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第2話 それは嵐の前の静けさ

予約投稿忘れてました、遅れてごめんなさい。

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 晴彦が着替え終えてリビングに入ると、ひと通り並んだご飯が出迎えてくれた。味噌汁や鮭の匂いが晴彦の食欲をそそる。晴彦がリビングに入ってくると零音がお箸やお茶などを並べ始める。


「おー、今日はザ・日本の朝食って感じだな」

「お、正解! よくわかったねハル君」

「まぁ典型的な感じだしなー」

「たまにはいいでしょ?」

「あぁ、っていうかむしろ嬉しいくらいだ。俺味噌汁とか好きだしな。味噌汁なら毎日でも大丈夫なくらいだ」

「…………」

「? どうしたんだ?」

「それ、俺のために毎日味噌汁を作ってくれー的なニュアンスで受け取っていいの? ザ・日本のプロポーズとして——」

「ば、ちが、ちげぇよバカ!」

「なんだ残念。ま、わかってたけどねー。でも、ハル君からのプロポーズなら大歓迎だよ」

「お前……なんか遠慮が無くなったというか、図太くなったな」


 もはや隠しておかなければならないようなことがなくなったからか、それともこれが零音の素だったのか。あの事件以降、零音は何の臆面もなく晴彦のことを誘惑するようなことを言ってくるようになった。

 今現在、晴彦が零音のことをどう思っているのかといえばもちろん好きだ。異性として。それは事件以降も変わらない気持ちだ。しかし、零音がどう思っているかがわからない。好かれているとは思っている。しかし、それが友人としてなのか異性としてなのか。そして何より晴彦には確信めいた予感があった。今告白したとしても零音は受け入れてはくれないだろうと。

 それがわかっているから、思いついたいたずらを晴彦は実行する。


「でもそうか。俺からのプロポーズはいつでも歓迎なんだな?」

「え?」


 スッと真面目な表情をして晴彦は零音のことを見つめる。いつになく真剣な表情をしている晴彦に零音は思わずドキリと胸を高鳴らせる。


「なぁ、零音。俺と——」

「わ、わー! ちょ、ちょっと待って、だ、ダメ、それ以上はストップ!」


 わたわたと手を振って晴彦の言葉を遮る零音。その反応があまりにも予想通り過ぎて晴彦は思わず笑ってしまう。少しの残念さを滲ませながら。


「冗談だよ、冗談」

「え、冗談?」

「お前が俺のことからかうなら、俺だって同じことするさ」

「むぅ、ハル君!」


 顔を赤くして怒る零音と、おかしくてたまらないと笑う晴彦。二人の朝は穏やかなに進んでいった。





□■□■□■□■□■□■□■□■□



「え、それじゃあもう全く見えてないの?」

「あぁ全くだな」


 学園への登校途中、零音は晴彦から好感度が見えなくなったという事実を告げられた。実は晴彦が洗脳を解いたその瞬間から、好感度が見えなくなっていたのだ。


「そうなんだ……」

「まぁ、見えてても良いことないしな。惑わされるだけだ」

「それはわかるけどね。でもそっか、見えないんだ」


 てっきり見えているものだと思っていた零音は晴彦の話しを聞いて驚いていた。


「ちょっと安心したかも」

「俺もだ。これで好感度に悩まされる日々から解放されたわけだ」

「そんなにしんどかったの?」

「当たり前だろ? 自分が何かするだけで上がったり下がったりするんだぞ。それが見えるって……結構ツラいぞ?」

「……確かに」


 零音も想像する。もし自分に好感度を見る能力があったなら、と。自分の何気ない一言で相手の好感度が上がったり下がったりする。それは非常にツラいだろう。零音だったら、誰かと話すことが億劫になってしまうかもしれない。常に相手の好感度を気にして話すことになるのだから。


「そう考えたらハル君よく頑張ったね」

「結局ああいうのがなんなのかはよくわからなかったけど」

「霞美もその辺りのことはまだ教えてくれてないしなぁ」


 現状、霞美は雫の家で監視という名目のもと使用人として働かされている。本人は毎日のように文句を言っているらしいが、そのたびに奏にしつけられているらしいと零音は雫から聞いていた。


「まぁ急いで解明しないといけないわけじゃないしな。時間かけてやっていこう」

「そうだね」

「それにしても、こうやってのんびり歩いてると、平和だなって思うよ。ホントに」

「どうしたのいきなり」

「いやさ、この間の事件の後にふと思ったんだよ。何事もなく過ごせる日常のありがたみってやつにな」

「ハル君おじいさんみたい」

「なんだよそれ。でも零音だってそう思うだろ」

「ま……それは、ね。ハル君の日常を壊しちゃったのは私だったんだけど」

「それはそれ。今はこうしていられることを楽しむことにしようぜ」

「そうだね」

「まさかあの事件以上に面倒なことなんて起こるわけないしな」

「ははは、そうかもね。私が言うのもあれだけどさ」


笑顔で言い合う零音と晴彦。この時、この日常を脅かす存在が近づいているということにまだ二人は気付いていなかった。


 それは朝食の途中のこと。

「ねぇ、ハル君。お味噌汁美味しい?」

「あぁ、まぁ普通に美味しいけど」

「そう。ならよかった」

「どうしたんだいきなり。何かあったのか?」

「ううん。別に。ちょっと気になっただけ」

「ふーん、そっか」

 そして晴彦は普通にお味噌汁を飲む。その様子を零音は笑顔で眺めていた。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は3月31日21時を予定しています。


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