をよじるばかりで一向に起きる気配がない。そうしている間にも足音はどんどん晴彦の部屋へと近づいて来る。
(まずいまずいまずい! この状況を零音に見られたりしたら……)
死、という文字が晴彦の脳裏によぎる。さすがにそこまで酷いことにはならないと思っているが、前日に雷華達に言われたこともある。こうなったら手段は選んでいられないと思った晴彦は無理やり二人のことを起こそうとする。
しかし、それよりも前に足音が晴彦の部屋の前で止まる。
「っ!」
ゆっくりと回転するドアノブ。それに気づいた晴彦はとっさに布団を二人にかぶせて姿を隠す。その直後だった。零音が部屋の中に入ってくる。晴彦は二人の姿を隠すようにベットの前に立ち、零音のことを出迎える。
「あれ、ハル君もう起きてるの?」
「あぁ、おはよう零音。今日は珍しく目が覚めたんだよ」
「そうなんだ。珍しいこともあるんだね」
「俺だってもう高校生だしな。自分で起きることくらいできるって」
「ふふ、いつも起きてるならその言葉信じてあげられるんだけどねー」
幸いというべきか、零音は晴彦が自分から起きているという珍しい事象に気を取られていたのか、晴彦のベットの不自然なふくらみには気付いていない。
あとは零音を部屋から出すだけ、そう思って安心しかけたその時だった、布団を頭までかけられたことで息苦しくなったのか、なんなのか、ベット中で二人がもぞもぞと動いてしまう。
「ん? 今なんか変な音しなかった?」
「そ、そうか? 俺は何も聞こえなかったけどなー」
「……ううん。確かに聞こえた。ハル君の……後ろのベットの辺りから」
スッと零音が目を細める。その注意は完全に晴彦のベットに向いていた。ダラダラと冷や汗が流れる。どうにかして誤魔化さなければと思っても、妙案が浮かばない。
「ねぇハル君、さっきから気になってたんだけどさ」
「な、なんだ?」
「この部屋……知らない女の匂いがするんだけど。まさか……誰かいるなんてことないよね」
どんな嗅覚してんだよ! と突っ込みたくなる気持ちをグッと堪える。それをしてしまえば認めるのと同じだ。零音が黒いオーラを纏っているのを幻視する晴彦。瞳のハイライトすら消えている。
「そうか? 気のせいだろ? 俺はわからないし」
「ホントに何も隠してない?」
「はは、バカだな。俺が零音に隠し事するわけないだろ」
命の危機を感じたがゆえに成せる業か、晴彦は今までにないほど自然な演技で誤魔化す。
「……そっか。そうだよね。ごめんねハル君。なんか神経質になってたかも」
それまでと一変して、いつもの明るい雰囲気に戻る零音。なんとか乗り切ることができたと内心安堵する晴彦は思わず聞いてしまう。
「まぁ勘違いは誰にでもあることだしな。それよりももしホントに誰かいたらどうする気だったんだ?」
「え、そんなの決まってるじゃない」
笑顔のまま零音は言う。
「ハル君をたぶらかそうとする人がいるなら、こう……ね?」
スッと何かを刺す仕草をする零音。その表情は紛れもなく本気だった。晴彦はそれを聞いて固まってしまう。
「なんてね、冗談だよ冗談。それじゃあ、朝ごはんの用意してるから早く降りてきてね」
「あ、あぁわかったよ。すぐ行く」
零音は冗談だと言ったが、もしバレていたら……そう想像した晴彦は思わず身震いし、バレなかったことに心底安堵するのだった。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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次回投稿は6月2日21時を予定しています。