表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/353

第1話 変わらない朝の日常

さぁ始まりました第二章。一生懸命頑張っていきます!


誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 一日の始まりというのは大事なものだ。何事においてもスタートダッシュが重要視されるように、一日の始まりである朝をどのように過ごすかでその日一日の質というものがきまるのだ、と零音は考えていた。

 零音は弁当を作り終えた後、晴彦の家に向かう。それは今までと変わらない行動だ。零音にとって大事なルーティンワーク。自分が『朝道零音』だということを自覚するために必要な行動。


「よし」


 少しだけドキドキと高鳴る胸の鼓動を落ち着けながら、零音は家の鍵を開ける。晴彦への想いを自覚してからいつもドキドキと落ち着かなくなる。そして、霞美の事件を経てその想いはより強くなっていた。


「でも、今はダメ。皆との約束もあるしね」


 そっと家のドアを開けた零音は、晴彦が寝たままであることを確認する。そしてそのままゆっくりと音を立てないように階段を上がり晴彦の部屋のドアを開ける。部屋の主である晴彦は零音が来たことにも気づかず、スヤスヤと子供のような顔をして眠っている。


「ふふふ、可愛いなぁ」


 そして、そっとスマホを取り出した零音はカシャカシャと晴彦の写真を撮り続ける。数分間続いた撮影会は晴彦がもぞもぞと動き出したことで終わりを告げる。


「これ以上は起こしちゃうかな。まだ時間もあるし、先に朝ごはんだけ作りにいこう」


 零音が家に入るなりすぐに晴彦の部屋にやって来たのは起こすためではない。写真を撮るためだ。満足した零音はそっと部屋を出てキッチンへと向かう。もちろん、晴彦の朝ごはんを作るために。


「あ、そうだ。その前に皆に写真送っとかないと……嫌だけど、これも約束だし……はぁ、しょうがないよね」


 零音は最近作ったグループチャットを開き、先ほど撮ったばかりの晴彦の寝顔の写真を数枚送る。

 零音が写真を送って数秒。すぐに反応はあった。しかも全員から。


『あはは、可愛いね』と送って来たのはめぐみ。

『まぁ確かに……いいかも』と送って来たのが雪。

『あなたは今までこれを独占していたわけね。これは許されざる罪よ』と送って来たのが雫だ。

 これが最近作ったグループチャットのメンバーだ。合計四人で形成されている。


『これで約束の一つは果たしましたよね?』

『あらダメよ。今日一日なんて言ってないもの』

『確かにアタシも言ってないなー』

『あの、嫌だったらいいんだけど……私ももう少し欲しいなぁって』

『くっ、私が反論できないのをいいことに……』


 しかしこのグループチャット内において零音は反論できる立場には無い。


『とにかく、私達が満足するまでこれは続けてもらうわよ』

『よろしくー』

『ごめんね、零音さん』


 謝っているめぐみですら写真を貰うこと自体を否定はしない。仕方のないこととはいえ、自分だけが独占していた晴彦の寝顔を他の人にも見せなければいけない現状に零音はため息を吐く。そしてもちろんのごとく、勝手に写真を撮られ、送られていることに晴彦の意思というのは関係しない。


「わかりましたよーだ。はぁ、自分のせいだから強く言えないのがツラい」


 憎々し気に画面を見つめた後、零音は気を取り直して朝ごはんの用意を始める。寝起きに優しく、かつしっかりとお腹を満たせるメニュー。母親である莉子から料理について叩き込まれている零音にとってはそんな朝ごはんを作ることくらいは造作もない。


「今日は和食の方にしようかな。確か昨日鮭も買ってあったはずだし。玉子もある、味噌もある。ご飯は昨日の夜にタイマーしてると。うん、行けるかな。今日のメニューはザ・日本の朝食でいこう」


 決まれば早い。あれよあれよという間に朝ごはんを作りあげた零音は、今度は起こすために晴彦の部屋へと向かう。

 先ほどと変わらず眠りこける晴彦。あまりにも気持ち良さそうに寝ているので起こすのが少しだけ可哀想になる零音だが、そこは心を鬼にする。


「ほら、ハル君起きて! 朝だよ!」

「んぅ?」

「もう朝ごはんできてるよ。早く起きないと冷めちゃうよー」

「んー、眠い」


 しかし晴彦は起きる気配を見せない。このままではせっかく作った朝ごはんが冷めてしまうと思った零音は、そっと晴彦の耳元に口を寄せて言う。


「眠いじゃないよー。起きないと……キスしちゃうよ?」

「っ!?」


 夢と現の間でさまよっていた晴彦は、その一言で一気に目が覚める。カバっと体を起こした晴彦を見て零音は笑う。


「あはは、やっぱり起きた」

「当たり前だろ! おま、何言ってんだよ!」

「もしかして……本気にしちゃった?」

「本気って……そういうわけじゃないけど。でも、驚くだろ!」

「なんだ残念」

「残念って何がだよ」

「ハル君が本気にしてくれたならしても良かったんだけどなーって」

「ぶっ、ば、バカかよ!」

「ふふ、冗談だよ冗談」

「当たり前だ。本気でたまるか!」

「そういうのはちゃんとハル君からじゃないと」

「え?」

「さ、目も覚めたんだかったら早く降りてきてね」

「え、ちょ、零音!? どういうことだよ!」


 晴彦の質問に答えることなく、零音は部屋を出て行き下へと降りて行ってしまう。取り残された晴彦はただただ呆然とするしかなかった。



 零音が朝ごはんを作ってる最中のこと。

「このまま普通に作ってもいいんだけど……うーん、せっかくなら何か仕込んでみたい……かも」

 以前漫画で読んだワンシーンのことを思い出す零音。その漫画の中でヒロインが主人公に対して媚薬だったり色々な物を入れているシーンがあった。初めて読んだ時はその気持ちがわからなかったが、今は少しだけわかる気がする。

「入れて……みる?」

 ふと味噌汁に目がいく零音。仕込めるならこれしかない。

「いや、でもでもそれはダメ。流石に引く。私でも引く……でもなぁ……」

 少しの逡巡のあと出した結論は……零音だけが知っている。

 

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります。

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は3月30日21時を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ