第12話 生徒会長は案外強引です
パソコンをあさってたら昔書いてた小説の残骸がいっぱい出てきました。またいつかリメイクして出したいですね。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
学校において、昼休みというのは非常に重要なものだと思う。さっさとご飯を食べて勉強をする人、外に遊びに行く人もいれば、ゆっくりご飯を食べながら友達と話している人もいる。思い思いの時間の過ごし方があるのが昼休みなのだ。
俺はどちらかというと後者になるのかもしれない。零音や友澤、雪さんとご飯を食べながらダラダラとしていることが多いしな。
最近はそこに井上さんが加わるようになった。最初は緊張していた様子だったけど、最近は少し慣れてきたみたいだ。まぁ、それでも俺が話しかけるとまだオドオドしてるけどさ。
ちなみに、俺のお昼ご飯は零音が作ってくれてる。前に友澤に購買に連れていかれたことがあるけど、あれはもはや戦争だった。購買戦士じゃなくてよかったと思ったよ、本当に。
「おい、日向。さっさと食べようぜ。昼休みが終わっちまう」
「そうだよハルっち。アタシもうお腹ペッコペコなんだけどー」
「あと少しで終わりそうなんだ。先に食べててもいいぞ」
昼休み、俺はノートを写していた。四時間目の先生が黒板を消すスピードが速すぎてノートをとれなかったのだ。
「また後にしたらいいじゃん。別に減るもんじゃないんだし」
「うーん。まぁそうなんだけどさ」
人のノートをずっと借りておくのってなんかなー。できれば早く返したい。零音のノートならそんなに気にしないんだけど、これ井上さんのだし。
井上さんのノートすごく見やすい。要点がまとめられてるし、色分けもきれいだ。黒板丸写しの俺とは大違いだ。
「あ、べ、別にすぐに返さなくてもいいよ? そのノート今日はもう使わないし」
「先にお昼食べよ?」
これ以上待たせるわけにはいかないか。当の井上さんがすぐに返さなくてもいいと言ってるわけだし。先にご飯食べるか。
「じゃあ、もうちょっと借りとくな。今日中には返すから」
「う、うん」
「よし、それじゃ食べよっか!」
みんなで食べやすいように机を動かした直後、放送がなる。
『高等部、1年1組の日向晴彦君。すぐに生徒会室まで来てください。高等部、1年1組の日向晴彦君。すぐに生徒会室まで来てください』
え、もしかしなくてもこれ俺が呼び出されてるのか?
「ん、なんだ日向。お前なんかしたのか?」
「いや、そんな記憶はないんだけど……」
「っていうか! あの生徒会長とご飯一緒に食べれるなんて羨ましいぞ!」
「いや、別にご飯に誘われたわけじゃないだろ!」
『あ、言い忘れてたわ。時間がかかるかもしれないから、お昼ご飯も一緒に持ってくるようにね。以上』
そう言って放送は切れる。お昼ご飯をもって生徒会室にって……ほんとに何の用事なんだろうか。
「ねぇ、これってさ」
「うん、仕掛けてきたね」
「どうする?」
「それは止めるしかないんじゃない」
零音と雪さんが何か話しているけど、よく聞こえない。二人とも何か知ってるんだろうか?
「なぁ零音、なんか知ってるか?」
「いや、私は知らないんだけど……」
「大した用事じゃないだろうし、行かなくていいんじゃない?」
「いや、さすがにそういうわけにはいかないだろ」
生徒会長が直々に呼び出してるわけだし、大した用事じゃないってことはないと思う。
「まぁとりあえず行ってくるよ」
「ちっ」
「くぅ」
「レイちゃんもっとちゃんと止めなよ」
「なんて言ったらいいのかわかんないし」
「そこはほら、適当にさ」
「適当でなんとかなるわけないでしょ」
また二人がひそひそと話している。まぁいいや、すぐに来るようにって言ってたし早く行こうか。
「それじゃ行ってくる」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
「あー、はぁ。しょうがないか。早く戻ってきてねー」
「あとで何があったか聞かせろよな」
「い、行ってらっしゃい」
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と、いうわけで生徒会室にやって来たわけなんだけど……これ、入っていいんだよな。
慣れてない場所はなんだか入りづらいというか、特に生徒会室なんて入りづらい雰囲気がある。
まぁ、とりあえずノックするか。
「いらっしゃい。待ってたわ」
扉をノックするとすぐに扉が開き、昼ヶ谷先輩が迎えてくれた。
「中に入ってちょうだい」
「失礼します」
昼ヶ谷先輩に促されて椅子に座る。
「あの、それで何の用事なんですか?」
「用事なんてないわよ」
「へ?」
「強いて言うなら、あなたを呼ぶのが用事かしら」
えーと、いったいどういうことだろうか。
「わけがわからないって顔ね」
「すいません。わからないです」
「そうね、私たちは友達でしょう?」
「あー、はい。そうですね」
前に生徒会室に来た時、流れでそういうことになったんだった。だけど、それと今回のことになんの関係があるんだろうか。
「友達同士というのは一緒にご飯を食べたりするんでしょう?」
「まさか、そのために呼んだんですか?」
「そうよ」
そのためにわざわざ校内放送使ったのか。なんていう……立場の利用というかなんというか。
「わざわざそんなことしなくても」
「だって全然来てくれないじゃない」
「え?」
「いつでも来ていいって言ったのに、全然来ないし連絡もない。なら私から言うしかないじゃない」
ツーンと顔を逸らして言う生徒会長。いや、まさか……拗ねているのだろうか。
「あの……先輩、怒ってますか?」
「別に怒ってはないわ」
確かに、あれから一度も連絡をしなかったのはまずかったかもしれない。俺からの連絡を待っていたのだと思うと申し訳ない気がする。
「あの、すいませんでした」
「別に怒ってないと言ってるじゃない……まぁでも、私は心が広いから許してあげるわ。それじゃあご飯食べましょうか」
「はい」
今日は先輩と一緒に食べることにしよう。次に食べる時は零音や井上さんも連れてきていいかもしれない。友澤は……うるさそうだからやめておこう。
「あ、でも。次からは放送で呼び出すのはやめてくださいね」
「あら、あれなら学園内どこにいても分かるからいいと思ったのだけれど」
「普通にスマホで連絡してくださいよ」
「……そういえばそうね。忘れてたわ」
「忘れないでください!」
しっかりとしている印象だったんだけど、もしかして意外と抜けている人なんだろうか。なんだか第一印象がどんどん崩れていく。
「そういえば、あなたのそのお弁当、自分で作っているの? それともお母さまが?」
「あ、これですか? これは零音が作ってるんです。母は父さんと一緒に海外に行ってますんで」
「そうだったの。ずいぶんと手の込んだお弁当だと思うわ。その一口ハンバーグも手作りでしょう? 一つ一つにしっかりと気持ちがこもっているのがわかる」
「そうですね。ほんと、零音には感謝してます。でもそういうなら先輩の弁当もすごいじゃないですか」
なんだかすごい豪華なお弁当って感じだ。どれもこれもあんまり普通のお弁当には入っているのを見たことがない。
「うちの使用人がね。毎朝気合を入れて作ってくれてるわ」
「使用人?」
「あら、知らなかったかしら。私の家は——」
「おーーーねーーーえーーーさーーーまーーー!!!!」
昼ヶ谷先輩が何かを言おうとした直後、廊下から誰かが叫びながら近づいてくる。
ドタドタという足音は生徒会室の前で止まり、今度は生徒会室の扉が激しく叩かれる。
「お姉さま! いらっしゃいますか!」
お姉さまっていうのはもしかして昼ヶ谷先輩のことだろうか。
チラリと先輩の方を見ると、厄介な子が来た、という顔をしていた。
「あの……」
「ごめんなさいね。ちょっと待っててもらえる?」
「はい。それはいいんですけど」
先輩が扉を開くと、一人の少女がすごい勢いで入ってくる。
赤い髪をツインテールでまとめた少女で、少しキツイ目つきをしているが、十分に美少女だと思う。あの制服は中等部の人だろうか。
「あ、お姉さま♪ ってぎゃああ! 男がいるーーー!!」
「落ち着きなさい」
「あてっ」
俺を見るなり悲鳴を上げた女生徒を先輩が軽く叩く。
「ごめんなさいね日向君。この子は桜木花音。中等部の生徒会長よ」
この学園は中等部と高等部で生徒会が分かれている。といっても、中等部の生徒会は高等部のサポートが主な仕事らしいけど。
この子が中等部の生徒会長なのか。
「お姉さまなんなんですかこの男は! なんで一緒にご飯を食べてるんですか!」
「この男じゃないわ。彼は日向晴彦君。私の友人よ。あなたにとっては先輩なんだからちゃんと敬いなさい」
「名前なんてどうでも——って、え? 友人? お姉さまの?」
「そうよ」
「な、なななななな、なーーーー!!」
「ごめんなさい。私人語以外はわからないのだけど」
「なんでこの男が……おいお前! なんて言って先輩を騙しやがった……ですか!」
「いや、別に騙してないよ」
「嘘つくな! です。騙しでもしないとお前みたいなやつとお姉さまが友達になれるわけないだろ! です」
なんだよそのとってつけたような敬語。一応先輩に言われたから気をつかってるみたいだけど。
っていうか、お前みたいなやつってそれ初対面に向かっていうことじゃないだろ。
「男はケダモノ。私の目は誤魔化せないんだから! です」
「ケダモノじゃないから!」
「男がお姉さまの友人だなんて……そんなの認められるわけない! です」
桜木さんが昼ヶ谷先輩のことを慕ってるのはよくわかるんだけど、なんというか思い込みの強い子なのかもしれない。
ここまで言われてるのに不思議と怒りがわかないのは、この子の真っすぐな性格が伝わってくるからだろうか。
「だいたいあなたお姉さまの家のことを知って——」
「いい加減にしなさい」
なおもヒートアップして言い募ろうとする桜木さんを止めたのは先輩だった。それはまさに極寒と表現するのが相応しいほどに冷たい声音だった。
「花音。あなた言い過ぎよ。彼は私が選んで、友人になってもらったの。あなたにどうこう言われる筋合いはないわ」
「で、でも——」
「くどい。二度は言わないわよ」
「うぅうう……」
じわじわと桜木さんの目に涙がたまっていく。今にも決壊寸前といった様子だったのだが、服の袖で拭うと、こちらをキッと睨みつけてくる。
「わ、私は絶対にあなたがお姉さまの友人だなんて、認めないんだからーーーーーー!!!! ですーーーーーー!!!!」
そしてそのまま叫びながら生徒会室を飛び出してしまう。
「はぁ、ごめんなさいね。日向君。決して悪い子じゃないんだけど。ちょっと思い込みの強いところがあるのよ」
ちょっとではない気がするけど、まぁ悪い子ではないのはなんとなくわかる。
「そうですね。なんとなくわかります。気にしてないからいいですよ」
「また今度直接謝らせるから」
「別にいいですよ。あ、そういえばあの子の言ってた先輩の家のことってなんなんですか?」
「あぁあれね。別に大したことじゃないわよ。ただ、私がこの学園の理事長の孫娘ってだけ」
「へぇ、そうなんですか……って、えぇ!」
「知らなかったの? 私もおじいさまも入学式に出ていたのだけれど」
入学式は興味なくてほとんど話聞いてなかったです、とは言えない。
「あー、すいません」
「まぁいいけれど。まさか知らないとは思わなかったわ」
「あはは……でも、だから使用人とかいるんですね」
「えぇ。まぁ歴史が長いだけの家よ。大した事ないわ」
学園の理事長やってるとか、結構すごい家だと思うんだけど。
「……どう思ったかしら?」
「何がですか?」
「私が学園理事の孫娘だと知って。距離を置きたくなったかしら?」
「いえ、そんなことはないですよ」
理事の孫娘だからって、先輩が別人になるわけじゃない。
「先輩は先輩ですし、こんな俺でよければこのまま友達でいたいと思ってます」
「ならいいのだけど。早く食べてしまいましょうか。あの子のせいで時間の余裕がなくなって来たわ」
「え、あぁホントだ! 早く食べましょう」
「ねぇ日向君」
「なんですか?」
「次は君から誘ってくれると嬉しいわ」
俺が先輩をご飯に誘うっていうのはハードルが高い。高いけど、先輩の期待に満ちた目を裏切ることは俺にはできそうにない
「……わかりました。次は俺から声をかけさせてもらいます」
「えぇ、期待して待ってるわね」
そう言って笑う先輩の笑顔は、すごく魅力的だった。
今回は生徒会長回でした。新キャラの桜木花音ちゃんは使いやすいキャラなのでこれからも出していきたいですね。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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それではまた次回もよろしくお願いします!
次回投稿は8月19日9時を予定しています。