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第24話 二人のご飯

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 雪を家に送り届けた後、晴彦は急いで家へと帰っていた。道中に雪と話したりしてしまったせいで思っていた以上に時間をくってしまったのだ。

 家に帰ってきた晴彦は慌てて自分の部屋へと入る。


「悪い、遅くなった……って、何してるんだ?」

「「…………」」

「おーい……」


 部屋に入った時、雷華と雷茅は部屋の中心で謎の舞を踊っていた。それも無言で。可愛らしいといえば可愛らしい動きなのだが、いかんせん二人の纏う雰囲気が暗すぎて微笑ましいとは思えなかった。

 やがて二人は動きを止め、まったく同じ動作でぐるりと晴彦に顔を向ける。思わずビクッとする晴彦。軽くホラーだ。


「これは、」

「空腹の舞です」

「空腹の舞?」

「お腹が空いたことを誤魔化すために、」

「あえて体を動かし続けるのです」

「な、なるほどな。いやよくわからんけども」

「そんなことよりも、」

「私達は空腹です」

「あ、そっか。悪い。ちゃんと買ってきたからさ。とりあえずいなり寿司と厚揚げと……あとよくわからんかったから適当にパンとか買ってきた」

「おぉ、」

「おぉ、」

「いなり寿司です、」

「厚揚げです」


 晴彦の買ってきたご飯の数々を見て目を輝かせる二人。いなり寿司と厚揚げ以外にも買ってきたものを色々と物色している。


「全て食べてよいのですか?」

「か?」

「あぁ、そのために買ってきたんだしな。遠慮せずに食べてくれ」

「初めてあなたが良い人だと思いました、」

「感謝感激です」

「はは、そりゃどうも」


 じゃあ今までどう思ってたんだよ、というのは口には出さない。出しても良いことがないだろうということはわかっていたからだ。

 二人はいなり寿司も厚揚げもパンもちょうど半分にして分け合いながら食べていた。もそもそと食べる姿が子供のようで、晴彦は思わず頬を緩めてしまう。晴彦に見られているということに気付いた二人が持っていた食べ物を慌てて背中に隠す。


「な、なんですか、」

「これはあげませんよ」

「いや別に欲しいわけじゃないから。まぁ慌てずにゆっくり食べてくれ。飲み物とってきてやるよ」


 キッチンへ向かった晴彦は、リビングにいた秋穂の姿を見て雪と帰り道で話したことを思い出した。


「そういえばさ」

「ん、なーに」

「さっきコンビニに行った時に友達にあったんだけど。また今度母さんに挨拶したいって言ってたんだよ」

「へー、いい子じゃない。もしかしてその子……女の子?」

「うん、まぁそうだけど」

「ふ~ん、そうなんだぁ」

「な、なんだよ」

「べっつにー。それでいつ来てくれるの?」

「日曜日だよ。土曜日は俺が用事あるからさ」

「オッケー、日曜日ね。どんな子か楽しみだわ」

「あんまり変なことしないでくれよ」

「大丈夫よ大丈夫。少しは信用してよね」

「その言葉を素直に信じておくよ。とりあえずだけど」


 雪がやってくることを告げた晴彦は二人分のコップと飲み物を持って部屋へと戻る。


「持って来たぞ」

「ありがとうございます、」

「す」


 晴彦は飲み物を入れると、喉が渇いていたのか二人はごきゅごきゅとお茶を飲む。


「ぷはー、」

「生き返るのです」

「そんなに腹減ってたのか?」

「ご飯はあまり食べていなかったので、」

「まともな食事は初めてです」

「マジか……」


 二人が今までどんあ生活をしてきたのかということが気になる晴彦だったが、今はそこに踏み込むことはせずに最初の目的通り、雷華と雷茅がやってきた理由を聞くことにした。


「まぁとりあえずさ、これで話してくれるか? ここに来た理由」

「もちろんです、」

「約束ですからね」


 ご飯を食べ終えた二人はあらたまった様子で晴彦へと向き直る。


「私達の役目はあなたのサポート、」

「サポートとは近くにいなければ意味がない、」

「ゆえに私達はこの家にやって来たのです」

「えーっと……それっていつまで?」

「もちろん彼女ができるまで、」

「ずーっとなのです」

「……それまで家にいると?」


 こくりと頷く雷華と雷茅。


「ま、マジか……」

「私達はあなたのサポートをする存在、」

「どんどん頼ってくれて構わないのです!」


 そう言って胸を張る二人だが、晴彦はそれどころではなかった。なぜなら二人の言う通りであるならば、これから晴彦は彼女ができるまでの間ずっとこの二人のことを家で面倒みなければいけないのだから。


「どうかしたのですか?」

「か?」

「二人ともそれまでずっと家にいるってことか?」

「もちろんです、」

「でなければサポートできないのです」

「二人とも家とかは……」

「ないのです、」

「強いて言えば学園の狐の像が家なのです」

「だよなぁ……」


 ここで少女二人を追い出すようなことができるのかと問われれば、晴彦の性格的に絶対にできない。できないならば二人の面倒をみるしかないのだ。


「あなたに最愛の恋人ができるその瞬間まで、」

「私達が精一杯サポートするのです!」


 決意を胸に言う雷華と雷茅を前に、これからのことを考えて晴彦は頭を抱えるのだった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は6月1日21時を予定しています。

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