第22話 コンビニへと
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「……で、なんで俺はこんなことになってんだよ」
夜、晴彦は自室で呆然と呟き、頭を抱えていた。そしてその原因は我関せずと言わんばかりに晴彦の部屋のテレビの前に居座り、ゲームに興じていた。
「ぶーん、」
「ぶーんです」
晴彦が掃除の時間に出会った二人の少女、雷華と雷茅。出会った直後に姿を消した二人は、夜になって晴彦の部屋へとやって来たのだ。
晴彦は二人に出会ったことは誰にも話していない。二人が忽然と姿を消したことで白昼夢だったのかもしれないと思ったということもあるし、二人に口止めされていたからということもある。白昼夢であれという思いの方が強かったが。
しかし、そんな晴彦の願いはあっさりと覆されてしまった。こうして二人が晴彦の部屋へとやって来てしまったことで。
雷華と雷茅の二人は部屋にやって来るなり晴彦の部屋のテレビに興味を示し、今現在はこうしてゲームをしているのだ。
二人とも無表情ながら、どこか楽し気な雰囲気を醸し出している……ように晴彦には見えた。
「……楽しいか?」
「はい、」
「とっても楽しいです」
「そうか。そりゃよかった。満足したなら話を聞かせて欲しいんだがいいか?」
「すみませんが、」
「あと少しだけ待って欲しいです、」
「このレースに私達は、」
「勝利せねばならぬのです」
雷華と雷茅の二人がやっているのは対戦型レースゲームの『メイジカート』だ。二人は獣人のキャラクターを選んでレースを行っている。全国のプレーヤーと戦うオンライン戦ではなく、オフラインのCPU戦だ。一番弱い設定になっているのだが、ゲームをするのが初めてな二人にはちょうど良い強さになっているようだ。
それから少しして、優勝のトロフィーを手にした二人はフー、と汗をぬぐう振りをする。と言っても、やはり無表情なのだが。
「やりました、」
「優勝です」
「あー、はいはい。良かったな」
「やはり私達は強いのです、」
「もはや無敵なのです」
えへんと無い胸を張る二人。それが少しだけ可愛く見えて、頬を緩める晴彦。しかしすぐに気を取り直して引き締め直す。
「それじゃあゲームも一段落した所で質問してもいいか?」
「はい、」
「もちろんで……あ」
くぅ~、と二人のお腹が可愛い音を鳴らす。
「お腹が空きました、」
「お腹が空いてしまったのです」
「自由人か!」
「腹が減っては戦はできぬ、」
「腹が減っては説明できぬ、」
「なのです、」
「です」
「はぁ……わかった。わかったよ。ご飯持ってくるから」
「おぉ、」
「感謝します」
零音が作ってくれた夜ご飯がまだ少し余っていたはずだと思った晴彦はそれを取りにリビングへと向かう。
しかしリビングには当然と言えば当然のごとく秋穂がいた。
(母さんにバレずに持っていく……のは無理だよなぁ。しかも二人分だし。どうやって持っていこう)
「ん、晴彦どうしたの?」
「あぁいや。ちょっと小腹が空いたと思ってさ」
「それでなにか取りにきたの?」
「そうそう。今日のご飯余ってただろ?」
「ダメよ。あれは明日のお昼ご飯にするんだから」
「いや、それは自分で作ってくれよ」
「いやよ。めんどくさい」
「えぇ……」
秋穂は一度言ったことを曲げることはほとんどない。リビングに秋穂が残っている以上隠して持っていくのも不可能だ。
「パンとかも今回は買ってないしなぁ。お菓子……も残ってないか。明日買い物に行くって零音言ってたし」
ご飯が余ってしまうことが好きじゃない零音はあまり無駄に買うということはない。お菓子も言わなければあまり買ってくれないほどだ。
「コンビニ行くしかないのかなぁ」
「コンビニ行くの? じゃあアイス買ってきてー」
「嫌だよ!」
「ケチー」
コンビニに行くと決めた晴彦は部屋に財布を取りに戻る。
「悪い、今ちょっとご飯がなくてな。コンビニ行ってくるから待っててくれ」
「であるならば、」
「私達は厚揚げを要求します」
「はいはい。厚揚げな」
「いなり寿司でも、」
「オッケーです」
「わかったよ」
自転車で飛ばせばコンビニはそう遠くない場所にある。二人を部屋に残したままにするのが不安な晴彦は急いでコンビニへと向かう。
「はぁ、っていうか、なんで俺あの子達のためにこんなに走らないといけないんだ。まぁ、言ってもしょうがないことだけどさ」
「……あれ? ハルっち?」
「え……雪さん?」
コンビニに晴彦が出会ったのは、同じようにコンビニに入ろうとしている雪だった。
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次回投稿は5月18日21時を予定しています。