第23話 気になるお年頃
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「ハルっちもこんな夜に出かけたりするんだねー」
「いやまぁ、そりゃたまにはな」
コンビニの前で雪と出会った晴彦はそのまま一緒に店内へと入っていた。雪はランニングウェアを着ており、夜のランニングをしていたらしい。
「なに、勉強するための夜食でも買いにきたの?」
「俺がそんな奴に見えるか?」
「見えない」
「なら言うなよ」
「でもそれならどうしてコンビニ来たの?」
「まぁ、夜食ってわけじゃないけど。ちょっとご飯買いにきたんだ」
「え、ハルっちのご飯って零音が作ってるんじゃなかったっけ」
「そうなんだけどな……」
雷華達のことを話すわけにはいかない。しかし、言わなければ自分がコンビニに来てる理由が説明できない。もし下手なことを言えば雪から零音へと伝わってしまう可能性があるのだ。
「そ、そう! 母さんが今帰って来ててさ。それでちょっと買い物頼まれたんだよ」
「え! ハルっちのお母さん帰ってきてるの!?」
「そうそう。それで久しぶりに食べたいものがあるーって言われてさ」
「へーそうなんだ」
なんとか誤魔化せたと内心ほっと息を吐く晴彦。
「それで雪さんはランニングしてたの?」
「そうそう。最近は朝だけじゃなくて夜も走るようにしてるの」
「でもこんな時間じゃ危ないだろ」
「危ないって……大丈夫だよ。アタシがどれだけ強いかは知ってるでしょ?」
「そうだけど……でも、女の子だろ?」
「…………」
「どうした?」
「……今のはちょっとドキッとしたかも」
晴彦は雪が狐狼と渡り合えるほどに強いということを知っている。そんな雪であればたとえ不審者に絡まれたとしてもやられるようなことはないだろう。それでも晴彦は雪の心配をしてくれたのだ。雪がときめかないはずがなかった。
「そういえば、さっきからずっと気になってたんだけどさ」
「ん、どうしたの?」
「なんで雪さんちょっと距離取ってるんだ?」
いつもはくっつくように、とは言わないまでも話すときは近くにいる雪が今は少しだけ距離を取っているのだ。そのことを不思議に思って聞いた晴彦だったが、それを聞いた途端に雪の表情が曇る。
「それ聞いちゃう? ってかわからない?」
「えぇと……ごめん。わからない」
「はぁ……しょうがないなぁ。じゃあヒントをあげる」
「いや普通に教えてくれたらいいんだけど」
「それじゃあ次に同じようなことがあった時のためにならないでしょ。これも一つ勉強だと思ってさ」
「わかったよ。それで、ヒントって?」
「まず一つ。アタシは何をしていたでしょうか」
「何って……ランニングだろ」
「そう正解。じゃあランニングしてたらどうなる?」
「疲れる」
「それもそうだけどそうじゃなくて、ほらあるでしょランニングしてたら出てくるものが」
「えーと……乳酸?」
「そうだけど、そうじゃないって! あぁもう汗だよ汗!」
「汗? そりゃ出るけど……それが?」
「それ本気で言ってるならハルっちでもぶっ飛ばすよ」
「ごめんなさい」
雪があまりにもドスの効いた声を出したために思わず謝ってしまう晴彦。しかしおかげで晴彦にも雪がなぜ距離を取っているのかということがわかった。つまり雪は汗の匂いを気にしていたのだ。
「でもそんなに匂ってるわけじゃないぞ?」
「そうだけどそういう問題じゃないの。その辺、ちゃんとわかるようにならないとダメだよ」
「わかった。気を付ける」
「それじゃあ、早く買い物だけ済ませよっか」
「そうだな」
雪はコンビニで飲み物を、そして晴彦は雷華と雷茅に言われた通りにご飯を買う。
(あの子達……狐なんだよな。いなり寿司とかでいいか。厚揚げも……ちゃんとあるな。よし)
「終わった?」
「あぁ、終わった終わった。それじゃあ俺は帰るけど……送っていこうか?」
「いやいいって。ここからアタシの家まで結構距離あるし」
「じゃあなおさらだよ。さっきも言ったけど危ないし」
「ふーん、心配症だなぁハルっちは。それじゃあお願いできるかな?」
「オッケー。それじゃ行くか」
そして晴彦は雪を家まで送り届けてから帰るのだった。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!
それではまた次回もよろしくお願いします!
次回投稿は5月19日21時を予定しています。