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第3話 嵐を呼ぶ転校生

間違ってた部分を書き直してたら遅くなりましたー。二日連続で申し訳ないです。

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 他愛もない話をしながら晴彦と零音は教室に着いた。教室にはすでにそれなりの人数がいて、友人と話している者、慌てて宿題をしている者、そして寝ているものまで様々だった。そしてその中には雪とめぐみ、友澤や山城の姿もあった。

 零音と晴彦はそれぞれ分かれて零音は雪達の場所へ、晴彦は友澤達の場所へと向かう。


「おはよう」

「おはー」

「おはよう零音さん」

「何してるの?」

「何って、見てわかんない? 宿題だよ宿題。昨日やるの忘れてたんだよー」

「それでめぐみに教えてもらってたの?」

「そゆこと。でもアタシはもうダメだよ……また先生に怒られるんだ」

「だ、ダメだよ雪ちゃん。あと少しで終わるんだから」

「嫌だー! もう宿題したくない! 体だけ動かしてたい!」

「学生の本分は勉強だよ」

「そんなお利口さんみたいなことは聞いてない。っていうか零音も手伝ってよ」


 事件以降、雪は『レイちゃん』から『零音』と呼ぶようになっていた。そして零音も『雪さん』から『雪』と呼び捨てになっていた。


「嫌だけど」

「ひどっ! もう隠す必要無くなったからって冷たくない!?」

「宿題をしてないのは自業自得じゃない。それにめぐみが手伝ってくれてるんでしょ。だったらいいじゃない」

「でもさ、これがハルっちだったら手伝うでしょ?」

「もちろん」

「じゃあアタシのも手伝ってよ!」

「雪とハル君は違うでしょ」

「差別反対!」

「差別じゃなくて贔屓。間違えないで」

「うぅ……めぐちゃ~ん、零音が虐める~」


 とうとうめぐみに泣きつく雪。めぐみは苦笑して抱き着いてきているめぐみの頭を撫でる。


「アタシに優しくしてくれるのはめぐちゃんだけだよー。あの鬼畜生とは違うよ。きっとめぐちゃんの体の半分は優しさでできてるんだよ」

「私お薬じゃないんだけど……ほら、雪ちゃんあと少しだから頑張ろ」

「うん、頑張る」

「それができるなら最初から素直にやればいいのに」

「うるさい。あ、そうだ。今朝送ってきた写真って他にはないの?」

「あの写真のこと?」

「そうそう。どうせなら今まで撮ってた奴もちょうだい」

「それはダメ。約束があるからしばらく撮った写真は送ってあげるけど、それ以前の写真は約束外です」

「ケチー。めぐちゃんだって欲しいよね?」

「え、私は……まぁ、ちょっとだけ」

「めぐみまで……はぁ、しょうがないなー。めぐみだけ後で送ってあげる。全部ってわけにはいかないけど」

「え、ホントに!?」

「え、アタシは? アタシは?」

「雪は無し」

「ひどっ! 差別じゃん!」

「だから差別じゃなくて贔屓。一緒にしないで」

「アタシにとっては一緒だよ!」

「あーもー。わかったから。宿題終わらせて。そしたら雪にも写真あげる」

「え、マ? じゃあ頑張る。速攻で終わらせる」


 零音にわかりやすいご褒美を吊り下げられ宿題の進めるペースが格段に上がる雪。零音はそんな雪のことを呆れた目で見つめる。


「わかりやすいね、ホントに」

「まぁやる気が出るのはいいことだから」

「そうだけど……あ、はいこれ。写真送るね」

「ありがと!」

「当たり前だけど、ハル君には内緒ね」

「うん、わかってるよ。あ、そうだ。さっき皆が噂してるのを聞いたんだけど」

「噂?」

「うん、今日からねこのクラスに転校生が来るんだって」

「転校生?」


 この時、零音は若干の胸騒ぎを覚えたのだった。




□■□■□■□■□■□■□■□■□


 零音が雪達と話している頃、晴彦もまた友澤達と談笑していた。


「あっちの方はなんかえらく騒いでるなぁ」

「騒いでるって言うか、騒いでるのは雪さんだけだと思うけどな」

「いいよなー、俺もあっちに混ざりたい」

「なんだそれ」

「友澤らしいな」

「野郎三人で話してるよりそっちの方がずっといいに決まってるだろ」

「じゃあ行って来いよ」

「無理に決まってるだろ! 何話せってんだよ!」

「逆切れすんなよ!」

「お前はいいよなー。朝道さんだろ、夕森さんに、井上さん、それに昼ヶ谷先輩まで……おれとお前の何が違うってんだ」

「強いて言うなら、お前には下心が見えすぎているな」

「当たり前だろ! あんな可愛い子達に囲まれて普通でいられるか!」

「お前も悪い奴ではないんだがなぁ」


 見えすぎる下心。それが友澤が女子に敬遠される理由の一つだろう。


「はぁ、どっかからお金持ちのお嬢様がやってきて成男様、とか言って告白してくれねぇかなぁ」

「夢見すぎだろ」

「なんか日向の現状見てたらそれも不可能じゃない気がしてきたんだよ」

「いや不可能だろ。だいたいこの学校にそんなお嬢様って雫先輩くらいしか知らないんだけど。他にもいたりするのか?」

「いや、昼ヶ谷先輩ほどのお金持ちは他にはいねぇよ。正確には、いなかったって言うべきだな」

「? どういうことだ?」

「ふふふ、聞いて驚け。今日な転校生が来るんだよ!」

「転校生? 珍しいな」

「だろ? しかもだ。相当金持ちのお嬢様って話だ」

「なんでそんなこと知ってんだよ」

「先生が話してるの聞いたんだよ。なんでもそのお嬢様の強い希望でこの学園に来ることになったらしくてな。これはもう……おれ目当てだろ!」

「どんな論理の飛躍だよ」

「まぁまぁ嫉妬するな嫉妬するな。見てろ。先生と一緒に教室に入ってきたらきっとすぐにおれの所にきて——」


 友澤の妄想話を聞いていると、教室の扉が開いて担任の太田が入って来る。いつもより少しだけ早い時間だ。


「うーい、大体揃ってるな。全員座れー。ちょっと早いけど始めるぞ。今日は伝えることもあるからな」


 ぞろぞろと席に座る生徒達。全員が座ったことを確認すると太田が話を始める。


「まぁ知ってるやつもいると思うが、今日からこのクラスに仲間が増える。入ってこい」

「はい」


 教室の外から聞こえる涼やかな声。それだけで教室にいる男子の期待が否応なしに高まる。そして、教室のドアが開かれ入ってきた少女の姿を見て全員が息を呑む。燃えるような赤髪。しかしその瞳は対照的に静謐をたずさえた黒。人形のような、という言葉がまさに似あうほどの整い過ぎた造形に誰もが言葉を失っていた。零音や雪にも負けず劣らずといった美貌だ。

 時が止まったかと錯覚しそうになるなか、その少女は教室の中を見渡し。晴彦の姿を見つけ、柔らかく微笑む。


「初めまして皆様。わたくし、東雲姫愛と申します。そして——」


 少女は——姫愛は真っすぐに晴彦の元へとやって来る。


「また再びお会いできて嬉しいですわ、晴彦様」


 そう言って少女は晴彦に抱き着くのだった。



「この写真って何に写真なの?」

「それはハル君がくしゃみをした時の写真でそっちは——」

 次々と出てくる晴彦の写真、写真、写真。零音のスマホの中の写真はほとんど晴彦で埋まっていた。

「零音さんって……ホントに日向君のこと好きなんだね」

 写真を撮った時のエピソードを語り続ける零音を前にめぐみは苦笑気味にそう呟いた。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!

次回投稿は4月3日21時を予定しています。


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